賞金稼ぎと恋する混沌龍【11】
「……え?」
ヒャッカは、ここに来て気付いた。
ポカンとなった顔が無言で語っている。
「えぇと……そうなると、あれ? うん? え?」
ヒャッカは、かなりオロオロした顔になってから、露骨にふためき口調でうろたえていた。
「……やっと気付いたのねぇ」
キイロは嘆息混じりに声を返した。
同時に少しだけ安堵の息を、胸中でのみ吐き出した。
とどのつまり、今の今まで、全然気づかなかったのだ。
自分で勝手に思い込んでいただけに過ぎない。
「もう、説明する必要はないよね? 私とイリは一緒に住んでるんだけど、その関係は兄妹でもないし、当然だけどルームシェアって訳でもないからね?」
「いや、ただのルームシェアだ」
やんわりと答えて行くキイロに、イリが真顔でキッパリ答えた。
ゴォォォォォッッ!
刹那、キイロの口から炎が吐き出された。
勢い良く放射された火炎は、イリをこんがり焼いていた。
「イリは黙る! 話がややこしくなるでしょ!」
「……いや、だってさ……別に付き合ってる訳じゃ……」
『ないんだし』と、答え様としていた所で、ヒャッカの瞳が凛々に輝いていた事に気付いた。
この瞬間に悟った。
ここで、付き合ってないとキッパリ言ってしまうと、絶対に面倒な事が起きる!
「いや、俺達は付き合っているよ! うん! これはマジだ。普通に同棲する感じで一緒に住んでるんだ」
イリは速攻で前言を撤回し、下手な役者よりも情熱的な声音で、力強く言っていた。
「…………」
ヒャッカはちょっとだけ怪訝な瞳になって、イリとキイロの二人を見ていた。
顔では言っている。
本当にそうなの?……と。
他方、怪しむヒャッカを見て、キイロは殺意の波動染みた物を、あからさまに飛ばしていた。
ここで、イリが真顔で否定的な台詞を口にしなかったのなら、ヒャッカだってここまで怪しむ事はしなかっただろう。
……てか、今の今まで、おかしい位に鈍感だったと言うのに、どうしてそう言う所は敏感に反応するんだと叫びたい。
「……そうか」
少し後、ヒャッカはピンと来たらしく、ある一つの答えに到達した。
「つまり、二人は友達以上、恋人未満!」
「……う」
ビシィッ! と、指まで差してズバッと言い放つヒャッカがいた時、キイロはちょっとだけ仰け反ってしまった。
そこからハッとなる。
実際の所、今のヒャッカが言った台詞は当たらずとも遠からずであった為、ついつい反応してしまったのだが、
「ち、違うから! 私とイリは正真正銘、両想いのアツアツなカップルだからっ!」
素早くキイロは、そうとヒャッカへと叫び返して見せた。
「アツアツカップルって言葉を、今度辞典で調べてみた方が良いと思うぞ、キイロ……流石にそれは無理が……」
そこから、イリが嘆息混じりにそう答えていた所で、再びキイロの口から強烈な火炎放射が飛び出て、イリがまたもやこんがり上手に焼けていた。
「だからっ! イリは黙ってなさいよ! 本当に話がこじれるだけ何だからっ!」
キイロとしては、これ以上の好敵手はノーセンキューなのだ。
現在はトウキの学園にいるルミだけでも、十分に面倒で面倒で仕方ないのだ。
この上、混沌龍までもイリ争奪戦に何か加わって来られたら、違う意味で混沌と化してしまう。
「ふぅ~ん……」
ヒャッカは、完全に疑いの目だ。
もう、キイロの言っている事を信じようとしている素振りなど皆無だ。
むしろ、今のキイロが色々とでしゃばる様に口を開けば開くだけ、ヒャッカを追い出したい為に嘘を吐いている様にしか感じない。
だからだろう。
「やっぱり、信じられないなぁ……キイロさんが本気なのは伝わって来るんだけど、イリさんの方からは、あんまり伝わって来ない感じがするよ」
ヒャッカは疑念を込めて言う。
「イリはシャイな人だから、あんまりそう言う事を顔に出させないタイプなんだよ。本当は私の事を誰よりも大切に考えてくれてるし、そこは私も良くわかってるから」
だから放って置いてくれないか?
そう言いたい気持ちで一杯のキイロがいた。
「それって……ただ、思い込みが激しいだけとかって……ない?」
「アンタに言われたくないからっ!」
眉を捻って言うヒャッカに、キイロが猛烈なツッコミを入れた直後、
「おお、凄いなヒャッカちゃん。ズバリそれだ! 当たってるよ!」
ゴォォォォォッッ!
本日三度目になる火炎放射を喰らうイリがいた。
いい加減、学習しないと全身大火傷になってしまう気がする。




