第376話「デーモンはせんめつよー!!(そんなー)」
廃墟の中はまるで謁見の間の様な広さであった。
中には十を越えるデーモンがこちらを睨んでおり、奥には角が生えた人型、、、魔族?がいた。
確実にボスの間だろう、フラグがびんびんですよ。
「我が名は技神、秩序を乱す者に裁きを。」
オスタナシーはマジの目をしていた。
こんな表情は見た事が無いし、俺が止めても無駄だろう。
例えるなら普段可愛いセキセイインコがたまにするギョロッとした目だ。
、、、今の無しでいいですか?分かる人にしか分からないしね。
「我が名はデーモンロード、グレンツェント!!我等に貴様と争う意思は無い!!」
角付きの男のデーモンロードが早々に降伏した、技神のネームバリューずげーな。
一応周りには十匹のデーモンが鎮座しており、普通なら間違っても負けるとは考えない筈だ。
横の女性のデーモンロードはグレンツェントの後ろに隠れてしまった、完全に怯えてるよね。
相手は降参、完全にこちらが悪役になっているがオスタナシーはどうするのだろうか?。
「見苦しい!デーモンロードが軍勢を連れ、こちらの領域に入って来ただけで万死に値する!!」
「私の命であればくれてやる!!だから姫様だけは!!」
「例外は無い、理由がどうあれここで消えて貰う。」
「いやいやいや!このまま魔王大陸にお帰り願えばいいだけなのでは!?何もそこまで言わなくても!」
俺は耐え切れなくてついにこのいつ虐殺が始まってもおかしくない場面で口出ししてしまった。
多分言わなきゃ後悔すると思ったから。
本音はオスタナシーは多少の失言をしても俺なら許してくれる筈だろうとの打算があったからだけど。
「、、、ゴールド。貴方は甘い。確かにこの者達は心優しいかもしれない。」
「だったら!」
「では心優しく無かったら?彼等は町で、村で、殺戮を繰り広げるでしょうね。剣神が必ず討伐するにしても犠牲が必ず出る、、、私はその犠牲を無くすのが使命なんですよ。」
俺はすぐに反論出来なくなっていた。
以前ゴブリンに襲われた村を見た、俺達は戦い追い払ったが犠牲は少なからず出た。
俺達が積極的に動いて事前にゴブリンの集落を潰しておけば被害なんて出なかったのだ。
技神もいたのだから戦力は十分だし、守りも俺達で行えた筈。
今となっては後の祭りでしか無いが、俺達は極端な話、、、彼等を救えたのだ。
そうしなかったのは彼等は知り合いでもなんでも無いし、旅路を急いでいて彼等の事など全く考えていなかったからだ。
そして彼等デーモンを討伐しなければ必ずとは言えなくても被害が出るかもしれない。
単純に村を襲うかもしれない、帝国と揉めて大事になるかもしれない、冒険者達と死闘を繰り広げるかもしれない。
だからこそ、オスタナシーに例外は無いのだ。
「分かった。我等には戦い、勝つしか選択肢が無いと言う事がな。ならばこの魂を燃やし尽くそうとも姫様のお命を守り通す迄!!!!」
俺は生死を掛けた戦いに完全に畏縮していた。
あくまでも俺は敵ならば容赦しないスタイルで、戦う意志が無い者を殺すなんて考えた事も無いから。
こなきゃ良かった、こんなのトラウマにしかならないんだよ!!。
俺は純正日本人なんだぞ!?皆殺しなんて見たくない耐えられない!!!。
だが、俺の足は俺の意志に反し動かない、そう、俺は知っているのだ、、、ここは生死を掛けた場所であり慢心が死を招く事を。
だから臆していても守りを固めるのが卑しくて醜い、、、俺なんだ。
外側をメッキで固めても心の奥底迄はそう簡単には変わらない、俺は勇者でも無いし挫折や苦難を乗り越える様な人物でも無いのだから。
気が付くと俺はその場にへたりこんでしまった。
「そうですか。まぁ、貴方はどれだけ才能に満ち溢れていてもまだ子供。過度な期待はその者の才能を潰すと先代は言っておられたがこの事でしたか。私もまだまだ未熟ですね。」
「、、、、。」
直後に俺は後頭部かしらないが手刀を貰って望んでいたかの様にあっさりと意識を手放す。
やはり異世界の人間なんかと価値観なんて合うわけが無かったのだ、、、。
「、、、そりゃ夢な訳無いよな。」
目を覚ますと目線の先には先程の砦らしき天井、オスタナシーに運んで貰ったのか。
普通なら女性を一人戦わせて自分は寝ていたら安否を心配するのが普通だが彼女には要らぬ世話ってやつだろうな。
「目を覚ましましたか?もう既にデーモンの処理は終えましたからご安心を、後は帰還するのみですね。」
「そうですか、、、うっ、、おえぇ、、、ゲホッゲホッ!!」
先程の事を思い出してしまう、恐らく情け容赦の無い殺戮が行われたのだろう、それを想像するだけで喉から吐き気が波が寄せる様にやってくる。
俺は日本人で豆腐メンタルなのでそんな事を考えるだけでも吐き気を催すってか吐いた。
「大丈夫ですか?取り敢えずポーションでも飲んで下さい。少しは楽になるやもしれません。」
「ゴホッゴホッ、、、ありがとうございます。」
久しぶりに飲むポーションの味は相変わらずであったが少しは楽になったのかな。
仲間の元に戻るまでには元に戻しておかないと要らぬ心配をされてしまうからね。
落ち着きを取り戻すと冷静になる、すぐにその違和感に気付く。
(、、、は?なんであの少女が!?)
俺の横に寝転がっていたのは先程の名も知らぬデーモンロードの少女。
オスタナシーの先程の口振りからは彼女が生き残るなんて想像出来る筈もない。
「あぁ、彼女なら敢えて生かしました。あのデーモンロードも懇願していましたがね。」
「な、、なんで?」
そこから先を口に出す事が出来ずにいた、彼女に嫌われたくないと言う一心で。
「単純な話です。デーモンロードの少女は貴方に仕えさせる為に生かしたのですよ。」
「意味が分かりません。」
「貴方もこの少女の事を憂いていたでしょう?殺さずにいるなら仕えさせるのが一番ですし。」
「でも普通大切な仲間を皆殺しにしたら仕えさせるなんて無理でしょう?」
本音は正気か?なら知能が低そうな普通のデーモンはともかく男のデーモンロードも生かしても良かったのでは?魔王大陸に送り返せば良かったのでは?と彼女を問い詰めたくなる。
遠回しに聞いたのは勇気が無かったからだ、もう心が折れそうなんだよ。
「あぁ、その点なら問題はありませんよ?この隷属の首輪を貴方の魔力を流してはめれば貴方の所有物になりますので。」
「なんで、、、そんな事が許されると思ってるのか!!!」
オスタナシーはペットショップでこの子が欲しいの?、そんな口調で俺に語り掛けた。
我慢出来ずに俺は叫んだ、これが頭に血が昇るってやつなのだろうか?久しく忘れていた感情だ。
日本では、毎日腐る自分を誤魔化しながら生きるので精一杯だった、、、いやこれも言い訳だろうな。
「えぇ、この世界では無法者の末路は大体決まっています。このまま放っておけばいずれ討伐されていたでしょう。」
「でも、、、だって!」
「貴方は優し過ぎる。でも覚えていて下さい、力ある者はいつか必ず責任を持たざるを得なくなる、、、そして迫られるのです、今の様に、選択を。」
「選べなかったら?」
見知らぬ子を奴隷にするなんて俺は嫌だった。
既に奴隷の子を救ってあげるとかは良くファンタジー物で見掛ける展開なので憧れてはいたが、なんでわざわざ奴隷商人みたいな事をしなくちゃいけないんだ?。
「なら殺します。当然でしょう?」
「狂ってる、オスタナシー、、、おかしいよ。」
少女は目を覚まさない。
当人の意志を無視して無理矢理奴隷にするのも嫌だし、オスタナシーに殺されるのも嫌だ、、、彼女が目を覚ませば俺は憎まれる、呪われる、蔑まれる、、、それも嫌なんだ。
耐えられない、そんなのは。
でも打開する方法なんて一つも思い付かない、オスタナシー相手に屁理屈なんて通じないし実力も天と地程の差がある。
「彼女がこのまま死ぬのが幸せか、全てを忘れさせて服従する事が幸せかは知りませんがこれは貴方が選ぶのです。」
「、、、オスタナシーが選択しないんですか?」
「私ですか?勿論殺します。」
俺は勇気も力も覚悟も無い自分を呪いながら見知らぬ少女に首輪をはめた。




