賞金稼ぎとお姫様【9】
ああ、そうそう。
それでね? イリさんの守護霊なんだけど、これがとっても不思議なのです。
普通に見ると白いの。
だから、いい人なのかなって思う。
……でも、違う。
良く見ると、内側が黒い。
それもただ黒いんじゃなくて、こうぅ……ダークマター見たいな? スゴい暗黒チックな黒さなのです!
こんな守護霊なんて、私は初めて見たよ! もしかしたら、リダも見た事がないんじゃないかって位、凄く凄く特殊!
だから、今の私は絶賛困惑中であります!
白い事は白いし、そこだけ見ればスペシャルいい人なのに、内側の所にすこーしだけあるダークマターが気になって気になって仕方ないのです!
こんなおかしな守護霊の人、私は怖くて……信じて良いのかどうかも思案の暮れ所。
どうするのがベストなんだろうね……もう、本当に困るなぁ。
「う~ん……」
両腕を組んで悩んでしまった。
「どうかしたかい? 姫様」
……ぐむ。
「オリオンさん……で、良いですか?」
「ああ、構わないぜ? 好きな呼び方で呼んでくれ」
「はい、それではオリオンさん。私の事はルミと呼んで下さい。正直姫様とか呼ばれるのは心外です」
「……そ、そうなのか?」
オリオンさんはポカンとなっていた。
そうですね……オリオンさんの仰る通り、私は姫なのだから、姫様と呼ばれる事を不快とするのはちょっとおかしな話しではあるのです。
そこは私も納得しますが、そうではありません。
「今の私は、ただの学生に過ぎません。在籍こそ名目上はニイガ王家の人間となってますが、いずれ王家とも縁を切るつもりなのです」
「……はい?」
あ、ハニワ見たいな顔に。
スゴいなぁ……もう、これは顔芸だと思います。
……あ、別に悪い意味ではないんですよ?
それに本題は、そこではないのです。
「なので、私の事は普通にルミと呼んで下さい。よろしくお願いします」
私はペコリと頭を下げてお願いした。
「……あ、えぇと……了解」
オリオンさんは、呆気に取られた顔になってはいたけど、私の意思を汲んでくれたみたいです。
うん、やっぱり良い人だね。
「ありがとうございます」
「………」
私は笑顔で微笑むと、オリオンさんは何故か無言になってしまった。
……? どうしたんだろう? 顔も赤い様な気がする。
「どうかなさいましたか?」
「……え? あああ! い、いや! 何でもない! はははっ!」
私の声を聞いて、ハッ! となったオリオンさんは、突然アタフタし出してから、いきなり笑っていた。
………?
変な人だね。
でも、悪い人じゃ無さそう。
「ふふふ……安心しました」
私は微笑みながら、オリオンさんに答えた。
「安心?……ああ、そうだな。安心してくれて結構。もう大丈夫だ、大船に乗った気持ちでいてくれ。君に危害が及ぶ事は100%ない」
「はい、もちろん存じております。ですが、それとは別個に安堵した件がございまして」
「別個? 他になにかあったかい?」
不思議そうな顔のオリオンさんに、私は再び満面の笑顔になって答えた。
「貴殿方が、とっても良い人なんだなって、事です」
「………」
オリオンさんは再び無言になった。
なんだろう? こう言う病気の人なんだろうか?
その、なんて言うの?
笑顔を見たら、頭がボケてしまう病?
我ながら、なんて酷いネーミング。
そんな病名なんかある訳ないし、病気自体ないでしょうけどね。
でも、なんとなくほけーっとしてるオリオンさんを見てると、そう言う病気が本当にあるんじゃないかって、つい思ってしまう私がいました。
ガチャッ!
……おや?
そこで掘っ立て小屋の入り口が開いた。
誰かな? 盗賊の方ならお断りしたい所なのですが……?
そんな事を思っていた時、ドアの向こうからやって来た女の子。
誰だろう?……凄く美人。
何処か神秘的で、肖像画にでも出て来そうな美しさがあって……でも、何処か妖艶さがあってミステリアスなオーラなんかもあって。
ハッと息を飲む美しさと、困惑の渦に思考を投げ飛ばされそうな、謎の雰囲気を混合させてる感じの人だった。
本当に……誰? 何者なの?
私の中に沢山のハテナがポコポコ量産されてる中、オリオンさんが答えを口にしていた。
「ん? 何だイリ? 女になんかなって? 魔法を使わないと勝てない様な相手だったのか?」
えええええええっっっっ!
私は思いきり混乱した!
な、なに?
ど、どどどど……どう言う事?
私が知ってる限り、イリさんは男の人だった。
もしかして、イリさんは二人いるの?
あ、けど……さっきオリオンさんが『女になんかなって』とか言ってた気も……?
いよいよ、訳がわからなかった。




