賞金稼ぎと古代魔導人形【1】
■ルミ■
結局、イリの呪いを解く手段が見付からないまま、時間だけが過ぎて行った。
心だけ、焦燥感で一杯になる。
「どうしてこんな事になっちゃうんだろうな......」
思えば、イリが呪いに掛かってしまった素因は私にもある。
私が我が儘言って、街に出ようなんて言ったからだ。
今にして思うと、なんて不用意だったのか......。
もし、タイムマシーンがあるのなら三日前に戻って、当時の私をぶん殴ってやりたい!
でも、後悔は先に立たない。
だからこそ、後悔の無い生き方をしないと行けないんだ。
私は私が出来る事を、これからもやるつもり。
ともかく、明日の早朝に図書館へすぐ戻って、今度こそ有力な解呪の方法を......ん?
「どうしたの?」
もう、明日の事しか頭になかった私がいた時、キイロが何故か物凄く驚いた顔で外を見ていた。
そんなに凄いのが見える物なの?
イリには悪いけど、ここの街の景観はあんまり良くないよねぇ......?
だからと言う訳ではないんだけど、部屋の窓から外を見る事なんか、ここに来てから一度もなかった。
でも、外を見るキイロの様子が余りにもおかしかったから、私もつい外の様子を窓から見てしまった。
.........っ!
な、なに......あれ?
全く以て、意味不明だった。
驚くとか驚かないとか、そう言うレベルではない代物が、窓の外......と言うか、空に浮かんでいた。
なんだ、あれはっっ!
何処をどうすると、あんなのが空に浮いてる現象へと発展するって言うの?
全く分かんないのですが!
「イリとルミさんは、ここで待機してくれ! 俺はちょっと様子を見て来る!」
窓のから見える謎の物体に、思わずポカーンとしていた私を尻目に、オリオンさんが素早く外へと出て言った。
「待って! 私も行く!」
すぐに、キイロが叫んでオリオンさんの後を追う。
わ、私も行かないとっ!
思って、私も素早く部屋から出ようとした。
「バカか、お前はっ!」
即座にイリの罵声が飛んだ。
なによう......いきなり怒鳴らなくても良いじゃないのさ。
「お前は、ここに来ても、我が儘な事するのか? いい加減、自分の立場ってのを本気で考えろよっ!」
「......」
私は何も言えなくなった。
そうだんだよね......呪いだってそう。
私が居なかったら......私が我が儘を言わなかったら、こうならなかった。
私は俯く。
あはは......なんて言うか、格好悪いな、あたし。
「私、無力だなぁ......」
だたただ、守って貰うだけの存在。
一緒にいる様で、実は違う存在。
本当はもっと、皆の力になりたいのになぁ......。
けど、実際は皆の足手まといでしかない。
ぽんっ!
......え?
イリが優しく私の頭に手を乗せて来た。
そこから緩やかに......まるで少しでも力を入れ過ぎると、壊れてしまう物でも扱うかの様にして、私の頭を撫でてみせた。
ちょっと......くすぐったい。
でも、嫌じゃなかった。
「そんな顔するな。お前はお前でいる事が大切なんだ」
「どういう事?」
「そうだなぁ......つまり、だ? お前は生きているだけで価値がある存在って事だ」
「なにそれ?」
私は口をつぼめた。
言ってる意味が分からない。
だってさ?
「そんなの、皆同じでしょう?」
私は真剣な顔で言った。
命の価値は皆同じだと思う。
生きてるだけで価値がある。
それは、存在する命ある者全てに言える事。
姫だから価値があると言うのは、奢りでしかないと思う。
平等の価値が存在しないと、いけない事なんだと思うんだ。
「......なんつーかさ? お前はさ? やっぱり生きないとダメだ。今ので確信したよ」
イリはニンマリ笑った。
そして言った。
「新時代のニイガ女王は、この国には必須だって事がな」
......なにそれ?
私は小粋に笑うイリに、ちょっとだけ苦い顔になりつつも......けど、ちょっとだけ笑って見せた。
■キイロ■
外に出ると、よりリアルに大きさが分かった。
街の中心部にある鉄製の建物より大きい。
「とんだ化物が出て来たモンだ」
他方のオリオンは、そこまで驚いてはいない見たいだ。
どうして、アンタは平然としてられるんだと、呆れ眼で聞いてみたくなったよ。
そんな私の気持ちを汲み取ってくれたのか、
「ま、俺はこないだ組合長から、それとなく聞いてたからさ」
苦笑混じりに私へと答えた。
そう言えば、確かに噂レベルだけど、古代魔導人形を王子が使うかも知れない......なんて、言ってたな。
......ん?
「じゃ、じゃあ......これ?」
「ああ、間違いないね」
呆然とする私に、オリオンは確信を持って頷いた。
「あれが、組合長も言ってた、王子の最終兵器だよ」




