賞金稼ぎと恋する混沌龍【10】
「……で、ヒャッカさんは、これからどうするつもりなのですか?」
キイロは凄味を効かせてヒャッカに尋ねた。
「え? これから? もちろん、ヒャッカさんもここでイリさんと一緒に暮らして~。そしてラブラブな時間を一杯エンジョイするんだぁ」
すると、ヒャッカは両手を合わせた後、乙女チックに瞳を輝かせつつも、恍惚の表情になりながら、水素ガス張りの軽やかさで声を吐き出していた。
「……へぇ」
キイロは短く頷いた。
けれど、額に怒りマークが綺麗に出来上がっていた。
背後は、もっと露骨だった。
どう考えてもあり得ないまでに生まれている、強烈なマグマ染みた熱い怒りのオーラが、
ゴゴゴゴゴゴッ!
とかって、地鳴りっぽいのを出していた。
「……キ、キイロ……落ち着け。背中からおかしなオーラが出てるぞ……てか、口からちょっとだけ炎が漏れてるぞ! そこはマジでやめておけ!」
イリが超絶級の狼狽を見せながらも、蒼白になって声を張り上げる。
現状、今のキイロを見る限り、怒りをギリギリまで抑えに抑えている事が良く分かった。
他方のヒャッカは、依然として陽気なオーラを、お花畑パワー全開で出している模様だが……これが何らかの形で怒りへとベクトル変換してしまった日には、目も当てられない。
理由は簡素な物だ。
見た目は、黒髪黒目のスペシャル美人で、胸とかお尻とかが余りにも蠱惑過ぎて……もう、出る物語を間違えてますよ? と、本気で言いたくなる様な魅力の集合体しているヒャッカだが、その正体は泣く子も黙る天下の混沌龍だ。
この世界が終焉を迎え、秩序が完全に崩壊した時に出現する混沌の覇者だ。
ハッキリ言おう。
こんな化物が自宅で暴れたら……こんなチンケな建物などアッサリ崩壊してしまう!
音を立てて、ガラガラと崩壊するのなら、まだ可愛い方だろう。
場合によっては瓦解する音などないまま……塵と化してしまう危険性だって、決して夢物語ではない!
当然、イリの心情は穏やかでなんかいられない!
……ともかく。
どうにか、平穏な状態のまま、なるべく平和的な話し合いの元……素直にコーリヤマへと帰って欲しい!
……ても、こんな美人と会う事なんか、もう二度とないかもな。
そう考えると、ちょっと勿体ないな。
……とか何とか考えていたイリ。
後半は、軽く最低である。
どちらにしても、ここで抗争へと発展する事だけは、絶対にあってはならない!
思ったイリは……まず、その火種をプンプン匂わせているキイロを何とかしようと考える。
だが、しかし。
「……落ち着ける部分があると思う?」
ギロッと睨みながら言うキイロに、イリは何も言えなくなっていた。
終わった……俺の家。
こんな事になるのなら、自宅に連れて来なければ良かった。
イリの胸中に、激しい後悔の嵐が吹き荒れた時、
「そう言えば、キイロさんはイリさんの妹の割りには……ヤキモチが酷いと言うか、そう言う感じの態度を取っているよね?……もしかして、ブラコン?」
「誰がブラコンですか! ってか、どぉぉぉぉして、イリと私が兄妹になってしまうんですか! 根本的な所がおかしいでしょ!」
不思議そうな顔になっていたヒャッカに、キイロはこれでもかと言うばかりに怒鳴って見せた。
未だに妹である事に、何の疑いを持たないヒャッカを見て、むしろ呆れすら感じていた。
「……? すると、キイロさんはイリさんの妹ではないと?」
「そうです! 今更感が満載過ぎて、どうツッコミを入れるかで迷ってしまう位に、そうなりますっ!」
「…………?」
ヒャッカは唖然となった。
額からは、何やら妙な汗が、ダラダラ流れていた。
心の中では思った。
あれ?……そしたら、イリさんは……誰と一緒に住んでるの?
色々考える。
ぐーるぐーると頭の中を動かした所で、チーン♪ と答えが出た。
「そうか! ルームシェアか!」
「バカですか! アホですか! 何処をどうすると、そんな予想の斜め上を行く答えが出るんですかっ!」
分かった! と、快活な笑みをぱぁぁぁっ! と出してから言うヒャッカに、キイロは遮二無二がなり立てて見せた。
何となく、この人は極度の天然ボケなんじゃないかと思えて来た。
「もうぅ……そしたら、何なの? 一緒に住んでるのに兄妹でもなくてルームシェアしてる訳でもないって言うのなら、後は普通に恋人とかになっちゃうじゃないの」
「むしろ、それ以外になにがあるって言うんですかぁっ!」
ヒャッカは手をヒラヒラさせ『もう、やーねぇー』って感じで、穏和に語ると……即座にキイロが叫び返して来た。




