賞金稼ぎとドラゴンメイド(アカとアオ)【11】
まぁ、私も少しは本気になっているのかも知れないね。
自分でも良く分かってないんだけどさ。
「なら、決まりだ。イリが特定の誰かを選ぶ時まで、私とルミは恋のライバル!」
キイロは無駄に燃えていた。
そう言う空気って、多分イリが苦手だと思うんだけど、取り敢えずは良しとして起きますか。
「ライバルになるかは分からないけど、そう言う事にでもして置きましょうか」
私は少し苦笑する感じでキイロに答えてみせた。
■□■□■
翌日。
別段、特別な事が起きる事なく、普遍的な朝を迎えていた。
「兆候と言うか、何らかのアクション位はして来ると思ったんだが」
イリは少し難しい顔になって言った。
朝になって目を覚まし、それよりも早く起きていたキイロの朝食を軽く口にしながら答えていた。
イリの予測では、既に色々とバレていて......場合によってはこのあばら家に特攻を掛けて来てもなんらおかしくないとさえ考えていたのだ。
だが、今の所は何の音沙汰もない。
いつも通りの平凡な朝がやって来ただけだった。
いや、いつも通りと言うのは少し語弊がある。
「......うまいな、これ」
何気なく朝食を作っていたキイロの食事を軽く口にして、イリは普通に驚いた。
どう言った調理法をしているのか分からないが、予想以上に美味な朝食だったのだ。
「えへへ。ありがとう!」
キイロはイリに愛らしく微笑んで見せた。
「......」
やたら可愛いキイロに、思わず面食らう。
ウマい朝食に可愛い女の子。
なんだか、朝から少しだけ得した気持ちになっていた。
「......おはよう」
ぶっきらぼうな声が転がって来る。
突然クライマックスな不機嫌っぷりだったルミ姫様に、イリは逆の意味で驚いた。
「朝から不機嫌だな。何か嫌な事でもあったのか?」
「......別に」
ぶっっすぅぅっとした顔で言う。
口では別にと言っていたが、確実に台詞の正反対な意思が隠されていた。
「......」
イリは無言になる。
一体、何が起きていると言うのだろう?
思わず不可思議な朝のひとときを前にして、軽く小首を傾げたくなるイリがいた所で、
コンコンコン!
玄関ドアからノックの音がした。
多分、オリオンだろう。
長年、相棒として一緒にいるせいか、ノックの音だけでオリオンだと分かる様になっていたのである。
「朝っぱらから何だよ......」
イリは面倒臭そうな顔をしてドアを開けに行く。
その内心では、ある程度の予測も立てていた。
恐らく、キイロを半殺しにした犯人の情報を持って来たのだろう。
そんな事を胸中で考えつつも、玄関ドアを開けた。
ガチャ!
「おはよう、イリ」
「ああ、おはよう。相変わらず、お前は仕事熱心だな」
イリは半眼になって答えた。
「俺からすれば、お前が不真面目過ぎると思うんだがな......まぁ、良い。今回はウチの組合から二つの情報が入って来た」
「二つだと?」
一つは予測出来る。
問題は、もう一つだ。
面倒な情報じゃないと良いんだがな......と、心の中でのみぼやきつつ、オリオンの言葉に耳を傾けた。
「ああ、まず一つ。こっちはキイロを襲った犯人。まぁ、この辺はもうキイロ本人から聞いてるだろうから、大した情報ではないかも知れないがな」
「......そうだな。キイロの姉で双子のドラゴン・ハーフだって事は聞いてる」
「なら、そこは省略しても良いかも知れないな。名前だけ言うと、アカとアオと言うらしい。どちらも能力の高いドラゴン・ハーフだそうだ。もうすぐ近くに潜伏している事は確定しているから、いつ狙われても良い様に準備だけはしておかないとな」
「そうだな」
説明して行くオリオンに、イリは短く頷いて見せた。
そんなイリは、内心でのみ闘志を強く燃やしていた。
相手がキイロの肉親であっても、許されない行為だとイリは考えていた。
一つ間違えれば、希望が見えたキイロの人生を完全に奪い兼ねない行為をした二人を、ボコボコにしないと気が済まない。
流石に、命までは取ろうと考えてはいないのだが......最低でもキイロに謝罪させるつもりでいた。
「ま、この双子とは、早ければ今日中にも会うだろうよ」
そんでもって......完膚無きまで叩きのめしてやる!
胸中で激しい怒りを燃やすイリがいた中、オリオンが話しを続けた。
「問題は次だ」
言ったオリオンが神妙な顔になる。
「どう問題なんだ?」
「率直に言う。王子が動く」
「王子が、か?」
イリはポカンとなった。
今の今までなりを潜めていた王子が......動く?




