賞金稼ぎとドラゴンメイド(アカとアオ)【13】
「え? 俺が悪いの?」
「そう、お前が悪い」
いきなり捲し立てるルミに、オリオンが根負けしていると、速攻でイリがウンウンと何回も頷いていた。
きっと、理由なんか知らないけど、面白いから頷いていた。
「イリが即答する意味がわかんないんだけどっ!」
その後、発狂するルミを宥めるのに、かなりの時間を必要とするのだった。
■イリ■
やれやれ。
なんだか知らないが、ここ最近のルミ姫様はご機嫌斜めだ。
今日も今日で、朝から派手に騒いでくれた。
本当、勘弁して欲しいのだが?
だが、実際問題......マジで勘弁して欲しいのは、その後だ。
ご乱心のルミ姫様のご機嫌をなんとか建て直したと思いきや、今度は二人だけで街に出ようとのたまうお姫様。
この姫様は今の自分が置かれている立場と言う物を本当に理解しているんですかねぇ?
ただでさえ、アルフレドとか言う宰相の息子が、双子のドラゴン・ハーフを刺客としてこの街に送り込んでいて、下手するとすぐ近くに潜んでいるかも知れないと言うのに、護衛を二人も削って街に散策? もう、自殺願望でもあるんですかね? この馬鹿は!
「......はぁ」
俺は重い溜め息を吐き出した。
すると、ルミは口を尖らせて言う。
「何よぅ......私とデートするのが、そんなに嫌だったの?」
てか、デートだったのか、これ?
まぁ、そこは勝手に思い込んでくれて結構だし、ここで下手にルミ姫を怒らせてると、話しがこじれで面倒な事になるから、敢えてデートと言う事にして置いても構わないが......ポイントはそこじゃないだろう?
「別にデートするのは構わないんだが、今はそんな悠長なマネをしえる場合じゃないだろう? お前を狙ってるのは、アルフレドだけじゃなく、王子だってそうなんだ」
俺は真顔で言う。
......そうなんだ。
古代魔導人形を使うのは奥の手だとしても、とうとう痺れを切らした王子が、秘密裏に姫様にちょっかいを掛けて来る可能性は濃厚だ。
下手したら、今すぐにでも王子の息が掛かった裏社会の連中がルミ姫を殺しに来るかも知れない。
まぁ、殺すかどうかまでは分からないとしても、殺しに来る可能性は否めないだろう。
アルフレドと違って、王子は姫がいなくなってくれれば、それで良いんだからな。
むしろ、死んでくれた方が良いとさえ思っている外道だからなっ!
ったく、本気でトラブルばっか背負い込むお姫様だ!
そんな困ったトラブルメーカーだったお姫様は、
「そっか。デート自体は良いのか」
何故か、元気になって微笑んでいた。
......相変わらず謎な奴。
だが、上機嫌なのはヨシだ。
仕事とは言え、お姫様の機嫌取りはマジで苦労する。
子供をあやしている気分だ。
下手したら子供の方がマシかも知れない。
どちらにせよ、機嫌が良いのなら、そのままにして置いた方が何かと手間が掛からない。
思った俺は、敢えて姫様にこれ以上の詮索を避けた。
まぁ、二人っきりと言う条件で、街に繰り出すと言う感じではあるが、当然ながらそんな訳がないしなぁ。
別にルミを騙す訳ではないんだが、王子組と双子のドラゴン・ハーフが同時にやって来た時の事を想定すると、俺一人だけではルミ姫を守りきれない危険性は十分あった。
数が違うからな。
双子のドラゴン・ハーフに至っては個々の能力も高いと来た。
こんな危険で一杯な状況でも、俺と二人で街に出たいと駄々をこねる姫の脳味噌は、完全に異常だとしか俺には思えなかった。
そこで、近くにオリオンとキイロの二人が隠れる形で俺達を尾行している。
変装する感じではあるんだが......キイロは何がしたいんだろうな。
眼鏡にフードを被ると言う変装をしているんだが、思いっきり浮いてる!
他方のオリオンは性別を女性に変え、尚且つ、どっかの農村からやって来た様な農婦の様な格好をしていた。
一見すると、こっちも浮いてしまいそうな格好に見えるのだが、実はそうでもない。
ニイガからそこまで離れていない所に広大な農村地帯があるのだが、その農村地帯から結構な割合で農夫が直接行商しに街までやって来るからだ。
簡素に言うのなら、旅の行商人を装うよりも数が多いので、逆に自然なのだ。
まさに地元を知ってる者ならではの偽装でもある。
だが、キイロの変装のせいで、地味にオリオンまで浮いていた。
お前ら......せめて打ち合わせ位して置けよ。
内心でのみ、溜め息混じりにぼやいたが、そっちを見る訳には行かない。
表向きはルミと二人と言う事になっていたからだ。
つくづく面倒な事になっていたからだ!




