賞金稼ぎとお姫様【13】
ドラゴン・メイドは密かに、一部の豪族や貴族等ではそれなりの需要があり、実際に見た事がある人間がいる程度の認知度はある。
ドラゴンと一言で述べても多種多様のドラゴンがいるのは、前にも述べているが……人間と仲の良いドラゴンも多種存在している。
中には人間と同居しているのが常識の村まである。
遠く……西方の大陸にある、エピダウロス地方のドラゴンは、その姿を人間そっくりにして、人間と仲良く生活するのが普通の村でもある。
……ちなみに。
人間が龍に合わせるのは、自然の理に触れる為、その逆になるのが一般的だった。
閑話休題。
この様に、ドラゴンが人間に合わせてその姿を変え、一緒に仲良く生活した末に愛を育み、その結晶を産み落とす事が日常の地がある程だ。
なので、ドラゴンハーフと呼ばれる、半分龍で半分人間と言う存在はいる事はいるのだ。
……が、世界全体からすれば極めて稀有なケースで、ドラゴンハーフがわざわざメイドになる事もレアなパターンでもある。
地方の金持ちレベルでは、願ったとしても叶わないレベルだ。
なんらかの偶然が重なれば、一人位ならなんとかドラゴン・メイドをゲットする事が可能かも知れないが……これが複数人ともなれば、奇跡すら起きない。
それを可能にしてると言うだから……一体、どれだけの莫大な財産をなげうったのか?
ここらを加味するのなら、もはや頭のおかしい人レベルである。
「まぁ、そのドラゴンマニアが、姫様の暗殺に一枚絡んでいるってわけか」
「……アル君が……」
納得する感じで答えたイリに、ルミは表情を青ざめて答えた。
「ああ、絡んではいるんだが……暗殺には絡んでいない」
「……まぁた、遠回しな言い方をする」
意味深長なクロノスの言葉に、イリが呆れ口調で苦い顔をした。
クロノスまで苦い顔になった。
「これは性分だ……仕方ないだろ? ともかく、そこは置いとけ。本題は暗殺ではない事だ」
「つまり、殺しはしないって事か?」
言われると、確かにルミは盗賊団に捕まりはしたが、殺されてはいなかった。
殺す気であるのなら、とっくに殺せた筈だ。
しかし、それをやらない。
否、最初から殺す気はなかったと言う事になる。
主目的は別にあったのだ。
「どうもなぁ……姫様を自分のモノにしたい節があってな? 記憶操作した後に奴隷か何かにでもするつもりだったみたいだ」
「自国の姫君をか?」
イリはポカンとなった。
流石に暴挙としか言えない。
「………」
他方、ルミは絶句していた。
何ともおぞましい話し過ぎて頭がついて行けない……そんな顔だった。
「それで、王子を唆して、姫を誘拐しようとしてた。王子も王子でメリットがあった」
「どんなメリットがあったんだ?」
「未来を知る権利」
「……はぁ?」
いよいよおかしな話しになったと、イリは胸中でのみぼやいて見せた。
「眉唾だと思うだろう? 実は俺もそうさ……所がそれを、王子は信じちまうんだよ……ったく、どんな魔法を使ったんだかな?」
クロノスは両腕を組みつつ、ぼやき口調の皮肉を吐き捨てる様に答えた。
そこから再び口を開く。
「方法は知らん。まだ情報が錯綜してて、判然としてないが、王子はこの宰相の息子によって未来を見たらしい……で、だ?」
ここまで言うと、クロノスはいつになく神妙な顔付きになった。
「その未来で、姫様が女王になるんだとさ」
「ええええええっ!」
クロノスの言葉に、ルミが思いきり驚いた顔でスーパーでっかい声を張り上げた。
「そ、そそそ! そんなの困ります! 私はもう、ニイガの王家である事だって辟易してるのです! 女王? 馬鹿ですか! その未来はっ!」
ルミは本気で困惑していた。
クロノスは穏和に笑って言う。
「飽くまでも噂に過ぎないし、姫が女王になる現実があったとしても未来の話しだ。今じゃない」
「いや、今じゃないとしても困ります! 未来はそうなるかもって事ですよね?」
「そうだ。そうなる『かも』なんだ」
アタフタしながら叫ぶルミに、クロノスは言った。
つまり、まだ不確定だと言いたい。
「未来なんてのは、仮に一部を予測出来たとしても、確実にそうなるとは決まってない。所詮は不確定要素の一つなんだ……つまり、可能性としてルミ姫が女王になる未来だってある……レベルの未来予知に過ぎない」
「なるほど。つまり、それって俺でも言えるレベルだな」
「そうそう。極論からすれば、そう言う事だ……こんな子供だましの未来予知を真に受けて、姫様を消そうと本気で動いてる王子の頭がむしろおかしい」
クロノスは大きなため息をついた。




