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賞金稼ぎと古代魔導人形【7】

 ハッキリ言えば、不承不承これ極まりだ!


 こんな馬鹿を好きな女は、きっと世界一の大馬鹿者に違いない!


 けれど、思えば思う程、好きと言う気持ちが強くなってしまう。

 なんでこんな気持ちになってしまうと言うのだろうか。


「......責任取ってよね」


 こんな大馬鹿者にされた重責は、キッチリ取って貰わないと気が済まない。

 ルミは答えてから、イリに目線を合わせた。


「責任ねぇ......取り敢えず、頭を撫でるだけではだめか?」


 冗談混じりに嘯いて見せる。


「だめ」


 ルミは即座に否定した。


「じゃあ、どうすれば良い?」


「そうだねぇ......今、ここで婚約の約束をしてくれるか、キスかのどちらかで手を打ってあげる」


「.........」


 イリは絶句した。

 まさか、そこまで突拍子もない台詞がやって来るとは思わなかった。

 

 正直に言おう。

 イリからすればどちらもアウトだ!


 婚約とか勝手にやった日には、120% イリはお尋ね者だ!

 いつもはギルドで賞金首を狩っているけど、今度はリアルに自分が賞金首になってしまう!

 

 激怒するニイガ王の形相が目に浮かびそうだ! 


 キスは......まぁ、バレなければ大丈夫かも知れない。

 しかし、まかり間違えてキスをした事がバレたら事件である!


 憤怒の形相で額に青筋を浮かべ過ぎて血管から血を吹き出しそうな怒りに燃えるニイガ王のオーラが、目に浮かんで来る。


 だめだ......どっちに転んでもバットな終演しか脳裏を過らない。

 

「イリは私の事、嫌いなの?」


 しかし、ルミ姫様は可愛い! 超絶可愛い!

 こんな可愛い娘、世界中を探したって早々いませんぜ! って言う愛らしさ加減だ。


 挙げ句、王国の姫たらしめる美しさを無尽蔵の気品とセットで持っているのだから、男からすればタチが悪い。

 もう、魅力の大安売り状態なのだ。

 オンパレードでセットでお値打ち状態で、今すぐ私を抱き締めてとか言う......なんだかカオスな表現になってしまう状況なのだ。


「ぐ......くくぅ......」


 イリは苦しんだ!

 半分は女だけど、もう半分は男のイリ。

 ......と、言うか日常生活の九割は男で生活していたイリ的には、もう性別は男だけで良いんじゃないかとさえ思ってしまう。


 そうなれば当然、可愛い娘は大好物だ!

 

 言うなれば、これはもう据え膳だった。


 この物語を読んで下さっている方が男であるのなら、ここで妄想......もとい、想像して見よう。


 世界規模で美しくも可憐なお姫様が、顔を赤くして自分に告白し、キスまで迫って来ていたとしたら?


 大して広くもない部屋に二人きり。

 相手の心臓の鼓動はもちろん、吐息も感じる所まで迫られていたら?

 如何に鉄の理性を持っていても、ガチホモでもない限りは脳味噌が沸騰してしまう事だろう。


 今のイリが、まさにその状態だった。

 ルミの魅力はヤバいのだ。

 本気で迫られたら、確実に正常な判断が出来なくなってしまう程、思考回路を乗っ取られてしまう。


「イリ......貴方に逢えて、良かった」


 他方のルミは、完全に思考の矛先がイリだけになっていた。

 もう、それだけしか考えられない。


 恍惚の笑みになっていたルミは、


「キス......しよっか」


 もう、何らかの愛情表現が欲しくて欲しくてたまらない。

 結局、色々な物が邪魔をして、思考停止状態のまま身体を動かす事が出来ないイリに、半ば強引な形で唇を近づけようとしたルミ。


 ヤバイ!


 本気で思うイリ。

 しかし、ルミの魅力に思考がおかしな事になってしまい、正常な判断と行動が取れない。

 ......と言うか、もう面倒だから良いや! やってしまえ!


 大丈夫だ! ここには誰もいないし、誰も見てない!


 バレないなら、もう、いっそこのままルミ姫様のロイヤルなファーストキスを頂いても良い......


 ガチャッ!


「イリ帰ったよっ!」


 ......良くなかった!


 イリとルミの唇が重なり合う、まさにその直前。

 あと一秒でも遅くドアを開けていたら、間違いなくルミの一生に残るだろうメモリアルな青春の一頁いちページになる寸前の所で、ジャストタイミングな妨害がやって来た。


 開けたのは、キイロだった。


「.........」


 ドアを開けた直後、視界に飛び込んで来た光景は......イリとルミの二人が息も吹き掛かる距離で、互いに自分の唇を交差する直前。


 その状態で......しばらくの間、二人がまるで静止画像みたいに止まったまま動かないでいたのだった。

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