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賞金稼ぎとドラゴンメイド(キイロ)【8】

「俺はお前らがどなろうと知ったこっちゃないが……それでも、仏心を出血大サービスで放出してやれば……素直に待った方が良い。じゃないと……」


 オリオンさんは、本気の顔になりました。

 ……ふぐぅ……。

 私に向けてる訳じゃないのは分かってるけど……スゴく怖いっ!


 こんな顔も出来るんだね、オリオンさんは。


「………」


 オリオンさんの近くにいた変な男の人は無言になった。


 きっと、胆を冷やしたんだと思います。

 うん、そうだね。

 オリオンさんの凄味がスゴい!

 思わずたじろいでしまう。


 ……うん。

 取り合えず、オリオンさんには逆らわない様にしよっと……。


 私がそんな事を心に誓っていた時でした。


「ようっ! 待たせたなっ!」


 物凄い勢いでやって来たイリ。

 性別は男に戻ってました。

 メイクを荒く落として来た感じ?


 地味にファンデっぽいのが頬についてる気がしたけど、敢えて言わない事にしました。


「……いや、待っていたと言うか、お前は誰だ?」


 私の近くにいた変な人は不思議そうな顔だ。


 ああ、そうか。

 この二人は知らないんだ。


 イリが男にも女にもなれるって言う事を。


 ……確かに、普通の人は分からないよね。

 そんな人、早々いないし。


「……ああ、そうな? そうなるわな? さっきの女してたヤツだ! だから『待たせたな』になるんだよっ!」


 イリは早口で捲し立てた。

 説明と言うより、荒っぽく吐き捨てる感じだった。

 

「………は?」


 変な人はポカンとなった。

 バカな事を言うなと叫びたそうな顔になってました。


 そうですね……きっと、普通に考えたらそうなるとは私も思います。

 でも、イリは普通ではないのです!


「……ツインフェイスデーモン」


 ポツリと、オリオンさんの近くにいた変な人が言う。

 どっちがどっちなのか分かりにくいね……う~ん。


 じゃあ、格下っぽい人が『変な男その2』って事にしましょうか。


 変な男その2な方が、ポツリと言います。

 

 この言葉を聞いて、その1さんの顔が見る間に青くなって行きました。


「……ま、まさか……そ、そんな馬鹿な」


「馬鹿は、テメェの頭だけで十分だ……それよか、オメーよ?」


 そこでイリはこれでもかって位にその1さんを睨んだ。


 下品だなぁ……もう、なんかやめてよ。

 知り合いがそんな顔をするのを見てるのは、こっちまで恥ずかしくなるからさ。


「俺の女に、何しようとした?」


 ………うぁ。

 ま、また言った!


 ふぅぅぅ………


 ど、どうしよ~!

 もう、これは……絶対の絶対に告白だよね!


 けど、強引だなぁ……。

 正式な交際もしてないのに、いきなり俺の女? スゴい傲慢なのです!


 せめて、ちゃんと私に告白して、OKを貰った上で、正式に私の彼氏を名乗りなさいよっ!


 ……ん?


 か、かかか……彼氏ぃっ!


 そ……そうか、そうなるのかっ!


 うきゃぁぁぁっっっ!


 だ、だめだ、なんか頭がおかしくなるっ!

 思わず、意識が消え掛かった。

 正直、心臓に悪い。

 ううん……悪いなんて物じゃない!


 でも……。


 ………。


 うん………。


 自分でも不思議だけど……けど、私の彼氏がイリでも、悪くはないかなぁ……って、思えた。


 


  ⬛□⬛□⬛

   



 地図を片手に、彼女はゆっくりと歩を進めていた。

 例の一件……この任務を任された彼女は、地図に記されたスラム街の一角にある廃ビルの様な場所へと向かっていた。


 その時、彼女は偶発的に数人の口論めいた悶着を目にした。

 遠目だから良く分からないが、どうやら痴情のもつれと言う所か?


 ああ……本当にこの街は、下らない争いが多い街なのだなと……侮蔑の目を見せつつ、何事もなかったかの様にすれ違おうとした。


 その瞬間。


「……え?」


 彼女の目が大きく開かれた。

 すれ違おうとした刹那、口論の真っ只中に標的としていた人物がいたのだ。


 想定外の偶然に、彼女は思わず動揺してしまう。

 

 彼女の常識では、大国の姫がチンピラ相手に絡まれる……と言う道理はない。


 実際問題、彼女のみではなく、一般常識とも言える道理だ。


 しかし、事実は文字通り非常識な光景を彼女の眼前に示し出していたのだった。


「……酷い街だ」


 王国の姫ですら口説かれる低俗さに、ヘドが出る。

 そうと本気で考えた彼女は、スタスタとゆっくりした足取りで、口論のまん中に向かって歩き出した。


 そこから間もなくして、二人の男が逃げる様に去って行く。


 事情は良く分からないが、面倒事が一つ減ったと、内心で考えた。


 彼女にとって逃げた男は興味の欠片すら抱けない、塵芥ちりあくた未満の存在であったからだ。 

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