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こうして私は無双する・イリVer  作者: まるたん
編末・オマケ短編
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賞金稼ぎと恋する混沌龍【9】




    ■□■□■




 沈黙だけが、何歩も先を行っていた。


 ……あれから。


「だから、俺もいきなりの事で、どうして良いのかマジで分からないんだって!」


「そうだったとしても、どぉぉぉぉして、家に上げるのっ! 途中で追い返せば良かったでしょ!」


 イリとキイロの壮絶な修羅場が出来上がった。


 ……そんな中。


「い、いきなりどうしたの! そ、そんな止めなさいよ! 兄妹喧嘩なんて始められたら、私が困っちゃう!」


 修羅場の素因を作っていた張本人は、色々と勘違いしながらもオロオロと叫んでいた。


 恐らく、ヒャッカに悪気はなかったとは思うだが……争いの種を自分から作り出していた事には、全く気づいていない所辺りが、地味にタチが悪かった。


 そして、自宅にいたキイロをイリの妹であると、本気で思っている所も……ある意味で凄い精神の持ち主と言える。


 まず、一つに……イリとキイロは全く似ていない。


 ここらは……世の中には似ていない兄妹がたくさんいるので、まだ理解の範疇内と言える。

 だが、その次はどうだろうか?


 キイロの頭に、角が生えている。


 ここは、どう考えても血縁で解決出来る事なのだろうか?

 少し前までは、ドラゴンハーフと言う事を近所の人に気味悪がられると思って、色々と装飾品を角に付けてたキイロだが……最近は、ドラゴンハーフであっても、誰も何も思わない事実を知る事で、特に何も付ける事なく堂々と角を見せていた。


 ニイガの街に住む人達は、傾向として差別的な行為を良しとしない。

 簡素に言うのなら、ちゃんと普通に生活している善良な存在であるのなら、例え相手がドラゴンでも全然気にしないのである。


 ニイガの人達の懐の深さには驚きだ。


 ここらの事情がある為、キイロの頭に立派な角が生えている事は、誰が見ても直ぐに分かる事でもあった。


 ……が、それでもヒャッカは、普通に人間だと思っていたのだから……本当、思い込みもここまで来ると脱帽モノだ。


 閑話休題。


 イリとキイロの口喧嘩はしばらく続いた。


 十分程度、互いに言い争いを続けた所で、


「そろそろ、なじり合いを言うのは止めにしない? なんだか、私……どうでも良くなって来た」


 キイロが、少し根負けした様な顔になって言う。

 正直に述べるのならば、純粋に文句が言いたかった『だけ』のキイロがいる。


 内心では分かっているのだ。

 今のイリが、決して本意でこの場にヒャッカを連れて来た訳ではないと言う事を。


 然りとて、心の中に渦巻く鬱憤うっぷんだけは、どうする事も出来ない。

 そこで、鬱憤晴らしも予て、ギャーギャー騒いで見た。

 イリからすれば、勘弁して貰いたいレベルだ。


「……そうだな……俺も、叫び過ぎて喉が渇いた……お茶でも用意してくれ」


 他方のイリも、何処かホッとした顔になってから答える。

 今回、自分に非がないと思ってはいるが……反面で、後ろめたい気持ちもある。


 理由はさて置き……結果だけを見れば、スペシャル美人なお姉さんを、よりによって自宅まで連れて来たのだから。

 キイロが超ヤキモチなドラゴンである事を考慮するのであれば、それが如何に愚策であるのかなど、イリだって重々承知の上で及んだ行動なのだ。


 ……しかし、着の身着のままでニイガへとやって来たヒャッカは、特に宿泊する予定のホテルがある訳でもない。

 何より、そこでヒャッカに宿泊の代金や、その段取りをキイロに内緒でやった日には、余計に話が捻れてこじれる。


 それだけは勘弁願いたい。


 ならばいっそ、最初から全てをオープンにして、話を進めた方が後々ラクになるんじゃないかと、イリは考えたのだった。


 つまるに……何だかんだで、イリはキイロを信用していたのである。

 良くも悪くも、お似合いの二人なのかも知れない。


「……はい、お茶」


 ドンッ!


 テーブルを叩く様にして、お茶が入ったティーカップを置く。

 やってる事は一々慳貪けんどんではあるのだが、ちゃんと用意してくれるのだから有り難い。


「ようやく仲直りしてくれたのね……良かった」


 他方、一応の落ち着きを見せた二人を見て、ヒャッカは手を合わせながら、朗らかな笑みを柔和に見せていた。


 良くないわっ!


 ……と、直後に叫びたいキイロがいたのだが、その言葉はグッと喉元にしまい込む。

 この台詞を口にしてしまったのなら、またもや修羅場コースに逆戻りとなってしまうからだ。

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