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賞金稼ぎとお姫様【19】

 そこからルミは再びカクテルをグイッ! っとやって見せた。


 二杯目は明らかにおかしなオーラを纏い始めた。

 ………うん。


 どうしよ。

 これ宮廷騎士テンプルナイツに見つかったら、確実に俺達がどやされるよな?


 てか、明日の日程とか聞いてないけど、王様と謁見とかないよな?

 しかも、姫様が二日酔いで欠席とか……そんなオチとか付かないよな?


 あったら……マジで洒落になってないんですが!


 もう、なんか俺は想像だけで、この上なく胃が圧迫されてるのに気付いた。

 頼むよお姫様!

 ご乱心とかやめてくれよ!


「……ふ、うふふふふ……」


 ……?

 なんだろう?

 俺も知らない所でルミが第二形態に変身してた。


 簡素に言えば、ほろ酔いを第一形態だとして、完全に酔った状態を第二形態だとする。

 今のルミは間違いなく後者に値した。


「あ~あ……これ、明日は二日酔いだぞ、お姫様」


 オリオンが遠い目をしてほやいてた。

 きっと、俺と同じ事を考えているのだろう。

 分かる……分かるぞ友よ!


 あ、オリオンに色々押し着けて、俺は逃げるって選択肢も、まだ残ってるな。


 思って、俺はさりげなくオリオンを見た。

 同時にオリオンも俺をさりげなく見ていた。


 ……つまり、こんなトコまで同じ事を考えてた!

 この野郎! 人をダシにして、テメェはとんずらする気だったのか!

 なんて最低な野郎だっ!


「うぉい、そこのロン毛男、こっちに顔を見せなさいよ~ぅ!」


 俺の心に親友の裏切りと言う、未だかつて経験した事がない……いや、良くあるか? うん、あるけど、逆も良くあるからあんまり無いって事にして置こう的な怒りに燃えていた時、ルミの声が俺の耳に転がって来た。


 もうこれは完全に末期な気がする。


「な、なんでございましょ~か、姫様!」


「うっさい! アタシは姫様って呼ばれるのが嫌いなんろっ!」


 左様ですか……。


「分かった……で、ルミさんや……そろそろお帰りになられては?」


「にゃにぃ~! まだ来たばっかだろう? てか、ロン毛! ちゃんと私に謝りなさい!」


「……なんで俺が謝る必要が?」


「私を子供扱いした事! ほら、ちゃんとすいませんと謝りなさい!」


 ルミは、完全に座った目でバンバン! とカウンターを叩いて叫んでいた。


 ……はぁ。


「それは、どうも……すいませんでした」


「誠意がない!」


 バンバンッ!


 ルミは眉をつり上げた。

 あ~……もう。

 これだから酔っぱらいは……。


 そうと、心の中で思いっきりため息をついていた時だった。


「ちゃんと誠心誠意謝るのは、人間として常識でしょ! それが出来ないとは……これは罰が必要ねぇ」


 言うなり、ルミは小悪魔の様な笑みを妖艶に浮かべ、魔導式を頭の中に紡ぎ出す。


 ………………え?


 こ、この魔導式は。


 いやいやいや!


 姫様、ご乱心! つか酒乱!


 つか、ニイガ国のお姫様だからって、こんなまだ十五~六の若さで、出来る魔法じゃないぞ!


 てか、だ?


「ま、まずい! マジでこの店……潰れるぞ! 物理的に!」


 俺がそうと叫んだ瞬間!


「悪い子には、お仕置きですから!」


 上位ハイ陽炎魔法フレア


 とってもふざけたルミの魔法が酒場で大迷惑に発動した。


「……え? えええっ!」


 オリオンもマジでびびってた!

 間もなく太陽が店内に召喚されて……まぁ、とんでもない事に。


「……は、はははは」


 ガルゴルさんは呆然としたまま笑っていた。


 まさかの酒乱姫が、店内で放った超魔法に呆然とするしかなかった。


 その後、ガルゴルさんの店は三日程度の改装準備が必要になり、お店を閉める羽目になるのだが、余談だ。 



  

             以下、次回!

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