第8話「天狗の少年、驚愕の少女」
次の日、異世界に転生して二日目。
さっそく新しい友人であるミルの家に遊びに行く。
俄然ワクテカって奴だ。
「あっ。ゴールド君!!遊ぼぉ!」
えぇ、それはもう。
遊びにきたんだよぉ!!はぁ。魔法みせちゃうか?俺の魔力に惚れな!!ってか?。
……いけないいけない、イキッても好感度が下がるだけ……紳士的にね?。
「うん!今日はミルに見せたい物があるんだ!」
早速魔法をみせる。
「火よ我が魔力に宿れ!!ファイア!!!」
ボゥ!手の平に火が灯る。
「スゴイスゴイ!!!ゴールド魔法つかえるの??」
あぁ~ミルかわぃぃ!!!それはともかく初級魔法の本をみせる。
「これみてよ!凄いでしょ?」
「えーっと、初級魔法?。凄い!初歩魔法より凄い!」
ミルは興奮が収まらない。
「一緒に練習しよ!!あと初歩魔法の本見せて!」
こうして今日もミルと戯れるのだった。
「おい。ゴールド。お前魔法が使えるんだって?」
家に帰るなり父が声を掛けてくる。
村ってのは閉鎖社会だなぁ……なんて思いつつも質問に答える。
「昨日覚えました。後で見せたかったから言わなかったんです」
その場しのぎの嘘をつく。
すぐ横の母の声が響く。
「やっぱり私の血を引いてるだけあるわ!!ふふん!」
母親はどこか誇らしげだ。
「おいおいまだわかんねぇだろ?剣術も習わせてねぇんだし。絶対に俺の才能も受け継いでる筈だ。」
その言葉に特別な家系なのか?と勘ぐる……冒険者の可能性もあるな。
「剣術ですか?面白そうですね?」
なんとなく発したこの言葉を聞いていた父親がピクッ!と反応する。
「そうかそうか!お前が剣術を。うんうん。よし!!」
何か納得している……嫌な予感がする……。
「明日から俺が剣術を教えてやる!!俺は厳しいぞ?ついてこれるかな?」
そんな父親の言葉にうわぁ……という顔をしつつ……。
「ミルと遊びたいので程々にお願い致します。それに魔法も使いたいので」
そう答えると母親は嬉しそうに父親は肩を落とすのであった。
その後、魔法についての軽い話を両親から聞いた。
初歩魔法はイメージしやすく、普段から生活で使われるので出来たとしても大して驚かれないし今の俺では親の御手伝いにしかならないそうな。
なんでも干ばつの際には魔法使いに雨を降らせて貰ったりもするらしいしいずれは村で活躍する人間になりたいなぁ……。
先程俺が使った初級魔法に関しては初歩魔法と違い戦闘でも使える。
いわば使いどころを間違えば人を傷付けてしまう。
だからこそ両親は俺を心配したのだろう。
最初に両親と顔合わせをした時には赤の他人感が拭えなかったけれども両親の愛を感じた気がする。
それからと言う物、朝にミルと遊び昼に母親に魔法を習い夜に父親に剣術を習うそんな日々を過ごす。
そんな中、殺傷能力を持つ魔法を使える俺が村で野放しになっているのは一重に両親の教えとこの村での両親の発言力だ。
端的に言えば両親のスペックが非常に高いのでその子供の俺が扱き使われずに済んでいるって事。
父は村の衛兵役や狩人よりも何故か戦闘力が高く、外部から来た人間なのに村人から頼りにされている。
普通は排他的な村では余所者は酷い扱いを受ける物だが……。
加えて母も村のボロい教会で神父さんの御手伝いをしているらしいのだが、村で唯一の回復魔法の使い手であり怪我人の治療に当たり大いにこの村に貢献している。
だからこそその権威を笠に着た俺が村人に扱き使われずに済んでいるのだ。
本来教会には回復魔法の使い手はいる……筈なのだけれど、悲しい事にこの田舎の村には教会があるだけマシって状態らしい。
普通は村の年長者とかに色々と教わるんだろうけども、ここにはそんな識者はおらず精々出入りする者を管理する衛兵か村長位しか賢くない。
ついでにこの村には教育機関が無いのでどうしようもない。
俺なんかは母に文字や簡単な事を教えて貰っているが村の子供は殆ど教育を受けていない。
だって国のお役人でも目指さない限りは不必要だしね。
村に残るにしろ、冒険者になるにしろ最低限だけ知ってれば済むし。
結局の所、村人は子供に業務の引き継ぎをする位だし、俺はそもそも農業とかでは無いので親の仕事を継ぐ事も無い。
……俺は将来村の用心棒とかやらされるのか?冒険者とかになりたいから死んでもごめんだけどね。
そして暫くの時が経ち「剣術の初歩」、「初歩魔法」、「初級魔法」更には「回復魔法」をも習得した。
ーーこうしてあっという間に一年が過ぎ4歳となった。