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賞金稼ぎと古代魔導人形【10】

 補助魔法を受けたオリオンは、これまでとは比較にならない勢いで古代魔導人形に鉄拳をぶつける。


 ドォォォォォォォォォン!


 古代魔導人形は吹き飛んだ。


「ひゅぅ......こいつは驚きだ」


 補助魔法の効果自体は、特に驚いていない。

 イリ(女)の場合、これ以上の反則的な補助魔法を使って来る。


 だが、あれは特例中の特例なのだ。


 普通の魔導師は、熟練の者であっても上位の補助魔法が使えれば一人前と呼べる。


 ここらの相場を考慮するのなら、アオの魔法は超一流の腕前と言える。

 ランク的に言うのならSS+程度の実力はある。

 

 簡素に言うのなら、それはオリオンと同等程度の実力があると言う意味に繋がった。


「ここに来て、俺にも運が回って来た様だ」


 これは勝てる!

 当初の目的は、イリの呪いが解放され復活するまでの時間稼ぎに過ぎなかったのだが、アオが加わって頼もしい後衛を得た事で、一気に形勢が逆転した!


 ......そう。


 その時のオリオンは勝利への確信を抱いていた。

 その考えが、砂糖よりも甘い考えであった事に気付くのは、ここから間もなくの事だった。


 吹き飛ばされた古代魔導人形は、そこからむっくりと立ち上がる。


 そして、オリオンの予想を越えた魔法を使って来るのだ。


 スーパー攻撃力上昇魔法オフェンスアップレベル99


 スーパー防御力上昇魔法ディフェンスアップレベル99


 スーパー身体速度上昇魔法スピードアップレベル99


「......嘘だろ?」


 オリオンは唖然となった。

 補助魔法の最終形態とも言える、最大の上昇魔法だ。


 違うのは熟練度なのだが、ここが大きく致命的だった。


 特に98と99の差が大きかった。


 98までは、レベルが1上がった所で、そこまでの上昇倍率に差がないのだが、最終のカンストとなる99だけ、別格級に上昇倍率が飛躍する。


 もう、爆発的と言える。


 但し、99の熟練度にする為の苦行は並大抵の精神では出来ない。

 それだけ、コツコツと......何回、何十、何百、何千と同じ補助魔法を発動し続けて、ようやくレベル98がレベル99に到達するのだ。


 そんな、気の遠くなる様な熟練度上げの最果てに、ようやく手にする事が出来る......最強の補助魔法なのだ。


 そんな苦労をしたのか? と、思わずツッコミを入れたくなる様な相手が軽々しく発動出来る様な代物ではないのだ。


 だが......しかし。


 ドンッッッッッ!


「うぐはぁっ!」


 現実は残酷だった。

 今までの戦いが、まるで茶番であったかの様に、根本的な質の違う重い一撃を受けたオリオンは、そのまま避ける事すら出来ずに弾き飛ばされてしまった。


「だ、大丈夫かっ!」


 直後、アオが素早くオリオンに駆け寄り、素早く回復魔法を掛けようとした。


 古代魔導人形の攻撃がやって来たのは、ほぼ同時だった。

  

「なっ!」


 アオは瞳を大きく見開く。

 邪魔にならない程度に立ち回って来たつもりだったが、どうやらそれでも警戒心が足りなかったらしい。


 ブゥゥンッ!


 轟音を撒き散らしながら飛んで来る古代魔導人形の鉄拳を前に、アオは成す術もなく血反吐を撒き散らすしかない。


 思い、覚悟を決めて身構えていた時だ。


「ふぬぅんりゃあぁぁぁっ!」


 一瞬で立ち上がったオリオンがアオの眼前に立ち塞がり、彼女を全力で守り抜く形で古代魔導人形の一撃を身体全体で受け止めて見せた。


「うがはぁぁぁっ!」


 なんとか一撃を耐えたオリオンだが、超重量級の一撃はオリオンの内蔵を強烈に痛め付ける結果を生んだ。


「ぐぼぉっ!」

 

 数秒後、オリオンは額から脂汗を長しながら血反吐を撒き散らし、片膝を付いてみせた。


「逃げろっ!」


 そして、強い意思を込めた真剣な目でオリオンはアオへと叫ぶ。


「で、でも......」


 アオは口ごもった。

 ここで逃げたら、オリオンは確実に死ぬだろう。


 もう、完全にオリオンに活路はない。


 しかし、それでも尚、自分を生かす為に死地へと向かう。

 

 果たして、オリオンは言った。


「最期に、あんた見たいな惚れ惚れする美人の為に命を張れるんだ。俺の生涯に悔いはない!」


 ニッ! と快活に笑った。

 死を覚悟した漢の......最後の輝きがそこにはあった。


 その何とも頼もしくも勇ましい姿は、アオの心にあった理想の男性像に近いモノがあった。


 根本的にドラゴン・ハーフの彼女であり、気丈な事もあって男に頼ろうと言う思考は持ち合わせてはいなかった。


 否、違う。


 頼りたくても、そんな男との出会いがなかった。


 ......今、出会った。


 きっと、こんな男と巡り会う事は、今後一生ないだろう。

 そうと、本気で思えた。

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