賞金稼ぎとドラゴンメイド(キイロ)【10】
お父様の言い分はごもっともだけど、それでもちょっとケチなんじゃないのかな……って気持ちになってしまうのは、私だけなのでしょうか?
まぁ、そこはともかくです。
ようやくやって来ました!
ニイガ名物、ジャンボパフェです!
お店によって多少のアレンジがあるのですが、大体は同じになっております。
たっぷりのクリームとサクランボが乗っております。
サクランボは、密かにお隣の国であるマガタの有名なフルーツなのですが、昔からの同盟国で、実は列車も繋がっている程。
その他、梨や桃なんかが入ってる、とってもフルーティーかつ美味しい果物のパフェなのです!
冒アカにいた時、このパフェを何度食べたいと思ったかっ!
「わ~いっ!」
私は思いきり喜んで、さっそく一口食べようとした……その時でした。
さくっと、思わぬ方向から予想だにしないスプーンが、私のパフェに侵入して来たではありませんかっっ!
「んなっっ!」
私は思わず唖然となりました!
だって、人のパフェにスプーン入れて来るとか、もう犯罪ですよっ! 私的にはっ!
「……お、うまいなコレ」
人のパフェにあろう事かスプーンを入れて来た犯人はイリでしたっ!
な、なんてアウトローなヤツなんだっ!
私の手はワナワナと震えます!
きっと、顔も真っ赤になっていたんじゃないかなって思いますっっ!
「いきなり、何するのっ!」
「何って、味見?」
「人ので味見するなぁっ!」
「そんなケチケチするなよ。たかが一口だろ? 減るモノじゃなし」
「減るから! 物理的にっ!」
しれっとボケた台詞を言うイリに、私は凄まじい勢いで叫び返してやった!
もうっ! 最低っっ!
私の怒りのボルテージが最大限に到達してた。
その時、しょうこりもなく再びスプーンを私のパフェに伸ばして来たイリ。
意地汚いったらないっ!
「そんなに食べたいなら、頼めば良いでしょっ!」
ガシッ!
私は素早くパフェを手にすると、これ以上の侵入を阻止する為に勢い良く頭上にパフェのグラスを移動させた。
これ以上、イリに食べさせるパフェはないっっ!
……と、言うかさ?
そ、そのぅ……一緒に同じパフェを食べたら……か、間接キスになるわけでして……。
うわきゃぁっ!
どどどど、ど~しよ、これ食べて良いのかな? 私、食べちゃっても良いのかな!
……思い、無意識に腕をブンブンしてた。
そして、自分でも気付かない内に、右手に持ってたパフェを器ごとブンブンやってしまった。
ハッとなった時には……もう、中身が無くなっていた。
ちょっと、力任せにブンブンと振りすぎてしまった見たいで……。
中身がポーンッと飛んで行ってしまった。
ぐ、ぐむぅ……私のパフェが。
けど、そうなると?
飛んで行ったパフェは一体、何処に?
そう思った私は周囲を軽く見回し、愕然となった。
ちょうど、私の後ろの席にいた綺麗な女の人。
恐らく、ここのカフェに紅茶を飲みに来ていた人なのだろう人の頭に、私の口に収まる筈のパフェが、べっちょりと……。
うわきゃぁぁぁぁっっ!
ご、ごご、ごめんなさいっっ!
その後、私は思いきり何回も紅茶を飲みに来た彼女に向かって頭を下げるのだった。
⬛□⬛□⬛
予想だにしないアクシデントではあったが、ある意味で千載一遇のチャンスではある……と、彼女は思った。
カフェテラスから徒歩数分程度の所にある服屋での事だ。
空からパフェが降って来ると言う、まさかの展開に流石の彼女も動揺してしまったのだが、結果的に三人と知り合う切っ掛けを掴む事には成功した。
パフェを頭から被ってしまった事で服が汚れてしまったのを見たルミが、速攻で言うのだ。
「是非、弁償させて下さいっ! あ、お代は、そこの唐変木に持たせますんでっ!」
……と、イリを指差してから、再びペコペコと頭を下げた。
「……は? パフェの雨を降らせたのはルミじゃねぇかよっ!」
「その原因を作ったのはイリでしょ! ここは貴方が責任を持ちなさいよっっ!」
きっと、彼からすれば寝耳に水だったのだろう驚きを見せる中、猛然と喚き散らすルミがいた。
……結果。
イリが彼女の服を新しく購入する形で話が進んで行く。
特に弁償などして貰わなくても良かった彼女だが……しかし、これで良い口実が出来た事も確か。
敢えて、ルミの好意に甘んじる形で、彼女はにこやかにお礼を口にして行くのだった。
「お~! 良いですねぇ。可愛いですっ!」
試着室で、新しい服に着替えた彼女を見て、ルミの瞳にキラキラ星が幾つも生まれた。
白いブラウスにチェックのマキシスカート。
少し長めのスカートは、程よく彼女の脚線美をもアピールしていた。




