第三話:愛の共同作業
一度家に帰って装備を整えた俺とブブゼラは、持ち物の確認をしている。冒険者にとって、持ち物一つでもあるのと無いのとでは違う。だから、持ち物確認は念入りにするのだ。
うんっ!やっぱり緊張してきた!!
だってそうだろ?ただのゴブリンの上位互換とはいえ奇襲をかけてくる相手だ。絶対びっくりするじゃん。っていうか、あの場の勢いで依頼受けちゃったけど、正直俺キレてたんだよなぁ…あの暇人クソ野郎の言うとおり、俺もまだまだ子供なのか?
「なぁブブゼラ……お前も……そう思うか?」
『…………』
「そうだよな……」
仕方ないんだ。ブブゼラは愛する【者】ではあるが、【物】なんだ。答えてくれないのなんて、最初から分かっている。
「……じゃあ、行くか」
『…………』
よしっ!気持ちを切り替えて、行くぞ!!
『ブォォオオォォオオォォオォ!!!』
よし。
俺は家を飛び出し、全力で町の西門まで走った。
「だからブブゼラ吹くなっつってんだろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
……背後から近所のおっさんの怒号を受けながら。
「番長!ホブゴブリンしばいてきます!」
「あぁそうか……ん、ホブゴブリンだと?お前ついに普通のゴブリン以外を倒すのか」
「えぇ。こう見えて俺も緊張してるんすよ?じゃ、行きます」
「帰ってくんなよー」
番長からの激励も受けたところで、気合入れて行くぞ!景気づけの一発!
『ブォォォオオォオオォォオ!!!!』
「ブブゼラを吹くなぁぁぁぁぁぁ……!!!!」
番長よ。大声で叫んでいるが、ブブゼラの素晴らしい音色でかき消さてるぞ。さ、行くか。
ここは街の近くの森。この森の奥深くにホブゴブリンは生息している。
「いつ来ても不気味だな……」
『…………』
この森は「ミゼアの森」と呼ばれている。生息する魔物は、ゴブリンや動物型の魔物が多い。例を挙げるなら、猪の見た目をした魔物「ランボアー」などだろうか。ちなみに、ホブゴブリンはこの森の中心近くで生息している。こんなものは冒険者の常識だ。
とにかく、進んでいこう。奥に行くまではできるだけ他の魔物に会いたくねぇなぁ…
「…………」
『…………』
ブブゼラとのスキンシップが捗らない。それもそうか。あまり声を出して魔物を呼ぶのも嫌だしな。
「…………ッ!!」
…今、左の草から音がしなかったか?
ガサガサっ…
やっぱ音するじゃん。絶対これ魔物だよ。めんどくせぇから動物型とか相手したくねぇぞ!?
「ウィキキキクキイキキ…………」
草の中から飛びかかってきたのはゴブリンだった。まぁ、コイツなら戦い慣れてるから焦らず殺す。
とりあえず力任せにブブゼラで頭を殴る。武器を持っていないゴブリンより、ブブゼラの方が圧倒的にリーチが長い。
「ウィクイィ!?」
ガスッと鈍い音を頭から発したゴブリンはその場で倒れ伏す。まだ息があるようなので、急所を狙って蹴り殺す。
「ウカゥ…………」
我ながら良心の痛む倒し方だがしょうがない。確実に的確に殺した方が安全だしな。
「素晴らしい一撃だったな。さすが俺の相棒だ」
『…………』
「この調子で頑張ろうぜ……」
『…………』
さぁ、狩猟刀で耳はぎ取って奥に進むぞ。