表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/1261

賞金稼ぎとお姫様【7】

 ま、いいさ。

 この髭達磨がただの小物でも、そうじゃなくても、俺のやる事に変わりがある訳ではない。


 ただ、自分の仕事をするだけだ。


「お前の罪状を言う。ここで色々やって来た諸々の事だ。言い逃れは出来ないだろ? 強盗、殺人、拉致、監禁等々だ。これに加えて今回は一つ、特別な罪状を用意してやった。国家反逆罪だ」


「……っ!」


 俺の言葉に、髭達磨は顔を引きつらせる。

 この顔を見る限り、どうしてこの罪状が自分に降り掛かって来ているのか分かってる感じだな。


「よりによって、一番やっては行けない罪をわざわざ作るとは、こんなトコでチンケな盗賊してるお前には贅沢過ぎる罪状だな?」


 俺は嫌味っぽく皮肉めいた言葉を投げてみせた。


「国家反逆罪はキツいぞ? もう、本当に殺してくれと自分から懇願したくなる様なむごいシゴキを受けて、それでも死ねなくて……心身共に廃人になった所で、ようやく死ねる刑だ。聞いてるだけでゾクゾクするだろ?」


 極寒とも言える冷ややかな笑みを浴びせてやる。 


「……う、うぁぁぁぁぁっ!」


 髭達磨は発狂していた。

 ……まぁ、コイツの末路は間違いなく壮絶だがらな。

 下手なスプラッタより酷い。


「だが、俺は慈悲深い。二つの選択肢を、お前に与えてやる」


「ほ、本当か!」


 髭達磨はかなり必死な顔して俺に叫んでいた。

 そこには、わずかな希望があると、コイツは思っている見たいだ。


 ……ま。


 惨い殺され方をされない……と言う意味では、希望かも知れないがな。

 

「一つは、このまま衛兵に捕まり、法に殺される。そして、もう一つは……」


 ここまで言うと、俺は最高潮に冷たい笑みを色濃く作ってみせる。

 その上で、髭達磨に言った。


「この場で、俺に首を跳ねられるか、だ」


「……なっ!」


「選べ。俺はどちらでも構わないぞ」


「……くぅ……そぉぉ……」


 髭達磨は歯を思いきり食い縛り、四つん這いになりながら、地面の土を思いきり握りしめていた。


 これが悪党の末路ってヤツだな。

 次に生まれて来る時は、もう少しマシな人生を歩む事だ。


「聞こえなかったのか? 選べ。もし選ばないのなら、俺はお前を衛兵に引き渡す。精々……死より苦しい拷問ライフを満喫するんだな」


「ま、待ってくれ!」


 四つん這いになっていた髭達磨が、そこで俺のズボンの裾を両手で掴んで来た。

 汚ねぇな……触るんじゃねぇよ。


「お、俺には! 目に入れても痛くないまでに可愛い娘がいるんだ!」


 ……はぁ?


「……だからどうした?」


「お前には人間としての情がないのか! 娘にとって、たった一人の肉親が死ぬんだぞ! 悲劇だろ? 人を悲しませるのが、お前達の仕事なのか!」


 髭達磨は精一杯の激情を俺にぶつけて叫んでいた。

 

 ……人を悲しませる仕事、か。


 こいつら野盗ごときに、そんなふざけた台詞を吐かれても、お前らに言われたくねぇよと、一蹴して終わりではある。


 だが、俺は不覚にも、少しだけ感慨に耽ってしまった。

 それは時間にして数十秒。

 ほんの少しの隙でしかなく、例え数十秒の間に逃走されても余裕で捕まえる事が出来るが故の油断でもあった。


 多分、この髭達磨もそんな短時間じゃ逃げる事なんか出来ないと理解してたんだろう?


 なら、コイツの取る選択肢は一つ。


 俺を殺す事だ。


 炎熱爆破魔法フレアボム


 ドォォォォォンッ!


 俺の意識が少しだけ離れた、その隙を突いた髭達磨は、渾身の上位魔法なのだろう攻撃魔法を放って来た。


 火炎魔法と爆発魔法をミックスさせた上位魔法だ。

 普通の人間なら、こんな魔法を近距離で直撃されたら塵も残らないだろうよ。


「ふはははははっ! 馬鹿めっ! 油断しやがって! 辺境とは言え、ここは魔導大国ニイガだ! 盗賊だって上位魔法の一つや二つ、使えるんだぜ! 勉強になったろう? ははははっ!」


 不意打ちの炎熱爆破魔法フレアボムを放った髭達磨は、勝ち誇った声で高笑いまでして見せる。

 恐らく、今の一撃で俺が吹き飛んだとでも思ったんだろう?


 だが、な? 髭達磨。


「そうだな? ここは魔導大国ニイガだ」


 俺は髭達磨の言葉に軽く肯定してやった。

 こんな事はお前に言われるまでもなく分かってるんだよ。


「……な、ななな……なんだと?」


 髭達磨は身体全体で驚きを見せていた。


 恐らく、コイツは二つの出来事で驚いているのだろう。


 一つは俺がピンピンしていた事。


 あれだけの爆破を受けていて、全くのノーダメージだった事に動揺を隠せないのだろう。


 そして、二つ目。


 それは……今の俺が『俺ではなく私』になっていた事だろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ