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賞金稼ぎと古代魔導人形【12】

「いやぁ、すごいな、真面目に! こんな超ド級の魔導人形を造るんだから、もう国は安泰なんじゃないか、これ? もう世界最強の魔導国家だよ」


 リダは、眼前でボロボロになっている古代魔導人形を前にして、軽くパチパチと拍手をしてみせた。


「私からすれば、貴女こそ超ド級に凄い人なんだけど......」


「そう? 特に大した事をしていないと思うんだけどな?」


「......」


 アオは再び何も言えなくなる。

 つくづく思う、本気で何者なんだと?


 オリオンが死を覚悟した程の古代魔導人形を、まるで赤子の手を捻る勢いで圧倒して見せるリダ。


 まさに無双状態だ。


「所で、これは何かのショーだったのか? それにしてはやたらリアルに街の建物が壊れまくっている見たいなんだが?」


 そして、ボケ方も超ド級だった。

 これだけの非常事態を見ても、単なる見世物にしか見えないと言うのだから、色々な意味でレベルが高いと言わざる得ない。

 高ければ良いと言う物でもないと言う事も、補足として加えて置こう。


 何はともあれ。


「そ、そんな訳ないでしょ......街が襲われているんだ。見てわからないの?」


「え? そうなの?......じゃない、もっもちろん知ってたよ! 少し冗談を言って見ただけさ」


 アオの言葉にリダは少しだけ誤魔化し笑いをして見せた。

 きっと冗談で言っていない。


 取り敢えず、常人とは別格級の感性を持ち合わせている。

 ......かも知れない。

 面倒だから、そうして置いた。


「じゃ、あれは倒しても良いんだな?」


 言い、リダは古代魔導人形を軽く指差した。


 そんな魔導人形はもう完全に動かない。

 跳ね返った極太レーザーの一撃を喰らった事で、どこかの制御機能が壊れてしまったらしい。

 一応、動く事は動くのだが、戦闘可能な状況とは言いがたい。


 リダからすれば、チェックメイト状態だ。


 まな板の鯉を料理するのにそこまでの労力は必要としない。

 

 だが、しかし。


「それが、素直に倒すだけで良いのなら、それで構わなかったんだけど......」


 アオはちょっとだけ歯切れの悪い声をリダに吐き出して見せた。


「......?」


 リダはキョトンとなる。

 どうも言ってる意味が分からない。


「どう倒せば良いんだ?」


「操ってるヤツと言うか、その中心にいる人を助けてくれるのなら、後はどうなっても構わないのだけれど......」


「中? ああ、あのインストラクター見たいな人?」


 リダはまだ、見世物チックな物だと思っているかの様な口振りだ。

 何とも悠長な物である。


「インストラクターじゃないからね? って言うかさっきから言ってるけど、別にショーとかしてる訳ではないからね! 街を命懸けで守っていたんだからねぇ!」


 本当、今までの苦労とは一体何だったと言うのか?

 そう考えると、何だか虚しさすら覚えてしまう。


 そんな、妙な脱力感すら抱いていた時だった。


「アルフレド様っ!」


 甲高いアカの叫び声が周囲に響いた。


「なんだ?」


 事情なんかサッパリのリダからすれば、突然やって来たかと思えば、何の脈絡もないまま悲痛の面持ちで金切り声を放っている様にしか見えない。


 全く謎の少女である。


 見事に部外者の気分だ。

 実際に部外者の立ち位置であったのだが。


 そこから間もなく、リダも知る人物が声を掛けて来た。


「リダ! 来てくれたんだ~。ありがとうっ!」


 声の主はルミだった。

 ルミはいつも通りの朗らか笑顔にロイヤル風味の気品を乗せて、やんわりとリダに向けていた。


「何だか、色々あった見たいだな」


 全然全くこれっぽっちも事情が分かっていないリダは......しかし、一応それっぽい台詞なんぞを口にして見せた。

 疎外感を地味に嫌う寂しがり屋のリダは、何とか周囲に合わせて見ようと、不毛な努力をしていたのだった。


「そうだねぇ......もう、色々とスペクタクルな感じになってたよ。特に最後は」


 リダの言葉にルミはげんなりした様な顔になりつつ、しかし愛想笑いにも似た笑みを作って見せた。


 そこには、ルミの気持ちが色々と加味されているのだろう。

 目まぐるしく展開されて行くハチャメチャなドラマの果てに、最後は巨大魔導人形が街で暴れると言う、文字通りスケールの大きな問題が発生して......と、まぁ。

 この数日程度の間に、次から次へとやってきた超トラブルの連続に、ルミは目が回りそうであった。


 しかし、最後に笑みが出たのはリダが来てくれた事への安堵である。


 なんだかんだでルミにとってのリダは、どんな不可能も可能にしてしまう、スーパーウーマンであったからだ。


 そんな彼女がやって来た事の安心感はとてつもなく大きかった。

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