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賞金稼ぎとドラゴンメイド(キイロ)【3】

 そして、何よりの不条理とも言えるのが……


「……くぅ……すぅ……」


 ……と、まぁ、気分良く俺のベットを極々当然の様に独占してくれてる、超迷惑なお姫様の存在だ!


 あれから色々あって、ガルゴルさんにオリオンと一緒になって土下座してから、酔い潰れた御姫様を担いでガルゴルさんの酒場『ナーガ』を出た。


 まぁ、この時点で賛嘆な有り様のナーガを見て、何とも言えない気持ちにさせられたんだけど、問題はその後だ。


 仕方ないから、姫さんを背負ったままチェックインしてたホテルの受付まで行った所で、タイミング良く起きた姫様は、ホテルには行きたくないと駄々をねまくる!


 しかし、俺やオリオンもそうだが、姫様の寝床を今から探せと言われても……まぁ、アテはない。


 一応、地元だから知り合いのホテルとか宿舎とかはあるんだが……まぁ、胡散臭うさんくさい連中の宿屋だからな。

 ちょっと、そいつらには頼みたくはなかった。


 そうなってしまうと、なし崩し的に俺がオリオンの自宅に姫様を招くしかない。

 もちろん、俺は断った。

 断固として拒否した。


 当然だろう? あんなスラム街にある雑居ビルの廃屋はいおく染みた部屋に、キングダムなお方を泊めるとか? 正気の沙汰じゃねぇっ!


 まだ、普通の住宅街にあるアパートだったオリオンの方が全然マシだと俺は判断した。

 ここは絶対に間違っていないと思う。


 けど、ヤツは言った。

 俺の部屋はゴミ屋敷も真っ青な酷さだから、恥ずかしくて見せられないし、そんなトコに泊められないと!

 普段から整理しておけと、あれ程言ったろうが!


 恐らく……ヤツの言っている事は紛れもない真実だ。

 ……確かに酷い。

 こないだ行った時は、どこに座って良いか本気で分からなかった。

 もうジャングルだよ、あの部屋は!


 だが! それでも、俺の家に姫様を泊めるとか言う暴挙よりは、全然マシだと考えたね。

 つまり、ルミ姫を馬小屋以下のトコに泊めてニイガ王の怒りを買って、投獄されるのはお前だ! オリオンッ!


 これだけは譲れねぇぇぇぇっっ!


 そう思った俺。

 しかし、ヤツもこれだけは譲れず、しばらくの間は膠着こうちゃく状態に陥った。

 このままだと平行線を辿ったまま朝日が昇って来そうな勢いだったので、仕方なく通例の決め方でどっちに泊めるかを決める事にした。


 果たして。


 俺は負けた……最近のアイツはジャンケンの神様が舞い降りたかの様に強い。

 これで二連敗だ……くそ!


 これら諸々の……理不尽で不合理で非情過ぎた一部始終を経た先に、今の俺がいた。


 まぁ、正確に言うのなら『俺』ではなく『私』なんだがな。

 ここらは紛らわしいから、今後は男の時だけ『俺』と言う事にして置く。

 そっちの方が分かりやすいからな……って、誰に言ってるんだろうな、私は。


 俺が私になっていた理由は主に二つある。


 一つは、ルミ姫様が寝ぼけて上位ハイ陽炎魔法フレアを撃って来た時の対処をする為だ。


 男の時は魔力が低いから、あんな魔法を防御出来るだけの魔法壁を作る事が出来ない。

 他方、女の時は魔力が人一倍高いから、ルミ姫様が寝ぼけて上位ハイ陽炎魔法フレアを放って来たとしても、簡単に対処する事が可能な訳だ。


 そして、二つ目。

 私としては、こっちの方が問題だった。

 男と一緒に一つ屋根の下で寝た……とか、ニイガ王に知れたら洒落になってない!


 ここは最低限、避けておきたい所だった。

 まぁ、何処で誰が見てるか分からないからな? 用心もかねて女に変わっていたんだ。


 そんなこんなで、今の性別は女だった。

 余談ではあるんだが、性別によって体格が変わる私の服は、特殊な魔法が掛けられた素材の物を着ている。


 これが結構な値段する物だから困る。

 一応、賞金稼ぎなんて……やさぐれた商売してる関係もあるから、場合によっては女の格好も結構重宝する。


 おとりになって賞金首に近付く事なんざ日常茶飯事だ。

 そうなると、女の服もそこそこ必要になるんだが……これが、なぁ。


 男視点で言うと『そこそこではない』数なんだよなぁ……。

 こんなに用意する必要なんかあるのか? と言いたくなる量がある。

 しかも、無駄に高い。

 素材が特殊だからってもあるんだが……でも、女モノの服を着てる時に男に戻りたくないのが正直なトコだ。


 まだパンツ系の時は良い。

 ワンピとか着てる時に、緊急で男に戻った時が一回だけあったんだが……割と本気で死にたくなったぞっ!


 ………。


 ……うん。


 今、軽く思い出しただけで、瞳から一滴の涙が出た……。


 まぁ、ともかくだ。


 それら諸々の事情から、今の私は女になっていた。

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