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賞金稼ぎとドラゴンメイド(キイロ)【13】

 二つある候補のまず一つ目が、ここニイガではスラム街と呼ばれる危険なエリアだ。

 こう言ったエリアは、ニイガに限らず大体の町にあるのだが......根本的にならず者がはこびるエリアだ。

 当然ながら、お姫様が普通に寝泊まりしているとは思えないし、常識の上で考えるのならあり得ない。


 だが、ちゃんと候補地として書いてあるのだから......なんと言うか、少し困惑してしまう。

 

 実際に地図通りの場所に行っては見たが、やはり王族が宿泊するとは思えない。

 それ以前に、そもそもこんな場所に足を運ぶのだろうか?

 それすらも悩む程だ。


「本当にアテになるのだろうか?」


 地味に不安になってしまうが、今の私にはこの地図しか他に頼りにする物がないのだから仕方がない。


 そう思っていた時だった。


「どこに行く予定だったんだい?」


 ......声がした。

 この声は、確か......?


 思い、私は声がした方向に目を向けた。

 そこには、昼間に会った男が一人。


 ......なるほど。


「どうやら、この地図に間違いはなかったと言う事か」


 どうにも信じられない内容であったが故に、ついつい半信半疑でここまで来ていたのだが、どうやら杞憂に終わった模様だ。


「お前がここにいると言う事は、姫様もここにいると言う事だな?」


「......お前に言う義理はないね」


 確かにそうなるな。

 そして何より、この男は彼女が姫である事を否定しなかった。


 ......否、違うな。

 恐らく、もうヤツは気付いているのだろう。


 私と言う存在が、確実に姫にとって危険な存在であると。

 正確な詳細を知っているとは思えないし......思わないが、彼にとって重要な事は私の素性ではなく、姫様にとって危険であるかそうではないかなのだろう。


 そうであれば、もう答えは出ているのだろう。


「......ふふ」


 私は少し笑ってしまった。


「何がおかしい?」


「いや、別におかしい訳じゃない......ないが、何と言うか人間と言う生き物は、つくづく無謀と言うか、過信する生物なのだなと、そう思ったのさ」


 目前の男は私が来る事を予測していたのだろう。

 そして、私を倒す気でいた。


 ......ふふ。

 大した自信じゃないか。


 確かに、伝承の道化師(ピエロ)に呆気なくやられた挙げ句、今の不本意極まる境遇に甘んじている私ではあるが、


「人間ごときが、この私に歯向かう? 正気の沙汰ではないね」


「......歯向かうかどうかは、お前次第だ。俺は最初から喧嘩する気でお前に声を掛けた訳じゃない」


 ......なんだと?


「......はぁ。まぁな? お前はかなり厄介そうだなと、服屋の辺りで確信めいたのはあったんだよ?」


 そこまで言うと、男は軽く肩を落として言うのだ。


「その頭に付いてるの......飾りじゃないんだろう?」


「......」


 私は口ごもった。

 この時点で、眼前の男は私の素性をほぼ見抜いていると言う事だ。


 しかも、その上で私の前に来ている。

 場合によっては戦闘する事も考えられる筈だと言うのに、それでも私の前にやって来たのだ。


「お前は、馬鹿なのか? 利口なのか?」


 私の素性を知るだけで、相応の博識と言っても良い。

 単なる物知りと言うレベルでは、遠く海の向こうに存在する大陸の......更に奥地にある私の故郷を知るには至らない。


 しかし、そんな私の存在を知った上で、立ちはだかる行為は愚行以外の何者でもない。


 解せないな。


「どちらかと言うと......馬鹿かな」


 男は口許を緩ませて答えた。


「そうか......馬鹿なのか」


 これがヤツの答えなら、もう私は何も気にする必要はないだろう。


「もう分かっているのだろう? 私が何者で、何が目的なのかを」


「ああ、99%は、わかるね。99%はさ?」


「どう言う事だ?」


 不思議そうな私に対し、男はどうにも謎だと言うばかりの表情でこうと尋ねて来た。


「残りの1%が問題なんだ。これがなかったら、とっくにお前を殺してる。そこで本人に聞きたい。お前はなんで良いようにコキ使われてる? あんな中途半端な貴族の息子ごときに従う義理があるのか? 俺にはないと判断したね」


「......」


 私は何も言えなくなった。

 凄い男だと、素直に思えた。


 最悪、私の素性が割れてしまう事までは予測する事が出来たのだが、まさかそんな所まで見抜いてしまうとは。


「......で? 答えを聞きたいんだが?」


「そうだな。答えだけを言うのなら、お前は人間にして置くには惜しい程の洞察力を持っている......とだけ、言って置こうか」


 私は妖艶に笑った。

 ......少し自虐的に。

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