賞金稼ぎとお姫様【6】
まぁ……いいか。
ちょっとばかり、人を信じ過ぎる所に一抹の不安を抱きつつも、今回はヨシと考えた俺。
「ああ、怪しい者じゃない。むしろ、君を助けに来たんだからな」
「……え? 本当ですか?」
俺の言葉に、訝しい顔になる姫様。
……って、何で俺の言葉は信用しないんだよアンタはっ!
「本当だ。そうじゃなかったら、何が悲しくて飛竜飛ばしてだな……」
「おい、イリ……」
どういう訳か、俺の言葉にだけはちゃんと防衛本能が働くキテレツなお姫様に、思わずぼやきたくなる俺がいた所でオリオンが声を掛けて来る。
かなり真剣な顔だ。
外を見れば……ああ、そう言う事か。
俺は不敵に笑った。
あれだけ可愛がってやったと言うのに、まだ遊び足りないと言うのかね。
「お姫様。悪いが話しは後だ。俺の言葉に嘘がないって事をちゃんと証明してやるよ」
愛想良く笑い、俺はお姫様を部屋の中に残した状態で、部屋の外へと出て見せる。
ちなみに、俺はオリオンとアイコンタクトしつつ、さりげなくジャンケンして……負けた。
くそ……。
結果、俺が外に出てオリオンはお姫様を守る為にロッジに残る役と言う形になった。
外に出て、俺は軽く見回す。
おーおー……いるいる。
末端の盗賊団と聞いていたが、結構な人数を揃えて来たねぇ。
ここに来る途中、十人程度はボコッて来た訳なんだが、今は軽く三十人はいる感じだな。
完全にロッジを包囲する感じになっていた。
「中々、歓迎されてる様だな……俺も」
「ああ、歓迎してやるぜ? テメェにとっちゃ最期の晩餐だ。楽しくやろうぜ?」
冗談めかした俺の言葉に、盗賊団の首領と思われる、如何にも偉そうな髭達磨が、俺の言葉に合わせる感じの言葉を返して来た。
言うねぇ……まぁ、これだけの数を揃えて来れば、嫌でも威勢が良くなっちまうって事か。
「……やれ」
髭達磨は、周囲にいた連中に向かって軽く号令を掛けた。
直後、一斉に回りの盗賊が俺に向かって来た。
容赦しないねぇ……っと!
後ろから毒矢。
あぶなっ! 当たったらどうするんだよっ!
毒矢をかわした所で、真正面にいたガタイの良い男が両手に持っていた長槍で俺を串刺しにしようとして来た。
スッ……とかわし、
ガシッ!
……と、槍の先を掴んでから、一気にグイッ! と持ち上げて、そのまま槍ごと一本背負いの要領で男を投げ飛ばした。
「うぉわぁっ!」
男は悲鳴とセットに後ろへと飛んで行く。
近くにいた連中のお仲間も、体格の良い男に巻き込まれる形で数人が吹っ飛んだ。
吹っ飛んだ事で、俺はさっきの大男の長槍をそのまま手にする。
そこからは早かったね。
やっぱり、武器はあった方が楽だな。
リーチが違うし、ただ殴るより楽に倒せる。
「死ねやぁっ!」
威勢の良い声を出すもんだ。
気合いだけでどうにかなるなら、努力するヤツなんかいなくなるってモンだ。
ロングソードを持っていた盗賊が声を大きく張り上げて斬り込んで来たが、長槍のリーチを考えれば、ただの自殺行為にも等しい。
グサッッ!
男が俺に踏み込んで来るより先に、俺の長槍が相手の腹に突き刺さった。
そのまま、串刺しにして振り回し、近くの数人をなぎ倒して行く。
「……ば、化物めぇっ!」
俺の近くで見てるだけだった髭達磨の顔色が変わった。
そりゃそうだろうな。
さっきまでは圧倒的に有利だった筈の戦況が、蓋を開ければただの虐殺ショーだ。
向こうからすれば予想も出来なかったろうよ。
そこから五分程度で周囲にいた連中の大半は片付いて行く。
残った数人は流石に殺されると思ったのか? 血相を変えて俺から逃走を始めた。
それを見て、髭達磨も逃げようとする。
だが、お前はダメだ。
多分、お前には五千万の褒賞金が掛かる手はずになっているからな。
ガシィッッ!
そこいらの生き残りと一緒に、蒼白な顔して逃げようとしていた髭達磨の襟首をすかさず掴む俺がいた。
「ひぃぃぃっ!」
襟首を捕まれた髭達磨は、情けない声を無様に口から吐き出していた。
オイオイ……さっきまでの威勢は何処に行ったんだよ?
俺はつい、心の中でそんな事を嘯いてしまった。
「所詮は末端の盗賊団ってトコか」
往生際の悪い髭達磨を見てると、少し思っちまうな。
生きるか死ぬかの喧嘩してる時に、どんだけ胆が座っているか?
それが例えハッタリであったとしても、最期の最期まで自分の度胸を見せるか?
……それとも最後はただただビビるだけか?
それで、ソイツの価値感が見えて来る。
少なくとも、こんな世界で生きてるヤツには必要な事だ。
この髭達磨はダメだ。
所詮は辺境の山で、こそ泥紛いの末端盗賊してる程度の小物に過ぎないって事だな。




