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ブブゼラに全てを捧げる  作者: 荒谷間川
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第四話:討伐

死闘です。

 さらに森の奥に進む俺とブブゼラ。ここら辺から先はホブゴブリンが出てきてもおかしくない場所になるから気をつけなければ。


「……あぁぁぁぁ……」

『…………』


 ブブゼラ吹きてぇなぁ……

 そんなことを思いながらけもの道を進んでいると、鬱蒼とした森の奥からドンッと音が聞こえた。ちょうど、人間の胸か背中を思いっきり殴ったような音……


「…見に行ってみるか?」

『…………』


 見に行くだけ。あくまでも見に行くだけだ。もしも冒険者だとしても自己責任。危険を冒してまで助ける義理は無い。

 ……でも、まぁ場合によっては助けるかもしれない。どんな場合かは俺も分からないけどな。


 とりあえず、行ってみるか。




 音が聞こえた方へ走る。すると、何かの音が聞こえてきたようだ。


ガシャ……ギィ……


 鉄の擦れる音だろうか。さらに音の聞こえる方へ向かって走る。

 音もかなり近くなり、すぐそこだ。

 背の高い草むらをかき分け、覗き見る。


 するとそこは、薄暗い森に不釣り合いな、日の光に照らされた小さな更地。


 魔物に背中の上へ乗られている女。無言だが、必死に抵抗している様だ。


 そして魔物。魔物は、ゴブリンのように見える。しかし、耳が長い。そのうえ、筋肉で皮膚がはち切れんばかりに膨張している。


 ……ホブゴブリン?


「……」

『…………』


 殺るか。


 鋭い聴覚を持つホブゴブリンは、意外なことに、こちらに気付かない。背を向けて女の胸当てを剥ごうとしている。


 後ろから、そっと忍び寄る。


 ブブゼラを持つ手に汗がにじむ…奴のうなじに、一撃を思いっきりくらわせてやる……


 奴の背中は目の前だ、と思った矢先、違和感を感じた。





 あれ?こいつ本当に耳いいの?全然気づいてないんだけど……




 瞬間、ホブゴブリンが振り向き、剛腕が横薙ぎに振るわれる。




 ブォンッという音がするほどのパンチが、俺の腹部を掠めた。




 あっぶねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!



 なに!?こいつ気づいてないふりしてたの?怖いっ!!怖いよコイツ!!たかがゴブリンの亜種だと思ってちょっと甘く見てたわ!!なんなのこの殺意。なんなのこの賢さ。なんなのこの一枚上手ですよオーラ!!死にたくねぇ!!


 とりあえず、できる限り距離を取って相手を観察する。


 はち切れんばかりの肉体で、女が持っていたらしい杖を手に持っている。



 以上。




 全然分からん!!!!


 そんなことを思っていると、ホブゴブリンはかなりの素早さで向かってきた。

 足速っ!!!


「イィクェグェ!!グァァァァァ!!」


 とても生き物とは思えない不気味な声を出しながら、杖が振り下ろされる。

 死に物狂いで避ける!!!!


 ゴッ!!!


 振り下ろされる杖が、地面を激しく打ち付けた。


 ……やるしかないか。


 奴がこちらを向くと同時に、膝に目がけてブブゼラを振るう。


「グェゥッ……!!」


 右足を痛めたようで、その部分を抑えている。これで多少は機動力を抑えられたか。

 奴は怒りに顔を歪ませ、多少ぎこちない動きでこちらに向かってくる。


 俺は、狩猟刀を奴に投げた。


「アアアアァァァァァ!!!!!」


 それは左の肩に刺さり、ホブゴブリンは悲鳴をあげた。

 その隙に奴の後ろに回り込み、左耳の横にブブゼラを添える。。


『ブォォォォォォブァァァァァブォォォ!!!!!!』

「ウグァァァァァァァァ!?ギィ……」


 奴の耳に流し込まれる爆音。人間でもこの音を耳元で聞くと聴覚が破壊されるというのに、より耳のいいホブゴブリンとなるとなおさらだ。悶え苦しむソレの頭めがけてブブゼラを叩き込む。


「グェ……」


 地面に倒れたホブゴブリンの顔面を、なんども蹴る。死んだふりをする隙を与えるつもりは無い。

 徹底的に踏み殺して、奴の肩に刺さった狩猟刀で右耳を切り取る。

 そして、忘れちゃいけない。たった今、大音量の爆音が発せられたのだ。すぐにも魔物が引き寄せられるだろう。


「おい、そこの人!!さっさとこの森から出るぞ!!!」

「えっ?」

「強い魔物が森の奥から音につられて来るかもしれない!!自分の杖回収して、さっさと逃げるぞ!!」

「あの!耳鳴りがしてうまく聞き取れません!」

「逃げるっつってんだよぉぉぉぉぉ!!!」


 杖を渡し、強引に手をつかんで元来た道を駆け抜ける。


「あ、耳鳴り治りました」

「んなこといいからこの森から出るんだよ!!」


 のんきなことを言っている少女の言葉に突っ込みながらも、走る。ただ、初めてホブゴブリンを倒したことによる高揚は、もしかしたら顔に出ていたかもしれない。

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