プロローグ
「カフェオレ下さい。」久しぶりに女友達と待ち合わせし、近況を話すことになった。眞菜は紙袋の中の淡いブルーのカシミヤのセーターをのぞいた。。さっきこのカフェに来る前に衝動買いしたのだ。
「眞菜、お待たせ。ごめんね遅くなって〜。」
「ううん、大丈夫。」
「車でいくってみこがいうから一緒にきたんだけど道が混んでたぁ。眞菜は?買い物?」
「うん、まあね」
5年付き合った彼とわかれた。
理由は3つ。
ひとつは 彼との価値観の違い。もっとわかりやすくいえば育ちの違い。眞菜は裕福に育ち、彼はいまだに賃貸に親と住む。二つめは彼の社会性。彼は名もない飲食店の息子。あとをついでるわけでもなくきままに店を手伝う今で言うフリーター。もう35歳をすぎてるのに。そしてそのことに強いコンプレックスを持っていた。一部上場の航空会社で国際線を飛ぶ眞菜を他人には自慢しながらふたりのときはいつも自分勝手にひがんでいた。3つめの理由は 眞菜の目が覚めた。もともと親には猛反対されていた。だからこそ意地になって気持も盛り上がった。東京と大阪という距離も手伝ってた。
「もう懲りたわ」
「そうだね。みんな不思議に思ってたんだよね…確に顔はかっこよかったけどそれだけだったような…」
「それに随分ふりまわされてなかった?」「まあ世間知らずのお嬢ちゃんがちょっと不良にはまってしまいましたってところかな?」
眞菜は少しぶぜんとする。「何それ」「これからは慎重に選ぶことだね」
確にそうだな…もう26だし。急がないと。
会社には30過ぎても普通に独身の先輩がたくさんいる。彼氏がいるんだかいないんだか…〈カッコ悪ぅ〉眞菜は実は入社したときから思っていた。客室乗務員を一生したいなんておもったこともなく、20代で結婚して子供できたら辞める。
目安は35歳。マル高までに。こういう人生って悪くない。たぶんだいたいはこうなるだろう。眞菜は信じて疑わない。今までもこうなったらいいなぁと思うとだいたい実現した。自分でも不思議な位だ。だからこそ今回別れた男に関しては そんなのにひっかかってしまった自分を苦々しく思う。もう失敗できないな。眞菜はひとりごちた。
「でもお見合いもいいかなぁって思うんだよね。なにより書類審査できるじゃない」元彼のことはまだつきあって間もないころから親には猛反対されていた。興信所まで使ってすべて調べあげてつきつけられた。あのときはショックだった…親のしたことよりその内容があまりに自分の中に抱いていた不安にヒットしていたからだ。