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第17話:出来ますよ、サタリナさん。

 この世界には2つの種族があった。


 それは、人間と魔族。


 魔族は赤い瞳と角を持つ。さらにはヒトの形をしていないものもいるのだ。


 だから、人間はそんな異形のもの敵視し、恐れた。



 この時、すでに2つの種族には結界(かべ)があった。



 数的には人間の方が多く、魔族たちは追い詰められていってしまったのだ。そして、自分たちの国である黒の国から出られなくなってしまった。


 ついに、痺れを切らしてしまった魔族が人間を襲ってしまった。


 そこから始まったのは魔族と人間の闘い。


 魔力を有した魔族と、知恵と数を有した人間が争い合った。魔族は自由を、人間は安寧を求めて……。


 大地には多くの血が流れた。常に異様な空気に包まれていたのだ。人の死、魔族の死、たくさんの死で溢れかえっていた。


 魔力を有した魔族が有利と思われた戦況だったが、人間はそれを封じる術師を生み出した。


 そして、術師たちは国々に結界を張る術式を施し、魔族の進行を阻み、人間と魔族を隔離したのだった。さらには、術師は人間の住む近くに現れる魔族を退治する術を用いた。



 それからというもの、()()()()()安寧と平和が訪れた。



「――始めに手を出してしまったのは魔族(わたしたち)だったけれど、それでも、私たちがすべて悪いわけではない」


 サタリナの言葉をかみしめるように、マースリーは瞳を閉じた。


「そして、私は長い間ここに居て思った。黒だけでない、外の色を見たい。空は青いのであろう? 大地は緑なのであろう?」

「僕もそれは見てみたいね」


 いつの間にかガイアラスはプロクシュテンを引きずってスクラの隣にいた。プロクシュテンの首が締まっているように見えたのはハイマットだけでないと思う。どさりとプロクシュテンが床に落とされる時、彼は空気を求めて息を大きく吸っていた。



「……(いろ)の世界、(わたくし)が案内いたします」



 サタリナは温かな瞳を見た。

 微笑みかけたマースリーを不思議と信じてみようと、サタリナは思ったのだった。黒の国に2人でやってきて、揺らぐ事もなくアンドレスタを救いたい一心でここまで来たマースリーには何か惹かれるものがあるのかもしれない。


「しかし、マースリー、何百年も前からこの状態だったのだぞ? 今さら魔族の事など払拭出来ない」

「アンドレスタの言葉を聞いていなかったのですか? 決めつけるのはまだ早いですよ」


 サタリナは表情を柔らかくした。

 その美しさは、スクラが気絶するほどだった。


「ちょっと、スクラ様……」

「……マ、ママの超絶スマイル……いただき、ました……!」

「……あれ、スクラ様ってこんなキャラだっけ」

「ガイアラス、忘れろ。お前は何も聞いていないし、見ていない」


 倒れているスクラを見下ろしながらプロクシュテンは呆れた。ガイアラスはスクラがマザコンだという事を知らないため、プロクシュテンはどうしたものかと考えている。


「姫様、誤解を解くのは中々難しいのではないかと思いますよ」

「それは承知の上だ。だが、やってみなければ分からないでしょう?」

「……そうですね。姫様ならそうおっしゃると思いました。私もお力添えいたします」

「私もマースリーと共に頑張ろう」


 アンドレスタからそういわれたマースリーは笑顔を見せた。 マースリーはアンドレスタがいるから頑張る事ができ、アンドレスタもまたマースリーの事を信頼し、頑張って行く事が出来るのだった。


「そういう事だ、サタリナ殿」

「……悪かったな、マースリー。第四代目魔王として、心から謝罪と感謝をする」
















 一旦国に戻り黒の国との和平協定を結ぶため行動する事になった3人はサタリナたちに見送られ、黒の国を出た。


 アンドレスタは姫の姿をやめ、王子の姿に戻っている。やっと、姫の姿から解放されたアンドレスタは心から落ち着く事が出来た。ずっと姫の格好をしていて飽き飽きしていたのだ。それに、王子たるものそんな格好をするのは耐えられない。


 それで攫われてしまい、散々な目に遭った。しかし、攫われてしまった彼を救ってくれた人がいたのだ。

 やはり、マースリーが隣にいると安心するとアンドレスタは思った。


 横を歩くマースリーをちらりと見て、アンドレスタははっとなる。


「マースリー、その傷……」

「ああ、これか? 少しばかり油断してしまった。大したことないから気にし――」



 マースリー頬に優しい温もりが触れた。




「好きな人を傷つけられて気にしないでいられるわけないですよ」




 照れ笑いながらそう言ったアンドレスタの言葉に、マースリーは自分の体温が上がるのを感じた。


「ありがとうございます、マースリー。ここまでして助けていただいて」

「……構わない」

「そういえば、頬が熱いですね、大丈夫ですか?」

「……な、何でもない!」


 ますます、赤く染まる頬に疑問を感じるアンドレスタだった。彼の手を熱が伝わってくるのだ。

 その熱を知られないためには頬にある手を離してもらえばいいのであるが、マースリーにはそれが出来なかった。






(……私がいるのを忘れていないでしょうか?)


 ハイマットは1人、そんな2人を見ていた。











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