第9話「あっという間の一年と黒神の娘」
異世界にきてから一年たった。
既にやることやったし飽きてきた。
勿論新世界に生きているのである程度は充実はしてるけど正直外に出たいという思いが強い。
子供故、外出が許されないのは苦痛でしか無かった。
そんな中母親が誕生日プレゼントと言って中級魔法の本をくれた父親は木剣だ。
ミルは花をくれた。
うーん、押し花にでもするか?まぁ取り敢えず花瓶に入れて俺の部屋で育てるか。
「はぁ……」
中級魔法を試したが上手くいかない。発動は出来るが制御が難しいのだ。
日々の修練が大事だと母が言うが……俺って三日坊主なんだよなぁ。
基本上手くいってきたから楽しかったけど困難は嫌いだからさぁ……。
「ゴールド君は凄いよ!私なんかまだ初級だし。村の大人でも中級は使えないんだよ!!」
ミルは慰めてくれているようだ……まぁ落ち込んでないけど。
「おい。聞いたか?」
ふと村人の声が聞こえる。
「どうかしたんですか?グンタおじさん?」
「ゴールドか。何でもうちの国の一大戦力の黒神様がこの村にきたんだとよ!!」
……へっ?なんだそれ。
いやに急展開だな……いや?一年たったしそうでもないか?
そんな事を思いつつもその黒神とやらを見に行く。
「大したおもてなしも出来ず申し訳ありません……」
この村の村長が恐れ多くなんて顔をしていたので珍しいなと思う。
「気遣いは不要だ」
そんな声が聞こえる。
恐らくその横のおっさんが黒神だろう。
ん……横に黒髪ロングの美少女がいる。娘かなんかかな?
「では、……暫く世話になる」
どうやら村に滞在するようだ。
「ねぇねぇ。あのおじさんがこくしん?だよね?」
ミルは興味津々だ。
「だろうね。で、その横の女の子が娘さんかな?」
それに答える。
「ふーん……気になるんだ?」
ミルは機嫌が悪そうだ。大丈夫俺はミルも気になるからね?
「そうだ!あの女の子と友達になろうよ!面白そうじゃん!!」
「私はいい。ゴールド君は好きにしたら?」
俺のコミュ力の低さ故かミルの機嫌は治らなかった。
やがて村の広場に先程の少女を見つけた。
「ねぇ。僕はゴールドよろしくね!君の名は?」
ふとやたら流行ったが観たことのない映画を思い出す。
勿論見に行く恋人も居なかったので見てないが。
地上波で再放送を待つのみだったが、ついぞ見る機会は巡っては来なかった。
「私はヨミ。見れば分かるけど、君……村の子でしょ?生憎だけど私は子供と遊んでる暇は無いから。」
ヨミは興味がないとばかりに返す。
「えー!大人からみれば君も僕も子供だよ。遊ぼーよ」
鍛えられた揚げ足とりを披露する。
レスバトルが幾ら強くても自慢にはならないけどな。
「私は遊んでる暇なんて無いから。もっと……もっともっと強くならなきゃいけないの」
「成程。でも実は僕はそーこそーこ強い。剣術も魔法もあるんだよ?」
更に煽る。
口喧嘩は先に乗った方が負けと相場が決まっているのだ。
「へぇ。面白いじゃない。ならお手合わせ願おうかしら?」
ヨミの興味を引くことが出来たようだ。
「ヨミって何歳?あと僕が勝ったら友達になろうよ!」
そう、勝負が決まったなら条件追加は必須……勝負は既に始まっているのだ……。
「五歳。いいわよ。勝てたらね」
自信満々のご様子だ。
「じゃあいくよ!!紅蓮を放て我が眼前に!!フレーー」
詠唱を終え放とうとした瞬間……。
「はっ!!!」
ヨミの鋭い一撃が決まる。
痛い!!!くそっ5歳児の動きじゃねぇんだが!!!!。
このままだと負けるので回復魔法を唱えたいがまぁ二の舞だろう。
ならっ!!。
「癒しの加護をそのーー」
勿論詠唱を待たず接近を容易く許す。
が……二度も同じ戦法は通用しない。
俺は最初からこれが狙いだった。
魔法を使うつもりはない、剣術を使おうにも先程の一撃が効いていて動けないのだ。
「もらった!!」
そのヨミの一撃が迫るその瞬間金次のカウンターが脇腹を打ち抜く!!!。
これならば動かず最大威力で脇腹に打ち込めるっ!!!。
「なっ!?がはっ……」
ヨミは崩れ去るが満身創痍の俺もまた崩れ去るのだった。