賞金稼ぎとお姫様【2】
「ともかく、話しを聞くだけ聞いても良いと思うんだがな?」
オリオンは、かなり前向きな顔をして俺に言ってきた。
うーん……。
まぁ……な?
確かに凄い仕事だし、これに乗らない手はないんだけどさ……。
けど、やっぱり何か引っ掛かる。
「まぁ、話しくらいなら、聞いてやらない事もないんだけどな……」
「よし、それじゃ、決まりだ」
「………」
いや、それで構わないけどな。
「なんだよ? さっきから歯切れの悪い」
「いや……どうしてもな……」
十億の仕事と言う時点で明らかにキナ臭い何かを感じた俺は、どうしても腑に落ちない何かを、心の片隅にこびり付かせつつも、俺はオリオンの話しに乗る事にした。
……ま、どうせやる事と言ったら、今いるオリオンと酒場にでも行く位しか、特に思い付かなかったしな。
…………。
あ、一つ言っておく。
暇だったからじゃ、ないからな?
■ルミ■
初めましての方は、初めまして!
そうじゃない方は、お久しぶり?
あはは~。
ちょっとおかしい自己紹介になりました。
私の名前はルミ・トールブリッジ・ニイガと申します。
ニイガ国の王女で、第二王位継承権を持つお姫様と言う事になってます。
私はニイガ王の娘ですし、王族なのは間違いないのですが……そのぅ、そう言うのが子供の頃からどうしても苦手でありまして……。
ついでに言えば、お父様……つまり、ニイガ国王の押し付けがましいお見合い話しから逃げる様にして、現在は冒険者アカデミーと言う学校で学生をしていたりもします。
そうっっ!
お父様ったら酷いのっ!
ニイガ王国のしきたりでは、十六才で然るべき者と婚約し、二十歳前には嫁に行くのがならわし……とか、おかしな事を本気で言って来たから、もう大変!
私も、こんなアホ見たいな話しにはついて行けなくて、それで喧嘩しちゃって……色々あって、王室から外の世界にどうしても出たくなって、現在の私がいます。
さっきも言ったのですが、今は学生として冒険者アカデミーに入学し、楽しい学園ライフを送ってました。
リダって言う凄いクラスメートや、フラウと言う隣のクラスの子と一緒に楽しい学園ライフを送っていたんだけど……二学期が終わって冬休みになって、仕方なく里帰りする事に。
私の個人的な感覚で行くと……あんまりニイガに戻りたいとは思ってない。
どうせ、王家に戻っても、お父様のお見合い話しがドドーン! とやって来るだけだし……はぁ。
けれど、寮にいても誰もいないだろうし、お父様がちゃんと帰って来いよってうるさいし……。
仕方ないので戻って来た訳で。
挙げ句、戻って来たら来たで、妙な事件に巻き込まれるし。
もう、本当……普通に里帰りして、普通に学園へと戻れれば、私はそれだけで構わなかったのになぁ。
そんなこんなで。
「……ここは、どこだろう?」
冒頭から、私は自分でも謎な事を言ってます!
うん、わかるよ!
いきなり、訳の分からない所にいますって言われても、なんだよそれはって返事しか来ない事は重々承知してるんだけど……だけどね?
本当に、ここは何処?
本当は今頃の私は王家にある自室のベットにダイブしている予定だった。
けれど、その王家に帰る途中で謎の盗賊団?……で、あってるのかな? ともかく、そのおかしな集団に襲われて……。
そして、今の私がいたのでした。
………はぁ。
いきなり、ニイガに帰って来て早々に……と言うか、その途中で拐われる私って一体。
ともかく、ここが何処なのか分かんないけど、汚い部屋だなぁ……ちゃんと掃除くらいしないと。
どっかに掃除する道具とかあれば、自分でやるんだけど……うーん。
見る限り、そこは何処かの廃屋か何かだと思う。
木造の掘っ立て小屋って感じかな?
ともかく粗末な造りなのは分かるかな。
そして、途方に暮れる事しか、他にやる事がない。
それと、少しお腹空いたかな。
シャワーも浴びたいけど、それはどう考えても無理っぽい。
「本当……なんでこんな目に」
こんな事になるのなら、ニイガになんか戻って来るんじゃなかったよ。
とほ~って顔になって肩を落としていた時だった。
コンコンコン!
掘っ立て小屋のドアを叩く音がした。
……誰?
良く分からないけど、私を誘拐した犯人かな?
少し警戒しながらも、私は掘っ立て小屋のドアを開けてみた。
ガチャ……
……って、思えば鍵空いてるんじゃないか。
普通に逃げる事が可能だったのか。
そんな事を考えながらドアを開けた。
「……どなた?」
ドアを開けた先には、背の高いそこそこ格好良い感じの男の人が立っていた。
その人はにっこり笑って言った。
「こんにちわ。賞金稼ぎです」
……は?
いきなりやって来た、謎の賞金稼ぎ(自称)に、私は目を白黒させてしまった。