賞金稼ぎと古代魔導人形【4】
「それで、どうすれば良いんだい?」
「そうだね......まずは、あの魔導人形を何とかしないとだけど、ここはオリオンさんに一時任せて、来て欲しい場所があるの。もちろんアカ姉さんも」
「アカ姉さんも?」
「そう! むしろ、アカ姉さんが掛けた呪いが一番の問題!」
答えたキイロはやや憎悪混じりの声音になっていた。
ルミとのデートを変装して尾行する形で追っていたキイロは、呪いの根元がアカに有った事を確認している。
どうして、アカにあんなおぞましい能力が存在していたのか?
いつ、あんな術を覚えたのか等は知らない。
......興味もない。
しかし、アカが呪いを掛けた事だけは分かった。
そうなれば、キイロが取る方法は決まっている。
「アカ姉が掛けた呪いを解けば、全部解決するの!」
......てか、こんな呪いを掛けなかったら、もう色々と万事解決してたのに! と、少し怒ってやりたいキイロがいた。
だが、現状はそんなつまらない事で時間を消費する訳には行かない。
「てか、アカ姉は何処にいるの?」
キイロはちょっとむくれた顔して、アオに聞いて見た。
「アカ姉さんなら、そこに......え?」
さっきまでいた場所を軽く指差すアオがいたのだが、
「いないじゃないの」
そう答えたキイロの言葉通り、そこにアカはいなかった。
まさに忽然と姿を消した様にも見える。
こうなると、アオにもアカの居場所は分からない。
「何処に行ったんだろう?」
思わず眉間に皺を寄せ、小首を傾げる。
そう思っていた時だった。
「あ! いたっ!」
キイロが叫ぶ様に言い放つ。
同時に指を向けた先にいたのは、茫然自失状態になってフラフラとおぼつかない足を無造作に動かすアカの姿が。
「何で、アカ姉があんなになってるの?」
「私にも良く分からないんだ。なんかアルフレド様の名前を呼んでいたのは分かったんだけど」
アオに分かるのは、これだけだった。
ハッキリ言って、この名前を口にした理由も意図も謎だ。
「どうしたんだろう......?」
もはや、話が通じるのか分からないレベルまで精神がおかしな事になってる。
気が触れていると述べても、過言ではない。
しかし、精神がおかしくなったとしても......どんな状態であろうと、キイロは必ずやらないと行けない事があるのだ。
イリの呪いを絶対に解く!
「アカ姉! ちょっと、大丈夫?」
足早に駆け寄って見せる。
「アルフレド様が......ああ、私は......もう」
「......」
キイロは無言になる。
何が起きてるのか分からないが、相当のショックを受けて精神がおかしくなっている事だけは理解出来た。
「アカ姉! しっかりして! 何が起きたの! ちゃんと訳を話して! そうじゃないと、助ける事だって出来ないじゃないの!」
「助ける?......そうか、助ければ良いんだ!」
キイロの言葉を耳にして、アカはハッとした顔になる。
しかし、瞳は依然として異常としか言い様がない。
むしろ、悪化してるとさえ思えた。
「何してるの? キイロ! 私達の君主があの魔導人形の中に囚われているのよっ!」
「......は?」
キイロはポカンとなる。
経緯は知らないし、どうなってるのかも分からない。
だが、どうしてアカがおかしな精神状態になってしまったのかだけは理解出来た。
アオやキイロと違い、アカはアルフレドにかなり気に入られていた。
故に、他の二人とは違い、アカは彼に心を許していた。
結果、絶対服従と言う不合理でしかない理不尽な状況下であっても、全く苦にする事なく、むしろ自ら進んでアルフレドに忠誠を誓っていたのであった。
簡素に言えば、根本的にキイロやアオとは真逆なのだ。
根底が180度違う。
アルフレドはアカにとって最大の支えであり、生き甲斐なのだ。
もう、アルフレドが全て。
彼なしの人生など、想像すら出来ない。
故に曲がって行く愛憎模様。
可能であればアルフレドが御執心であるルミ姫だって、自分の手で捻り殺してやりたい。
しかし、そんな真似をすればアルフレドが大層悲しむだろう。
そんな、混濁化したねじ曲がった負の感情を、星の数ほど抱いていたのであった。
結果、病的に精神が破壊され......狂気の沙汰としか言えない血走った瞳を当然の様に見せる、悪鬼の様な禍々し雰囲気まで自然と醸し出せる様な存在にまでなり果ててしまった。
「......」
キイロは何も言えなくなる。
強く激しい憐憫が、キイロに生まれた哀愁の表情から見て取る事が出来た。




