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賞金稼ぎとドラゴンメイド(キイロ)【15】

「......へぇ」


 私の背中に生えた龍の翼を見て、男は感嘆の声をあげた。


「綺麗だ......お前の顔も美人だと思っていたけど、本当の姿はもっとこうぅ......美しい存在だったんだなぁ......」


 しみじみと言う男。

 ......なんて緊張感のないヤツなのだろうか?


 そ、そんなに私の翼って、そっその......美しいのだろうか?

 実は私はこの翼が大層気にいっているのだ。


 右が白銀。

 左が黄金。


 両翼が互いに異なる色を単独で放つこの翼は、私の故郷では最高峰の『龍の乙女』として崇拝される、至極の翼でもあった。


 ......そう。


 アルフレド様は、ちぐはぐで醜い翼と失笑していたが、そうではないのだ。

 決して、嘲笑の対象なんかじゃ......ないっ!


 故に、つい男の言葉に心が揺れてしまう私がいた。

 この両翼の価値をちゃんと理解していた事が、ほんの少しだけ嬉しかった。


 ......だが。


「この翼を見せた以上、貴様に明日はない」


 この両翼を開封する事は、すなわち私の中に存在するドラゴンの能力を全て解放する事を意味している。

 人間が対抗出来る様な力ではないのだ。


 翼を広げ、加速する。

 

 ガッッッ!


 渾身の一撃と言えた私の右拳は、男の左腕でガードされた。

 しかし、今度は手応えがある。

 さっきまであった、何と戦っているのか良く分からない、あの不思議な感覚は無くなっていた。


 行けるっ!

 

「とああぁっ!」


 更に連打を浴びせ......同時に魔導式を頭の中で紡ぎ出す。

 この状態になると私の魔力も大きく増幅され、威力のある魔法を一瞬で放つ事が可能になる。


 断罪コンビクションサンダー


 ドォォォォォォンッ!


 一瞬の稲光とほぼ同時に、鼓膜を大きく震わせる大音響が周囲に轟いた。

 辺りは、もうもうと立ち煙が舞う。


「......まさか、ここまでやるとはな」


 侮っていた。

 強かったよ、人間。

 貴様はもっと違う形で私と出会いたかったと言っていたが、私もそう思う。

 もっと......色々と違う形で出会う事があったら、あるいは今とは違った結果になっていたかも知れない。

 私の両翼を綺麗だと、美しいと言ってくれた、お前とは......。

 

「......残念だ」


 無意識に涙が出ていた。

 どうやら、あのルミ姫にあったから以降、死んでいた筈の感情が元気の私を困らせてくれる見たいだ。

 

「泣くな。まだ死んでいないし、お前も悲しませない」


 ......なんだと?


 私は目を大きく見開いた。

 まさか、あの一撃を受けてもまだ生きているとはっ!


 思った瞬間!


 ドンッッ!


「かはっ!」


 私の腹部に強烈な一撃が!

 これは......なんだ?

 こ、こんな事が......。


 たった一発の攻撃を受けた、これだけで私は地に膝を付いて倒れた。

 致命的かつ絶望的な一撃だった。

 

 そして、ヤツの自信がどこからやって来るのか......その理由を、私が思い知らされたのだ。

 

「私の負けだ」


 素直に降参した。

 他に打つ手がなかった訳ではない。

 勝利に執着するつもりなら、まだまだやれる事は幾らでも残っていた。


 しかし、そうじゃない。

 この時、私は悟ったのだ。


 ああ、この男なら......私を殺せる、と。


 伝承の道化師ピエロによって拉致同然のまま連行され、屈辱の服従を誓った私は、自害する事すら出来ずにアルフレドの手駒として、生きる操り人形を強制されていた。

 そんなふざけた時間に終止符を打つ時が、やっと私の元に舞い込んで来た。


「殺せ......抵抗はしない」


「......はぁ?」


 男は思いきり呆けた。

 そこから心外と言うばかりにがなり立てた。


「馬鹿言うなよっ! 俺にそんな真似が出来るかっ! お前見たいな可愛いくて綺麗で愛くるしい女を殺す? 冗談も休み休み言え!」


 そこから真剣な顔になって、私へと捲し立てる様に言い放つ。 


「良いか? お前は凄いんだぞ! 透き通った純粋な金色の瞳していて! 羽根とか幻想的で、そこらの宝石共が尻尾巻いて逃げる位、比べ物にならない魅力があるんだ。それをなんだ? 殺せと? 馬鹿馬鹿しいっ!」


 いきり立つ男に、私はキョトンとする事しか出来なかった。

 なんと言うか......ここまで異性に猛烈なアタックと言うか、そう言うのを受けた経験がなかった。


 お陰で、どんな態度を取って良いのかすら分からない。 

   

 ただ、悪い気はしない......かな?

 しかし、だ?


「そこまで言われると、むしろ馬鹿にされてる来もする」


 憮然と言う私がいた。

 だって、だ?

 誉めすぎるだろう? 

 からかってる様にも見える訳で。

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