表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/18

第11話:強敵ですよ、ガイアラスさん。

「姫、様……もうだめです」

「諦めるな、ハイマット」



「しかし、なんであんなにネガティブなのですか!!」



 ガイアラスの言葉は重く、暗く、黒の国がさらに黒くなっていくように感じるハイマットだったが、マースリーはそんな事微塵も感じてはいなかった。


 ガイアラスは四天王で1、2を争うほどの実力の持ち主である。大地を司るその力と、繰り出される言葉は精神を削っていく。そんな戦い方、性格であるが故に、苦手とする魔族も多く、恐れられているのだ。


 ガイアラスと戦うと著しく精神力を奪われる。それは、体力をも一緒に奪う。そんな究極の戦いを迫られるものだから、四天王でプロクシュテンと互角なのだ。


「ネガティブでごめんなさい。……もう話さない方が良いのかな」


 大地はガイアラスのネガティブさに共鳴するように、震えあがり、マースリーとハイマットを襲う。足元はひび割れ、常に意識していなければいけなかった。

 一度でも気を許してしまえば、大地に食われる。だが、耳からはネガティブな発言が聞こえてくるのだ。気を散らさないようにするのは一苦労だった。


 2人はガイアラスに近づき、反撃を試みようとする。


「僕なんかに近づくの?」


 轟音が響いたかと思うと、2人の目の前には大きな土の壁が現れ、行く手を塞いでしまう。ガイアラスの姿は壁の中に消えてしまう。


 壁が現れた瞬間、2人は飛びのいて、少し距離をとった。


 次の瞬間、土の壁は一気に崩れ、視界を遮る。


「……くっ」


 たちこめる土煙に、目を細めるしかない。

 視界はさらに悪くなる。


 しかし、轟音は止まない。


「ハイマット!」


 散り散りになっていたマースリーとハイマットだったが、バラバラになっていては危険と判断したマースリーがハイマットを呼びつけた。

 視界が悪く、人影が薄ぼんやりと見える程度であるが、ハイマットはマースリーの側に寄ってきた。


「どうします、姫様」

「何とか、(わたくし)たちの剣の届く範囲に行かなければいけない。しかし、難しい」

「大地が相手ですからね」


 大地が揺れる。


 轟く音。


 ガイアラスはいったいどこにいるのかも分からない状態だ。2人は周囲に気を配りながら話し合っていた。


「それにしても、先ほどから轟音しか聞こえませんね」

「……」


 ガイアラスは姿を見せる事がなかった。視界を奪い、攻撃には最適の状況であるが、大きな音が成るばかりで、一向に攻撃してこなかった。

 マースリーは感覚を研ぎ澄ます。


「……まさか。ハイマット! ここに留まるのはきけ――」



 ズゴゴゴゴゴゴ 。



 今までなっていた音と比べ物にならないほど大きな音が2人を襲った。身体全体に音の振動を受ける。

 しかし、その振動は音だけのものではなかった。


 大地が大きく波打っている。


 足元が揺らぎ、2人は地面に手をついた。


「なっ、に!?」


 が、その地面はあっという間になくなってしまう。マースリーは驚き、思わず声を漏らす。


 今まで足元にあったはずの大地が崩れ落ちていくのだ。木々も一緒になぎ倒され、大地に飲み込まれてゆく。



「僕には暗くてじめじめした地中がお似合いなんだよ……」



 ガイアラスは自嘲の笑いをもらした。


 マースリーとハイマット2人が留まり、話し合っていた地面の下では、ガイアラスが地中で動いていた。

 空けられた、いくつもの空洞により、地面は崩壊することを強制させられたのだ。


 地下深くから徐々に地表に近づき、マースリーの気が付いた時にはもうすでに手遅れであった。崩壊は始まってしまった。


 その様子をガイアラスはただ、じっとりと見ていた。


 大地が崩れる事にハイマットより早く気が付いたマースリーは止める事は無理でも、何とか回避しようとしていた。半径200mにわたって、地中深くが穴だらけなため、本来ならばかなり回避は難しい。

 だが、彼女は崩壊が遅い所を見極め、そこに飛び移り、移動していた。


 それを見習って、ハイマットも後に続く。

 こういう時、マースリーの勘と見極めの力は頼りになるとハイマットは知っている。というより、彼女自体が頼りになるのだ。


 ハイマットも、勘の良さはあるがマースリーほどではない。一歩で遅れているハイマットはマースリーの後を追うが、自分自身でも瞬時に見極め、地に足をつけていた。

 彼女が通った道がその時大丈夫であっても、崩壊が続くその範囲は1秒先地面があるかどうかはっきりとはしない。


 綱渡りの状態で何とか、崩壊の範囲から遠のきつつあった。


「あと少しっ」


 マースリーは大きく飛び、崩壊の範囲を抜けた。


 ハイマットも同じように大きな一歩を踏み出した。






 ……はずであった。






「え」






 ハイマットの視界はがくんとずれる。


 地面に足がついている感覚はほんの一瞬で変わってしまった。足が宙に浮いているような感覚。崩れた大地に飲み込まれようとしていた。




「ハイマット!!」




 マースリーの声が轟音にかき消された。















「スクラ様、何か、半径200mくらいが崩壊しているんですけど」

「何だと!?」


 慌てて窓によって外を見ると、ある一角から土煙がもくもくとでており、木々がなぎ倒され、ぽっかりと穴があいたようになっていた。


「プロクシュテン、胃薬をくれないか……?」

「あれ? 食べ過ぎですか?」


「ストレスだ」


 ぽっかりと穴があいたようなのは大地だけではないらしい。





流石、1、2を争うだけはあります。

ガイアラスさん、四天王は伊達じゃないですね。


ハイマットさん、頑張れ。


では、次回もお会いしましょう!

2014/11 秋桜(あきざくら)(くう)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ