賞金稼ぎとドラゴンメイド(アカとアオ)【9】
「そんなのは私の勝手でしょ? そもそも王族だからと言って、必ずしも高級なホテルや宿泊施設を利用しないと行けないなんて法律は存在しませんし?」
私の正論に、ルミ姫は屁理屈で応戦して来た。
いや、確かにそうかも知れないけれどさぁ?
「私が言いたい事はそうじゃないよ。王族として恥ずかしくないのって話」
「恥ずかしくないから大丈夫!」
何故だろ? 堂々と言い放って来た。
思えば、この姫様は王族と言う概念で考えると色々と型破りな所が一杯あった。
「そもそも? 私は王家とは早々遠くない将来に絶縁される可能性も高いわけで」
にこやかに言うお姫様。
公の場で言ったら事件だと思うんだけど......。
「どうしてそんなに王家を嫌うの? そこが不思議でならないんだけど」
「自由が欲しい。それだけ」
「......」
私は無言になった。
私の視点からすれば、貴女は十分奔放だ。
この上、どんな自由を欲っすると言うのか?
「それは、我が儘なんじゃないの?」
「どうして? 私が欲しいのは自由。地位も名誉も......お金だって必要最低限の物があれば、それで構わないと思ってる。これの何処が我が儘だと言うの?」
ルミ姫は憮然と語る。
分かってないな。
「そんな事を言える時点で、我が儘だと言えるんです。何と言うか、世間知らずと言うか......」
きっと、この人は世の中を甘く見て生きているんだろうな。
それはそれで幸せな人だと思う。
少し前なら羨ましい気持ちで見ていたに違いない。
今は違うんだけどね。
「お姫様。貴女はもう少し世の中を知った方が良い。きっと、世の中は貴女が考えてる以上に大変で厳しく、冷淡で......残酷だ」
「何が言いたいの?」
「そうだね......例えば、他人は他人。苦しくたって、誰も助けてはくれない。それが本来の現実......けれど、今の貴女はどう? 様々な人からの助けを多角面に色々と貰っている。それがどれだけ幸せな事か」
そして、その好意を無下にしている事が、どんだけ我が儘な事なのかを姫様は知らない。
知る由もないのだ。
何故なら、生まれた時から彼女はその境遇にいるからだ。
きっと、失って初めて知るのだろう。
実は、姫様と言う人物が、とてつもなく厚遇された存在であったと言う事実を、だ。
「姫様は姫様らしく振る舞えとは言わない。けれど王家の人間になるのが嫌だとか、それを放棄する考えは改めた方が、私は良いと思う」
「......」
いつになく真剣な眼差して言った私の言葉に、ルミ姫様は押し黙ってしまった。
けれど、これで簡単に引き下がるお姫様ではなかった。
「貴女こそ、王家の事を何もわかってない。生まれた時から、背負いたくもない国の未来を背負わされて......やりたくもない作法や説法を散々聞かされて、第二王位継承権とか言う不自由な足枷を強引に付けられて......それでも姫である以上は姫として立ち振る舞わないと行けない」
そこまで答えた時、ルミは瞳から涙を流していた。
「他人は他人である事なんか、子供の時から分かっていたよ。誰も助けてくれない事もね。顔や口ではチヤホヤされても、実際はただの厄介者だった。私を本当の意味で理解してくれた人だって......王家の中では誰もいなかった」
そして、貴女もね。
......そうと、言いたそうな顔になっているお姫様がいた。
そうか。
姫には姫の苦労があったんだな。
「ごめんなさい。言いすぎた」
私は素直に謝って見せた。
彼女には彼女なりの気苦労がある。
確かにその通りで、それを理解して上げる必要は勿論あったのだ。
ルミはちょっとだけ明るさを取り戻す形で微笑んで見せる。
しかし、少し前に見せた顔とは、若干の差違がある様にも感じる。
もしかしたら、今の言葉で姫様の中に心の壁が出来てしまったのかも知れないな。
「大丈夫。キイロの言い分も正しいからね......けど、ここにはいるし、イリの寝込みを襲うのもダメだからね?」
はぃ?
「いやいや、最初からそんなつもりはなかったよ」
「本当?」
ルミ姫は怪しそうな顔をして私を覗き込んで来た。
「本当! 偶然目が覚めたからイリの顔を見てただけ。この人には今日、命を助けて貰ったし......何か恩返しでも出来たらいいなぁ......って、曖昧に考えてただけ」
「そっか、あはは~。なるほど!」
......?
ルミ姫はホッとした顔になっていた。
そうか、そうなるのか。
薄々どころか、もう完全に気付いてたけど、やはりルミ姫はイリの事を......。
困った。
私はルミ姫が嫌いではない。
普通に親しい友人としての関係を築いて行きたいと考える程度には好きだ。




