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賞金稼ぎとドラゴンメイド(アカとアオ)【12】

「最初は、アルフレドがルミ姫を気に入っている点を上手く利用するつもりだった。姫をアルフレドの奴隷にし、社会的に抹殺する部分を黙認すれば、王子は己の手を一切汚す事なく目的を達成出来た」


「......最低な王子だな」


「だが、ことごとく失敗。即座にドラゴン・メイドを二人差し向けているが、現時点では成果を全く上げていない」


 そこで王子がとうとう痺れを切らした。


「それで? 王子はどんな動きをしようとしているんだ?」


「これはまだ、噂のレベルだが......ニイガの古代遺跡から発掘された古代魔導人形エンシェントゴーレムを改良した物を投入すると聞いてる。建前では、研究中のゴーレムが暴走してしまった......つまり、事故を装って来ると言う話しだ」


「は? 馬鹿なのか?」


 イリは唖然となった。

 古代魔導人形エンシェントゴーレムは、現時点では謎の宝庫としてニイガ王国の宮廷魔導師達が色々と調べている途中のゴーレムだ。


 現時点で判明している事は、今から五千年程前に存在したとされる超古代都市で開発された、高レベルの魔導人形ゴーレムである事のみ。


 ただ、その能力は現代魔導の技術力を遥かに上回る凄まじい能力を誇り、言わばオーバーテクノロジーに近い状態であったりもする。


 簡素に言うのなら、現代の人間が扱うには、まだまだ色々と努力をする必要があった代物だった。


 しかし、だ?


「その古代魔導人形エンシェントゴーレムを動かす事が可能だったとしたら、街がとんでもない事にならないか?」


 一応、話しだけは聞いた事があった。

 全長三十メートルはある、超巨大な魔導人形ゴーレムらしい。


 そんな化け物染みた巨体で、このあばら家を襲われた日には......ひと溜まりもない。

 それはおろか、街にも相応の被害が出るだろう。


 場合によっては大惨事だ。


 王子は一体、何がしたいと言うのか?

  

「まぁ、今の所はまだ噂だ。本当にやるとは思えないし、やったらやったで、正気の沙汰とは思えない」


 一応、その可能性もあるぞ......と言う話しなのだろう。

 それにしても笑えない話しだった。


「話し半分に聞いてもあり得ないが、分かった」


 本当に、どうして次から次へと、こう面倒な事が起こるんだと、イリは胸中で重い溜め息を吐き出した。

 そこで、イリが軽く肩をちょんちょんと突つかれる。


 肩を突っついたのは、キイロだった。


「......ん? なんだ?」


「お茶の準備が出来たから。いつまでも立ち話じゃ、オリオンにも悪いし」


 淑やかに笑みを作ってキイロは言った。

 

「お、気が利くな!」


「オリオンに、そこまで気を遣わなくても良いんじゃないか?」


「そう言う事言わないの。あなたの仕事の相棒なんだから」


 軽く笑みを作るオリオンに、イリがやや眉を寄せている中、キイロは淑やかな微笑みを終始作って見せた。


「そうだぞ、イリ。お前はもう少し相棒に労りを持った方が良い。今日だって組合に行って情報を持って来てやったんだ。お茶の一杯くらい出すのが筋ってモンだぜ」


 そこからキイロを見て、オリオンは快活な笑顔を作って答えた。


「キイロちゃんだっけか? 良かったら、イリの女にでもなってやってくれ。いっそ、結婚してくれたらこっちも楽かもなぁ。はっはっは!」


 オリオンはかなり自分本意な台詞を、大した考えもなく放っていた。


 これが元で、その数十秒後にルミ姫から極点下の瞳で冷ややかに睨まれてしまい、無駄に肝を冷やす羽目になるのだが、余談である。


 他方のキイロは花丸元気な笑みを作っていた。

 笑顔は、お日様の様に燦々と輝いていた。


「やぁ~だ、オリオンさんったら~。そんな近未来の話しなんかしちゃって!」


 すっかり嫁さん気取りだった。


「ま、キイロなら良い嫁さんになると思うぞ」


「ほ、本当!」


「ああ、間違いないね」


「嬉しいっっ!」


 キイロは最高量の幸せを噛み締めながら、その喜びの感情そのままにイリへと抱き付いていた。


 刹那。


「こんのぉぉぉっ!」


 とうとう、ルミが大爆発してしまう。


「......へ?」


「な、なに? どうしたルミさん!」


 イリとオリオンは唖然となる。


 他方のルミは完全に頭に血が昇っていると言わんばかりに怒りで顔がとんでもない事になっていた。


「あら、ルミ姫様? ご尊顔が残念な事になっておりますよ? そんな鬼すら逃げ出す様な鬼気迫る形相を見せている様では、私のイリはおろか、世界中の全ての殿方に逃げられてしまいますよ?」


 キイロはコロコロと愛らしく笑いながら、皮肉めいた言葉を平然と吐き出していた。

 ちゃっかり『私のイリ』とか言っていた。


「うるさいからっ! てか、オリオンさん! お茶程度で何をそんなキイロ贔屓な事を言ってくれちゃってるんですかっ! そもそも、お茶なら宮廷の先生から教えて貰った私の方が色々上手に淹れられますからね! 料理だって、げんなりする位やってるんですからね!」


 ルミは無駄に対抗意識を燃やしていた。

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