第32話「蹂躙第三階層!!めぼしい物は何もない。」
盗賊の少女ソニアは驚いていた。自分も8階層まで到達しているので実力には自信があった。
目の前子供。そうゴールドだ。
彼はナイフに魔力を込め各属性の魔剣技を振るっているもし剣や槍ならBクラス相当の実力者だ。
ナイフではあっても職業は魔剣士だ。
余りの幸運にあの時声を掛けた自分に感謝しかない。そう思うソニアであった。
実際はマジックアイテムの性能に頼っているに過ぎないが。
「三階層は大した事無いですね。」
ネットスパイダーを一人で10匹も仕留めたゴールドは退屈そうにしている。
魔卿のナイフが予想以上に強かった為だ。
魔力を流せばあっという間に長剣が出来上がる。
モンスター毎に弱点の属性を流せる為にまるで苦戦する要素が無かった。万一攻撃を食らっても回復魔法を使ってあっさり回復してしまった。
最早ソニアの仕事の半分以上は無くなっている。罠の解除位か。
それでもいつかは魔力が尽きるのでは?そう思うソニアなので常にサポートの準備を怠らない。
回復用のポーション魔力回復ポーション煙玉投合用ナイフ等あらかたの道具は準備してきたのだ。
いつかは役に立つ筈だ。
そうしているまにあっさり三階層をクリアするのであった。
「四階層は洞窟ですか?二、三階層は森だったのでびっくりです。ダンジョンは何でもありですね。」
そんなゴールドの言葉を他所にソニアは灯火の石を取り出す。やはり小手先とはいえ役に立つのが盗賊なのだと実感する。
「灯せ。ライト。」
ゴールドの手の平から光の玉が浮かび出す。薄暗い洞窟も意味をなさない。
それを見て愕然とするソニア。
「君は何でも出来るの?あぁ。だからソロなの?」
普段のソニアはパーティーの雰囲気を大切にする為こんな毒を吐くことはない。
だがここまで器用なら何故分け前を減らして迄自分をパーティーにいれたのか?見当もつかない。罠の解除や宝箱の解錠も出来るのではないか?そんな事すら思う。
「一人だと寂しいでしょ?」
そんな軽い返事が返ってくるのだった。
っ!、、、ソニアは己の無力を悔やむ。戦闘も雑務も運搬も任せっきりなのだから。
「あっ。あれはブラックバットよ。一応闇に紛れて攻撃してくるんだけど、、、」
唯一出来るモンスターの解説をするのだった。
「階段ですね。ソニアさんのお陰で迷わず行けました。ありがとうございます。」
その感謝は本当にありがたそうだ。普通ならお世辞にしか聞こえない筈なのだが。
そうして四階層へと進む。
だが変わり映えの無い洞窟なのであっさり突破するのであった。