第18話「任務完了とパーティー結成(臨時)」
「依頼完了しました。確認をお願い致します」
ゴールドの姿はギルドにあった。受付嬢は確か……リニーだ。
「ゴブリンの左耳5枚確かに確認致しました。ではこちらは報酬の銅貨3枚です。初の依頼完了おめでとうございます」
おおっ!!なんか嬉しい。
初めてのお使いだね、ドーレミ…………おっと誰かきたようだ、勿論申請はしないよ。
「マジかよ……あいつ、本当に依頼完了しやがった」
「もしかすると多分優秀な魔法使いの弟子なんじゃないかな?子供が教えを乞わずに魔法を覚えるなんて事は普通はないからね……」
「パーティーに誘うか?護衛は必須だとはいえ中級魔法と回復魔法は十分戦力扱いだぞ?」
「いやいやいや。ガキだぜ?だったら別の魔法使い誘うわ」
「中級魔法と回復魔法を使える魔法使いがそう簡単に雇えるならそうするにきまってんだろ。馬鹿なのか?お前は。ここにはランクC以上の冒険者はいねぇんだぞ?高ランクは辺境か王都と相場が決まってんだよ」
冒険者はまるで獲物を見定めるかの如く俺を見つめる。
そんな冒険者の言葉にパーティーを組む事を考えてみる。
……ただ固定はちょっとな、一応旅人だしね。
それにランクの問題もある最低ランクGじゃFランクとしか組めない。
ギルドの規約により、パーティーは前後のランクでしか組めないのだ。
例外としてパーティーには入れず荷物持ちやサポート役として連れていくという事もある。
その場合はパーティーに入らない低ランク冒険者は実績がないし依頼を受けた扱いにはならないが高ランクでなければギルド職員の判断でランクアップ試験を受ける事が出来るので有効なやり方だと言える。
周りの冒険者が俺を品定めする中、一人の少女がこちらに来た。
そして、自然に俺の隣に着席する辺り、俺に用事で間違いは無さそうだ。
「ねぇ?君。噂のゴールド君だよね?私はアイラ。ランクDでソロの剣士をやってるだけど君もソロなんでしょ?私もなんだけど良かったら組まない?」
アイラと名乗る10代前半の少女が話し掛けてきた。
パーティーに誘うか悩んでいた者達は悔しそうに声をあげる。
「ふふっ。人気者だね?それで返事は?」
俺は考えるまでもないと思う。
いやいやいや、10代前半の美少女だよ?もうこれ噂のJK剣士でしょ。
最早下心的に断る理由が存在しない。
「構いませんよ。但し……今は固定は無理です。臨時でならこちらからお願いしたいくらいですよ」
その言葉にギルドの冒険者達は悔しそうにしたり、臨時ならまだチャンスはあるのでは?と考える者もいる。
俺もこの町に留まるつもりは無いし、どうせなら夢の美少女ハーレムパーティーでも組みたいしね。
「交渉成立っ!!それじゃあ、改めてよろしくね!?」
Dランク冒険者、剣士のアイラが仲間に加わった。
俺は主に魔法での戦闘を得意とするので前衛は有り難い限りだ。
こうしてパーティー結成が完了するのであった。
* * *
「それでさ?依頼はどうする?君は噂通りならもうランクDかCの実力があると言っても過言じゃないよ。中級魔法と回復魔法を使えるのは凄い事だしこの街のギルドには少なくてもそんな凄い魔法使いはいないかな。得意魔法は火属性回復魔法使い。他は何かある?まぁこれだけでも凄いんだけどね」
ギルドの冒険者達は耳を澄ます。臨時でパーティーを組む可能性があるかもしれないので情報は得ておきたい。
「その他ですと初歩魔法各種で戦闘以外でも役にたちますし火風水土の初級中級の魔法が使えますよ。剣術もある程度使えますし投合の短剣で中距離の戦闘も可能です」
その言葉にギルドの冒険者達はざわめく。こんな子供がパーティーに引っ張りだこになるであろうスペックだった為だ。先ほど誘わなかったのも悔やまれる。
勿論五歳児の剣術は役に立つとは思わないし、短剣もあくまでサブウェポンだ。
危険度の低い魔物相手なら最低限の自衛位は出来る……程度の物でしかない。
それでも、自衛出来る魔法使いは貴重だが。
「すっ、凄いね。そこまでいくと冒険者ランクDかCでも誰も文句を言わないレベルかな?。もしかして君、高名な魔法使いのお弟子さんだったりする?」
アイラは更に話を進めようとするが俺は村で朝ごはんを食べてから何も食べていないので流石に襲い来る飢餓感に耐えられそうになかった。
空気を読めないというのは分かってはいるのだが、干し肉だけで凌いできたツケが回ってきた。
村からお出掛けする機会が無かったので買い食いに慣れていないのだ……。
「すみません、朝から何も食べていないのでそろそろ限界なんですよ……。申し訳無いんですが何か摘まみながらでも大丈夫ですかね?アイラさんの冒険譚でも聞きながら」
本音を交えつつサッと相手に話題を振る。
取り敢えず相手の素姓とかが分かった方が良いと思うし。
「あっ、あぁ。ごめんね。えーっとランクDで剣士をやってるんだけどさっき話したから……一応剥ぎ取りとかは得意だし教えてあげられるかな?君がどのぐらいか分からないけど剣術の稽古とかもつけてあげられるよ。冒険の話ならあるかなー」
楽しく会話をしつつ料理を食べる。
これは魔物の肉を焼いた物で、魔物の肉は食べれるらしくオークの肉らしい。
いやまぁ、村で散々食べてきたからそこまで珍しくは無いけどね。
それからアイラの話を小耳に挟みながらお肉を食べ進めていく。
この少年の肉体には食べられる量には限りがあるのだ。
「ごちそうさまでした。ふぅー、すみません。依頼の前にマジックアイテム屋に寄って良いですか?」
「構わないよ?掘り出し物があるといいね!」
アイラの賛同も得られた所で早速マジックアイテム屋に寄ることにするのだった。
* * *
「へぇー。中々ね」
アイラは興味津々だが懐事情が良くないのだろうか、特に何かを買う様子はない。
そんなアイラと違い俺は至って真剣だ。
予算的に金貨1枚迄なら出せるのでここでぐっと有利になるマジックアイテムが欲しい所だ。
チートが無い以上、ここで手に入る武器が俺の今後を大きく左右するのは言う迄も無い。
某RPG序盤ブーメランみたいなものか?。
勿論俺にマジックアイテムの目利きなど出来る筈も無いのでここは直感勝負になる……。
そうして暫く辺りを見渡すとふと、大事そうに飾られている装飾が豪華なナイフに目がつく。
そう言えば、ゴブリン剥ぎ取りの時の事を思い出した。
あの時はナイフの持ちあわせが無かったので短剣で耳を剥ぎ取ったがやりづらかったな。
村にいた時は狩人さんに任せっきりだったのも原因のひとつである。
とは言え、狩人の仕事を取ってしまうと下手な村の権力争いに巻き込まれるかもしれないので自重していた。
「このナイフもマジックアイテムなのですか?」
俺は思わず尋ねる。
この前買った短剣よりも豪華な装飾で、しっかりと飾ってあったからだ。
子供の体には長剣は持つことは出来ないので、もしこれがマジックアイテムなら是非欲しい所だ。
「あーそいつはな高名な錬金術師が作ったものでな。魔卿のナイフってぇんだ。何でも各属性の魔力を流せるらしいんだがこの街には少なくとも各属性の魔法が使える魔法使いなんていやしねぇしな値段も金貨1枚とあって売れねぇのさ。これが剣なら確実に白金貨数枚ものなんだけどな。それにそれだけ払っても欲しがるやつは幾らでもいるってもんだ。使いこなせば異名持ちも夢じゃねぇしな」
確かに魔法剣士なら欲しいね。
俺は確実に欲しい、流石に白金貨はだせないけど……。
それにナイフと言えば、基本的に使い捨てか剥ぎ取り等の雑多用、盗賊や弓使いのサブウェポンだったりする。
彼等は余り攻撃魔法を使わないので魔卿のナイフとは相性が良くないのだろう。
それにお値段がかなりお高いのでそれが拍車を掛けているのだろうな。
「まぁ、剥ぎ取りとかにも使うし魔力が流れるなら研がなくても良さそうだし便利ですよね。よし!!これくーださい」
金貨1枚を差し出す。
それをみたアイラ、店主、他の冒険者達はざわめく……貴族の坊っちゃんでは?とそんな声が聞こえる。
あのさそれ貯金なんよ。貯金の半分以上使ってんよ。
一年以上貯めた貯金の残金が初日から底を尽きそう……。
こうして俺達はマジックアイテム屋を後にするのだった。
「ねっ、ねぇ。ゴールドって一体何者?普通子供が金貨1枚なんてポンッと出せるものじゃないよ」
次なる目的地に向かう道中、アイラに声を掛けられる。
アイラは流石に疑問に思うか。
高名な魔法使いのお弟子さん?との質問にも答えなかったので仕方無いのだけれど。
「只の村人の息子ですよ。だだ才能はあったからお金は貯めれたんですけど。まぁもう半分以上使ってしまったし懐が寂しいですが……」
その答えにまだあるの?とアイラは更に驚かされるのだった。