賞金稼ぎと古代魔導人形【9】
この超魔法を使える存在は、イリが知る限り四人。
まずイリ本人(女)だが、当然これは省く。
次はオリオン(女)なのだが、これも省く。
女のオリオンなら、超炎熱爆破魔法を使う事が可能ではあるのだが、余りにもリスクが高い......高過ぎる。
超魔法であるフレインダムドは、女になって魔法的な能力を劇的に上昇させたオリオンでさえ、使用から発動までに一分近い時間を必要としてしまう。
この辺を考慮すれば、前衛がいない現状でオリオンが超炎熱爆破魔法を使用したと考えるのは現実的ではない。
次に威力だ。
発動速度と威力は、術者の能力によって大きく左右されるのだが、先程の規模から予測される威力は、レッドドラゴンに致命傷を与えられる程度と予測出来た。
こうなると、もう一人の候補が消える。
みかんだ。
みかんverに出て来る、あのみかんだ。
もし、みかんが超炎熱爆破魔法を全力で放っていたとするのなら、この程度の威力で済む筈がない。
魔力に関して述べるのなら、イリよりも上だったのがみかんである。
あらゆる魔導を極めた、魔法のスペシャリストでもあるみかんの魔力は、イリが知る限り世界最強だった。
故に、最後に残った人物が放った魔法と言う事になる。
最後に残った人物、それは......。
「なんで、リダのやつが......こんなトコに?」
■○□◎■
時間は少しだけ巻き戻って。
場所は、ニイガ市街地。
アカとキイロの二人が、イリの呪いを解く為に自宅へと向かい、その時間を稼ぐ為にオリオンとアオの二人が古代魔導人形に戦いを挑んでいた時だ。
「ふんぬぅぅっ!」
オリオンが気合いそのままに、文字通り鉄拳と表現出来るだろう強烈な一撃を古代魔導人形に繰り出していた。
ズドォォォォンッ!
古代魔導人形の懐にオリオンの鉄拳が衝突する。
それは衝突と表現した方がよりしっくり来た。
全身を使って放つオリオンの一撃は巨大鉄球にも勝る。
まるで、人間ミサイルだ。
突き刺さる様な猛烈な鉄拳によって、山の様な巨体が軽く宙に浮く。
ヒットした懐部分は大きなへこみが出来ていた。
しかし、当然の様に起動停止級のダメージではない。
古代魔導人形は、後ろにジャンプして一旦態勢を建て直した後、
キュゥゥゥゥンッ!
右手をオリオンに向け、エネルギーを右手に凝縮させて見せる。
その一瞬後に、
ボシュウゥゥゥゥゥゥゥッッンッ!
直径二メートルはあるだろう、巨大レーザーを右手から飛ばして来た。
「うぉぉぉぉっ!」
光速で飛んで来た極太レーザーに、オリオンは素早く両手で受け止める。
全身の筋肉が、もこっ! と盛り上がった。
刹那。
「ぬぅおりゃぁぁぁぁっ!」
両手を力任せに荒々しく振り抜いて、超極太レーザーを上空へと打ち返して見せた。
「......はぁはぁ。くそ、手がしびれちまったぜ」
肩で息を吐き出しながら、オリオンは自分の両手を見る。
先程のレーザーによって、見事に火傷していた。
下手をすれば、拳をまともに使う事すら出来ないかも知れない。
上位治療魔法レベル30
間もなくオリオンに回復魔法が飛んで来た。
「......?」
予想だにしなかった救援の魔法に、思わずオリオンは驚き眼で周囲を見回した。
すると、近くにアオの姿が。
「あれは、キイロちゃんのお姉さんか?」
事情はわからないが、確か敵だった筈。
しかし、今は確実に違う。
その証拠に、アオの存在を知ったオリオンに軽く微笑みを見せていた。
ちょっとだけ、オリオンの頬が赤くなった。
「キイロちゃんも可愛いけど、お姉さんも美人だよな」
出来る事ならこんな形ではなく、もっと違う形で出会えたらよかったのに......と、場違いながらも、思わずアオの魅力にみとれてしまった。
もちろん、そんな悠長な事をしている場合ではない。
むしろ、より緊張感を持つ必要も生まれた。
アオが上位治療魔法をオリオンに発動させた事で、古代魔導人形の標的にアオも加わってしまった模様だ。
こうなると、オリオンの行動は単純に戦闘をするだけではなく、アオの身を守りながらの攻防に変わる。
一見するとオリオンが不利になった様に見えるが、実はそうでもない。
回復魔法と、
超攻撃力上昇魔法レベル84
超防御力上昇魔法レベル82
超身体能力上昇魔法レベル85
強力な補助魔法が、オリオンの後方からやって来る。
魔法のレベルにばらつきがあるのは、熟練度の差だ。
どっかの反則的な連中は、当然の様にレベルがカンストしているが、こちらの方が一般的なのだ。




