賞金稼ぎとお姫様【16】
「簡単な事です、あの方達は信用に値しないのです!」
ルミ姫様は声高にそうと俺達に言ってのけた。
つか、危険予知能力皆無どころか、寧ろマイナスのお姫様が、信用する事が出来ない宮廷騎士って、どんだけ信用性がないんだ?
「それは、姫さんの勘違いとかじゃ?」
それと、どうやってここまで来たんだ?
思えば、ガルゴルさんには悪いが、お姫様が来る店にしては下品過ぎる。
当然、こんな店をルミ姫様が知っているとは思えなかった。
「守護霊が濁ってるのです」
「……へ?」
俺はポカンとなった。
いや、言いたい事は分かるんだ。
分かるんだけど……。
「守護霊が濁ってる……って、リダみたいな事を言うな」
俺は思わず懐かしい名前を口にいた。
銀髪の長い髪を両端に縛ってる女だが、その見た目を激しく裏切る強さを持つ、歩く反則女だ。
「……え? リダを知ってるんですか?」
「……へ?」
意外そうな顔になっていたルミ姫様に、むしろ俺が驚いた。
「ルミさん、リダって……リダ・ドーンテンの事だよね?」
オリオンも意外過ぎてビックリしてる顔でルミに聞いていた。
ルミは速攻で頷きを返して来た。
「はい! なんでも出来る、不可能がない最強の学生です!」
「学生……?」
俺は眉を捻った。
リダが学生の筈はないからだ。
うーん……同姓同名ってヤツだろうか?
けど、なんだろう?
どーしても、気になるな。
「そいつは、銀髪で長い髪を両端に縛ってて、超炎熱爆破魔法とか平気で使う、アホみないなヤツだったりはしないよな?」
「ふぇぇ……スゴいです! 全部当たってます!」
………。
な、なるほど……。
これは、99% 俺の知ってるリダだな。
名前が全く同じなのは、偶然って事があるかも知れないが、長い銀髪を両端で縛ってる人で、超炎熱爆破魔法を簡単に使ってるアホみたいなヤツって所まで同じなら、もはや同一人物と言う回答しか、俺には言う事が出来ない。
「……まぁ、いいさ。なんであいつが学生してるのか知らないけど、取り合えずは聞かなかった事にしておく」
「え? イリさんはリダの友達じゃないんですか?」
「友達ではないかな……一応、知り合いではあるし、オリオンも何回か一緒に仕事と言うか、クエストで同じパーティに行ったりしてた」
「へぇ……リダとですか。やっぱり、リダはその時から凄かったんですか?」
ルミは瞳をキラキラ輝かせて聞いて来た。
なんで、そんなに無垢な瞳をキラキラさせちゃう様な顔が出来るんだろうな、このお姫様は!
「凄いとか言うレベルなんかじゃない……あれはチートだ。どうしたらあんなに強くなれるのか、俺にはサッパリ見当も付かない」
「わぁっ! やっぱり、リダだ! 昔からチートだったんだね、リダ~!」
ルミ姫様はご満悦だ。
何がそんなに嬉しいのか俺には全く理解出来ないし、特に興味もない。
ポイントとしては、だな?
「そんな事より、だ? ルミはどうやってここに? 守護霊を見る事が出来るってのは分かったし、それで危険予知可能だってのも、分かったんだが……」
「うん? これですかね?」
ルミは言ってから、ブローチの様な物を俺達に見せて来た。
「……なるほど、そう来たか」
「昔は良く、俺達も持ってたけどな。なんか懐かしいな」
俺とオリオンは、ルミの持つブローチの様な物を覗き込みながら言う。
懐かしむオリオンがいるのは、初心者時代には良くお世話になる魔導器でもあるからだ。
名前は……なんだったか?
確か、
「冒険者の絆だったか?」
そんな名前だった気がする。
正直、かなり昔に使ってただけの代物だったから、自信がなかったんだが、正解だったのかルミはすぐに頷いた。
「そうです。この冒険者の絆をこうして……」
頷いてから、ルミは冒険者の絆を俺の前に出してから、魔力を軽く吹き込む。
魔法力が限りなくゼロのヤツでも使える、初心者用のアイテムだから、吹き込んだ魔力は極微量なんだが、存外派手に輝いたりする。
昔、これに驚いた記憶があるぞ。
ちょっと懐かしい。
いや、そんな事はどうでも良いんだ。
輝いた冒険者の絆は、そこで一筋の光を吐き出すと、俺やオリオンの二人に投射される。
「こんな感じで二人に光を向けて、セットアップすれば、二人が遠くにいても現在地が分かると言う便利アイテムですね!」
ルミはドヤ顔でエッヘンと胸を張っていた。
……初心者のアイテムを見せてドヤ顔されてもな。




