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  作者: 結子
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 万津子は今日買った洋服を着て、ひとりファッションショーなるものをわざわざムービーにしてSNSにアップしていた。

 誰が見るのだろうと数人がいいねを押しているので、その押している人物たちを追ってみた。


 主婦、さちよ、現在二人の子供を子育て中。

 大学時代の友人、こうすけ、中小企業の食品販売部の営業勤め。

 小学校からの幼馴染、ゆり、婚約者あり、花嫁修業中。

 サークルの先輩、いおり、研究職のため、現在も大学に研究生として在学中。

 年齢不詳、職業不詳、おさむ、トップ画はどこかわからない海。


 ばらばら。彼女の交友関係はまとまりがない。

 きっと私の存在も共通点はなく、誰のどこにも属さない、彼女ならではの繋がりを継続させられている友人のひとりだ。

 先日はたまたま私の予定が空いていたため、きっと買い物に誘われたのだ。

 きっとそうだ。


 だって、過去の投稿を見ると、外国人と抱き合っている写真、ドレスアップして参加するようなパーティーの写真、登山中の一枚、そのほかたくさんの友人知人との充実した写真が溢れている。カメラに笑顔を向ける私の知らない人たちの方が毎日を悔いなく過ごしているように見えるし、一緒にいて楽しそうだし、私以外の誰かが予定を空けていたら、間違いなくそちらを選ぶだろう人たちばかりだ。

 取り除いても湧いて出てくる黒カビのような女と一緒にショッピングしたところで、いいリアクションもなければ、逆に、気分を沈ませるだけだろう。

 けれど、その私をあえて誘ったということは、万津子の周囲は万津子と同じで予定がいっぱい、毎日充実した日々を過ごしていて、最後まで残ったのがきっと私なのだ。

 そう、絶対にそう。

 私のことを一番に誘う理由なんて、ないもの。


 1クリック。

 いいねの前に私の名前が表示される。

 私の名前が列に並び、彼女の評価を高める。彼女にプラスになることをしている。彼女が周囲からいいねの数字で評価される。その力添え。意味があるのかわからないけれど、自分の名前を静かに見つめていたら、画面の向こうで名前がミミズのようにうねり始め、押されたいいねに噛り付いた。


 けったいな。

 こんなことが何の評価になるのか、幸せ自慢はそんなにも優越感に浸れるのか。作った料理を載せて、結局消化され出てくるものは皆同じ。綺麗に綺麗にDIYして作った棚だって、経年劣化で気づけばささくれ立つ。

 どこかの女性歌手が歌ってたわ。

 写真が嫌いって、わたしが古くなるじゃないって。

 今のこの瞬間の幸せを閉じ込めて、みんなに見せびらかして、今に来るみすぼらしい将来の中であの頃はよかったと涙するだけの道具になるかもしれない。


 そんな恐怖は、彼女にはないのだ。


 ぴこん、とスマホが鳴る。

 万津子だ。


 ≪今日はありがとう!すっごく楽しかった。ほしかったブーツも買えたし、コーヒーだけしかお礼できなくてごめんね。また行こうね!≫


 私はそのメールに≪是非!≫とだけ打ち込んで、返信した。


 私も万津子のようになりたい。なれないのであれば、万津子が私のところまで落ちてきてほしい。


 そう、祈りを込めて。

 是非!


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