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母親と言う恋人【8】

 本当、こんな残念部分だけ、うちのキイロと同じにならなくても良いと言うのに。


 ……もしかして、俺は束縛する女に好かれる、不幸な星の元に生まれて来ているとか……そんな呪いなんてないよな?


 もちろん、そんな呪いなんてある訳がない事は知っていたのだが……なんとなく、本当にそ〜ゆ〜ヘンテコな呪いがあるんじゃないのかな?……って、地味に思っていたりする俺がいた頃、


「キイロってのはさ? 間違いなくイリが『前に付き合ってた人』だよね? 違う?」


「……ま、まぁ……うん、そうだな?」


 真剣な顔になって迫って来るキリに、俺は物凄く言い淀みながらも頷きを返した。

 ただ、この『言い淀む』と言う行為が、キリのかんに触ったらしい。


「なんで、そんなに歯切れが悪いの?……なんか、イリの態度を見てると『まだ終わってない』って感じに見えるんだけど⁉︎」


「……っ⁉︎」


 更にトゲトゲしい叫び声をあげて来るキリに、俺は思わず声を詰まらせた!


 なんて事はない。

 キリの言っている事は、全て当たっているからだ。


 そして、この言葉を否定する事は出来ない。


 何故なら……この言葉を否定してしまったのなら……俺は、本当に浮気をしている様な物になってしまうからだ!


 …………。


 いや、うん、まぁ……現状でも、既にキイロの視点からすれば、完全なる不倫だろう。

 だけど……さ?

 やっぱり、最低限……ここだけは! って言う部分だけは、俺も守ろうとしていたんだよ?


 それが、現状の言葉だ。


 キイロとは、過去の事……と言う内容に……肯定的な台詞を口にはしない部分だ。


 例え、それが今の様な、絶対にキイロとは顔を合わす場所ではなく……かつ、キイロ本人の耳に入る事は絶対にありえない状況下であろうと……だ!


 そうであったとしても、俺は……思う。



 ここだけは、絶対に譲れない!



「……はぁ」


 俺はため息。


 もう、ダメだ。


 ギブアップ。

 精神的に、ここまで追い詰められるとは思わなった。

 

 もう、楽になろう。

 

 確かに、キリの事を考えるのであれば、ここで『それは昔の話で終わった事だ』と、にこやかな笑みで言うのが妥当な選択肢であろう。

 キリの気持ちを和らげると言う目的も加味するのであれば、ここは方便でも良いから、優しい嘘を口にするのが良策であるに違いない。


 ……けれど。


 俺にとって、キイロは……キリ以上に大切だ。

 

 キリは、俺からすれば……過去、俺を産んでくれた母親に過ぎないのだから。


 俺的には感謝してる。

 産んでくれてありがとうと思う。


 でも……だけど。

 一生、一緒に生きたい相手……と言う意味で言うのなら、残念ながら……キイロなんだよ。


 そこだけは、絶対に譲れないんだ。


「何、ため息吐いてんの? そんなんじゃ、私……全然納得出来ないんだから!」


「ああ、そうだよな? うん、そうだ。分かってる……だから、キリも納得の行く話しを『これから』してやろう」


 答えた俺は、周囲を軽く見渡した。


 なんとなくであったが、このタイミングで小人ウルズがやって来ると思ったからだ。


 理由は簡素な物だ。

 俺は、これから本当の事をキリに暴露してやろうとしているんだ。


 なんなら、近くにトミィとマグネの二人だっている。

 一応、店の奥にあるスタッフ・ルームに向かったと言う形になっているけど……まぁ、キリが俺へと叫んでいたから、気になって近くまでやって来ていたんだろう?

 俺の角度からは見にくいが、店舗内の棚に隠れる形で、こちらの様子を伺っているのが分かる。


 ここから考えて、トミィやマグネにまで秘密を暴露する事になり兼ねない。


 ………。


 それは流石に不味いな?


「取り敢えず、仕事が終わったら言う……ここは、ちょっと『人が多い』からな?」


 答えた俺は、さりげなぁ〜く棚の裏側にいたトミィとマグネの二人へと答えた。


 ガタンッッ!


 直後、棚の裏側で、何かが倒れた音がしていたけど……まぁ、怪我してない事だけを願って置こうか。


「……ちゃんと話してくれるんでしょうね?」


 程なくして、眉を釣り上げたキリが俺へと再度尋ねて来た。


 ガタンッ! って言う物音が耳に入った事で、近くにマグネとトミィの二人がいる事に気付いたからか? 今回ばかりは素直に俺の言葉に肯定的な態度を取ってみせた。


 ある意味、トミィさんとマグネの二人が近くにいてくれて良かったかも知れない。


 俺としても、心の準備と言うかなんて言うか……そう言う気持ちがあった。

 勢いで口走ってしまった物の……そのままの勢いで、なんでもかんでも暴露しまくってしまいそうだったからな?


「ああ、ちゃんと話す……だから、取り敢えず仕事をしようか?」


 キリの言葉に、俺は笑みのまま答える。


 こうして、俺は仕事が終わった後に、キリと二人で近所の喫茶店へと向かう事になって行くのだった。

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