賞金稼ぎとドラゴンメイド(キイロ)【7】
「ちょっと、お花詰みに……」
カフェテラスに来て、軽く注文を入れた所で、ルミは微笑みながら優雅に言っていた。
お姫様だからな……。
まぁ、分かるんだけど……一々上品なんだよな。
「ああ、行って来い」
私は席の前にあるテーブルに頬杖を付きながら、軽い口調で言った。
普通にトイレとか言えないのかねぇ……いや、別に構わないが。
「やっぱり、ルミ姫は庶民とは一味違うな」
「そうだな……一味どころじゃない気もするが、確かに違うな」
そして、違いが多すぎて、困り果てる事の方が圧倒的だな。
ったく……いつまで、こんな面倒な日々が続くんだか。
心の中で大きなため息を吐いていた時。
「離して下さい!」
ルミの甲高い声が、私とオリオンの耳に転がって来た。
「……ん?」
「……なんだ?」
新手の刺客か?
思い、俺とオリオンの二人は即座に席から立ち上がり、ルミの元へと急行した。
急いで向かった先にいたのは、
「良いじゃないかよ? 少し位、付き合ってくれてもさぁ?」
「そうだぜ? この兄貴はな? ここらじゃ有名なギャングの人間なんだぜ?」
………。
そう言う事な。
……ビビって損した。
「ナンパか、あれ?」
「そうじゃねぇの?」
真剣な顔から、少しホッとした顔になっていたオリオンがいた。
まぁ、私と同じ感覚なんだろうよ。
「……はぁ」
ったく、本当に面倒なヤツだな。
冷静に考えれば、そこの姫様は無駄に綺麗で無限の気品があって、魅力をぶん撒いて歩いてる様なヤツだから、可哀想なぐらいオツムが足りなくて、本能で身体を動かしてるアホからすれば、格好のエサなんだわな。
だけど、もう少し考えろよ……。
チンピラ風情が声を掛けても良い相手に見えるか?
「取り合えず、行くぞ」
「そうだな」
私は無意識に不貞腐れた顔になりつつ、オリオンと二人でチンピラのトコに向かう。
「おい、俺の女に手を出すんじゃねぇよ」
取り合えず、そう言って置いた。
この手の輩は、他に男がいると分かれば、結構な確率で簡単に引き下がる。
……が、しかし。
この時の私は思いきり忘れていた。
今の自分の性別を、だ!
「……はぁ? 俺の女? お前ら……そう言う関係なのか?」
チンピラは本気で引いていた。
見れば、対面にいたルミも苦い顔になっていた。
つまり、自分にまで同性愛の濡れ衣を着せられている事に、大きな不満の意を見せていたのだ。
………ふ!
「ちょっと待っとけっ! 良いか? 五分で戻る! それまで待ってろ! こんちきしょうっ!」
⬛ルミ⬛
悪党の捨て台詞みたいな事を言い放ったイリが、半べそで何処かに行ってしまった。
……何がしたいんだろう?
さっきも、変な事言ってたなぁ……。
確か、俺の女に手を出すな!……とか、なんとか……?
ど、どうしよ? こ、これって……もしかして告白?
う……うわぁっ!
どうしよ、どうしよ! どうしよ~っ!
そりゃね……イリは結構格好良いし、一緒にいると楽しいトコもあるし、ちょっと荒いトコあるけど性格もそこまで悪くない。
あ……でも、守護霊はあんまり良くないかも。
けど、でも、だけど!
何だかんだで、今は怖くない。
ううん、違う。
むしろ……頼もしい。
今もね? 変な男の人……今も私の近くにいるんだけど、その人に絡まれてスグに飛んで来てくれて、凄く嬉しかった!
それだけじゃない、とっても安心した。
……そう。
安心したの。
これって、やっぱりフィーリングが合うって事なのかなぁ……?
そんな事を一頻り考えていた時、私の腕をグイッと引っ張る変な男の人がいた。
「何だか知らないが、丁寧に待つ義理はねぇし。こっちはこの娘がいれば、それで良いからなぁ……なぁ、お姉さん?」
うぁ……。
変な男の人は気持ち悪い笑顔で私を見た。
見られるだけで、背筋がゾゾゾッ! ってなる。
うわ~んっ!
てか、何してんの?
私のボディガードなんでしょ?
「……はぁ、仕方ないな」
そう答えたのはオリオンさん。
オリオンさんは、何故かそこから動かずに様子だけを見てました。
てか、ただ見てないでちゃんと助けなさいよぅ~っ!
私は切実にオリオンさんへと目で訴えてみせた。
「おい、貴様ら……軽く忠告してやる」
「あん? 何を言い出すの? お前?」
ちょっとだけ剣呑な顔になっていたオリオンさんに、二人いた男の人……多分、私の近くにいる人より、ちょっと下の人なのかな? とにかく、その人がオリオンさんに喰って掛かりました。




