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賞金稼ぎとお姫様【10】

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 もう、私の頭の中はこんな感じだ。

 そんな、途方に暮れた私がいる中、神秘的な美しさを持つ女性……多分、さっきの男の人と同一人物なのだろう人が穏やかに口を開いた。


 思えば、守護霊オラは一緒だったなぁ……うーん、そうなるのか。


「ちょっと、魔法で不意打ちを喰らってな? せっかくだから超炎熱爆破魔法フレインダムドをかましてやった」


「……はぁ?」


 ……え?


 超炎熱爆破魔法フレインダムド……って、リダが使ってた、あの魔法?

 私は唖然となりました。

 ハッキリ言うと、あの魔法はメチャメチャ難しいのです!


 そうそう簡単に、誰でも出来る様な魔法ではなく、私も実はリダに魔導式を教えて貰いはしたけど、全然使えない様な……そんな、超絶難しい魔法なんですっ!


 それを、まるで火炎魔法ファイヤーでも使うかの様に簡単に言ってたイリさん。

 色々と謎過ぎて、どんな言葉を出せば良いのかわからなくなっていた所で、オリオンさんが愕然とした顔になって怒鳴った。


「馬鹿かお前っ! そんなアホな魔法を素人同然の野盗に使ったら、肉片も残らないだろうがっ!」


「……いや~。それが本当にそうなっちゃって。首取るの忘れちゃったんだよねぇ」


 スゴい剣幕で怒るオリオンさんに、イリさんが誤魔化し半分……と言うか、完全に誤魔化す様な笑い方をして、ポリポリとホッペの辺りを人差し指で掻いていた。


「だぁぁぁぁっ! 本当に馬鹿野郎過ぎるだろ、ボケッ! ふざけるのは、その顔だけにしとけよ、このアンポンタン!」


「やかましい! 私だって後で凄く後悔したんだ! てか、アイツがセコイ真似したからこうなった訳だし……てか、ふざけた顔とか、その台詞がふざけんなっ!」


 その後、二人は思いきり喧嘩を始めてました。

 私は、完全に置き去りです。


 えぇ……と、私はどうすれば良いのだろう?


 思わず苦笑しつつ、でもどうして良いか分からない私は、怒鳴り合う二人を前に、ただただ黙って見ている事しか出来ませんでした。




 ■□■□■




 ルミを助けた二人は、飛竜に乗って辺境の森から首都ニイガへと戻って来た。


「うわぁ……空から見るニイガは、ちょっと綺麗かも」


 飛竜に乗り、街が見えて来た所で、ルミは感嘆の声を上げる。

 街から辺境の森まで往復して来た事もあり、辺りはすっかり陽が落ちていた。


 夕暮れの街並みが三人の視界一面に広がる。

 魔導大国ニイガは、大陸屈指の大都市でもある。


 人口は約150万人。

 周辺にある衛星都市等を含めたニイガ首都圏の全人口は約300万人にもなる。


 世界人口が数億人程度のこの世界において、総人口300万人もの大都市はそうそうお目に掛かれない。


 大陸全体で見ても魔導都市ニイガは二番目に大きな都市で、大陸一の人口を誇るトウキに次ぐ大都市でもあった。


 余談だが、トウキはリダVerで展開している冒アカがある街でもある。

 ……あるんだけど、ここでは余談程度に留めて置こう。


 それはさておき。


 また、ニイガは文化レベルの極めて高い都市である。


 他国と一線を引くレベルの魔導力は、街の生活水準をも大きく引き上げていた。

 例えば、他国ではまだ走っていない機関車が日常的に走っていたり、重工業や鉄工業等が盛んで、この国でしか作られない特殊な建物等が多く建造されている。


 煉瓦作りの建物が主流の他国とは違い、高レベル魔導を駆使する事で、高品質な鉄工業を営んでいたニイガは、その建物にも独自の加工品が当然の様に用いられ、鋼鉄と加工した骨組みの大きなビルが、所狭しと林立していた。


 また、照明等にも様々な工夫がなされ、街は二十四時間明るい事が常識の街でもあった。


 この様に、魔導大国の首都ニイガは独自の文化と高い文明、高レベルの魔導力を融合させる事で、世界が一目を置く程の巨大都市になって行ったのだった。


 三人は飛竜に乗ってニイガの街に入って行くと、そのまま賞金稼バウンティハンター組合ギルドの本部へと向かう。


 拐われたルミ姫を助けた事の報告と、彼女の安全を確保する為の打ち合わせ等を兼ねて、組合長でもあるクロノスに会う必要があったのだ。


「良し、着いたぞ」


 組合本部に飛竜を降下させたイリは、まず最初に飛竜から降りてみせた。


「あら? ここは?」


 程なくして飛竜から降りたルミは、ちょっと懐かしい物を見る様な顔をして見せる。


「……ん? 何だルミさん? ここを知ってるのかい?」


 ワンテンポ置いて飛竜から降りたオリオンが意外そうな顔になってルミへと答えた。

 王家の人間でもあるルミにとって、賞金稼ぎ組合など縁も所縁もない場所だと思っていたからだ。


「あ、そうですね。確かクロノスさんが仕事をしてる場所だったと思います」


「……へぇ。うちのボスまで知ってるのか」


 頷くルミに声を返したのはイリだ。

 余談だが、性別は元の男に戻っていた。


 イリの視点からしても、オリオンと同様に王族が賞金稼ぎ組合などと言う、悪党が悪党を裁く様なダークな組織に縁があるとは思えなかったのである。

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