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賞金稼ぎとドラゴンメイド(アカとアオ)【19】

「お前は本当、俺に良くしてくれてるよ。もう、下手したら今すぐにでも呪殺されちまうかも知れないってのに、動けなくなった俺の世話をしっかりやってる」


 実際、生活をする事すら困難な状態になっていたイリの介護を、精一杯やってくれている。

 もしも、ちゃんと身体が元気に動く様になった時は、相応のお礼をしないと行けないと、本気で考えていた。


 ちゃんと動けると言う保証など、何処にもなかったのだが......。


「ありがとう。本当に俺はお前に感謝している」


 イリは笑顔でキイロに答えていた。


「イリ......」


 キイロもやんわりと微笑んだ。

 イリがこんな状態だと言うのに、それでもなんだか幸せを貰った気がした。


「大丈夫だよ。好きでやってるんだから。お礼を言われる様な事はしてないんだからね」


「そうか......」


 穏和に語るキイロにイリは短く、そうとだけ返答した。


 良い女だな、キイロは......等と、柄にもなく彼女に対して特別な感情を抱いた。

 

 もっとも、特殊な感情を抱いたからと言って、それが直接恋愛に発展するのかと言えば、それは違う。

 普通の身の上であれば、それで十分成立したであろう。


 例え、イリの半分が女性であったとしても。


 だが、イリは賞金稼ぎだ。

 ハッキリ言ってしまえば、ヤクザな家業だ。

 人様に後ろ指差される様な事を、当たり前の様にやって来たし、それは今後も変わる事はないだろう。


 それだけに、思ってしまうのである。


 例え惚れた相手が出来たとしても。

 自分が好きになんてなっても......相手を無駄に巻き込んでしまうだけ。

 場合によっては、恨まれている相手からの報復を喰らってしまう。


 そこには、裏家業と同等の仕事を受け持つ、悲しき男の生き様があったのであった。


 コンコンコン


 その時、玄関ドアがノックされた。


 すぐに、キイロが玄関ドアを開けに行く。


 ドアの先にいたのは、ルミとオリオンだった。

 二人は、イリの呪いを解く方法を調べる為に、ニイガの魔導図書館へと向かっていたのだ。


 魔導大国ニイガだけに、魔法に関係する書物は山の様に存在している。


 それは、呪いや古代魔術もご多分に漏れず、多数存在していたのだ。

 また、姫の権限をフル活用して、一般公開されていない秘術が掲載されている書物等も読み漁る。


 だが、資料が膨大過ぎた。


 そして、何よりルミ姫は敵の標的である為、余り長居をする訳には行かなかったのである。


 通常貸出の書籍であるのなら、この部屋で調べると言う事も可能ではあったのだが、現時点で解呪に関係していそうな物はことごとく特殊な書物ばかりであり、さしもの姫様であっても、早々おいそれとは持ち出す事は出来なかった。


 結果、多少の危険を承知で魔導図書館まで直接向かうと言う方法を取り、なんとか解呪の方法を探していたのであった。


 しかし。


「ごめんね......オリオンさんと必死で探してはいるんだけど......確実にこうだって言うのまでは見付からないんだ」


 ルミは肩を落として項垂れながら答えた。


 これに、キイロは笑みで答える。


「ううん。頑張ってる事は分かるから。私なんかより、全然イリの為に頑張ってると思う」


 結果こそ出てはいないが、それでも必死でイリの呪いを解こうと奮闘するルミの姿は、キイロの目には眩しく映った。


 私も、せめてルミ位、直接解呪に携わる事が出来たのなら、少しは気持ちも軽くなっていたのではないか? と、何となく負い目を感じてしまう。


「そんな事ない!」


 刹那、ルミが真剣な顔で声高にキイロへと叫んだ。

 間もなくオリオンも真顔になって彼女へと口を開く。


「ああ、ルミさんの言う通りだ。むしろキイロちゃんが一番頑張っていると思う。どんな細やかな事でも良いから、がむしゃらにイリの事だけを考えてるキイロちゃんの姿は、まるで聖母様だ。自分にもう少し自信を持っても良いと思うぜ?」


 オリオンはニッ! と、快活に笑った。


 キイロは涙が出そうになった。


 キイロは仲間の絆と、価値の高さを知った。

 苦しい時だからこその仲間。

 それはきっと、苦しんでいる当人だけではなく、その周囲にいる全員を示しているのかも知れない。


 そして、思ったのだ。

 この仲間の輪に入れる......強い絆で結ばれている皆と一緒にいられる事がとても幸せだと。


「ありがとう、皆」


 ここが、私の居場所だ。

 そうと痛感したキイロは、満面の笑みを幸せ一杯に作って、周囲にいた皆に感謝の言霊を送った。  





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