第八話:申請
「同志…いいですねぇ。これから楽しみですよ」
「そう言ってくれるとありがたいが…まずはこの場を離れないか?森から出てきた魔物に襲われるのも面倒だろ?」
「今すぐにでも実験を開始したいところですが…分かりました」
「実験…?まぁいい。とりあえず町に行こう」
そんなこんなで町に戻るわけだが…
「番長!ただいまっす」
「おーおかえ…お前かよ」
「そういいながらホッとしてくれてる辺り、やっぱりホブゴブリンって聞いて少し心配だったんすね」
「…久しぶりにブブゼラの音を聞かずに済んで嬉しいだけだ」
「またまたぁ」
「それよりも…なんでお前はケリオ氏と一緒なんだ?」
番長の何気ない優しさに心を打たれていると、そんなことを聞いてきた。
「ご無沙汰してます」
「あれ?番長、この人知ってるんですか?」
「そりゃ、この西門から出入りする人物は大体把握してるからな。で、どうしてケリオ氏はこんな奴と?」
こんな奴とは失礼な!
「ホブゴブリン討伐の最中にたまたま会いまして…危ないところを助けていただいたんです」
「ほぉーこいつがか?へぇ〜」
「そのにやけ面はなんですか。ってかなんか扱いの差を感じるんですが」
「そりゃ不審者相手と一般市民相手では扱いが違うだろう」
「一般市民を俺みたいな扱いしてるんすか」
「お前は不審者の方だ」
ひでぇ。
「とにかく、金払って中に入れ。もうそろそろ別の冒険者達が来る頃合いだからな」
「はいよっと」
「どうもです」
番長との雑談を終え、ギルドへ向かう。そこでホブゴブリン討伐の報酬を貰い、ついでにパーティ申請をするつもりだ。
ギルドに着くまで、隣のパーティメンバーとなる女について考えてみる。
この、ディオナ・ケリオという女は、初対面で分かるほど残念だ。多分黙ってればモテるはず。ブブゼラほどの魅力は無いものの、そう言えるぐらいには整った顔立ちをしていた。
だが口調に独特の胡散臭さを漂わせているためか、どこか危ない研究者に見えないこともない。まぁ、命賭けで音魔法試すヤツだから、案外間違ってないかもな。
「それにしても、ギルドに入るのも久しぶりですよ」
「…ん?あぁ、そうだった」
一旦思考を切り替え、ギルドに入る。
「ちょっと待っててくれ。換金だけしてくる」
「えぇ」
対応するのはいつもの受付嬢。
「あ〜パレイスさん無事っしたか。おつかれ〜っす」
「どうも。で、これお願いします」
「はい、ホブゴブリンの右耳、確かに受けりゃーっした。こちら、報酬の30万2312チャズになりゃーっす」
「やっぱ中々の報酬だな…あぁ、あと聞きたいんですが」
「ん?」
「パーティ申請ってできますかね?」
「うぉ〜マジっすか!仲間できたんすか!?」
「へへっ、まぁ、そんなところです」
「良かったじゃないっすか。これでもっといいクエスト出来ますねぇ!いやぁめでたい!」
「ま、まぁまぁ」
普段はやる気ないのに、こんなに喜んでくれるとは…
「じゃあ…」
「まぁ、パーティ申請なんて無いんですけどね?」
「え?そうなんですか?」
「はい、まぁ、パーティなんてコロコロ変わりますし」
「えぇ〜…あぁ、はい、分かりました」
「ま、そういうことなんで、あとは本人たちでよく話し合って決めるといいっすよ」
「…ども」
うわぁ…微妙に恥かいた…
「おまたせ…」
「聞こえてましたよ。まぁ、そう気を落とさないでください」
「うぃっす…」