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魔王様のゲーム  作者: タカテン
最終章 ラスボスの魔王様が○○すぎる!
51/59

第五十話 幼○作戦

 勇者様たちの作戦は単純明快だった。

 勇者様と複数の攻撃部隊による途切れることのない連続攻撃で、魔王様に一切の反撃を許さない。さらに勇者様にだけ武装強化の呪文を施し、勇者様のパーソナルスキル・一撃必殺キラータイトルのポイントを稼いで、あとはひたすら発動を待つ。

 と、言うのは簡単。でも、実際に実行するとなると、連携の指示など難しい問題も多い。

 それらを一手に引き受けているのが、魔王様が睨みつけた部隊だった。

「よーし、分かりました。じゃあ私があの人たちをなんとかしてきましょう!」

 昔、相手の一番大事なところぎゅっと握り締めたらこちらのもんよって、街角にいつも立ってる色っぽいおねーさんが言ってた。あの部隊をなんとかできたら、この勝負、こちらの勝ちだ!

「おい、キィよ、待つが良い。なんとかってどうするつもりなのだ?」

「なーに、私だって魔族になったんです。必殺技のひとつやふたつぐらいあるでしょ?」

 そりゃあもう、魔王様直々の、文字通り「魔改造」を施されたのだ。目から稲光疾走サンダーボルト、口から炎石襲来メテオフォールぐらい放ててもおかしくないだろう。

 ふっ、我ながら恐ろしい。やりすぎて命を奪わないように気をつけなければ。

「いや、そんなものは無いが?」

「無いの!?」

「ああ」

「これっぽっちも?」

「うむ。必殺技どころか、ステータスも人間の頃から一切変わってはおらぬ」

 ええっ!? マジで?

「じゃ、じゃあこのツノは? この大袈裟なツノは一体何? いざって時に放り投げると、しゅぱぱぱぱーんって感じで周りの敵の首を次々と刎ね飛ばして手元に戻ってくるんじゃないの?」

「……キィよ、普段はのほほんとしておるくせに、えらく物騒な妄想をするでない」

 そんなことをのたまいながら、またまた襲い掛かってきた冒険者の頭を吹き飛ばした魔王様に言われたくないやいっ!

 ……はぁ、でも、ないのかぁ、必殺技。

 魔族になったんだから当然あるだろうと、密かに楽しみにしてたんだけどなぁ。

「分かったであろう、キィ。だからどこか安全なところで」

「でも! それでも何か私にも出来るかもしれないじゃないですかっ!」

 そうだっ、こんなことで諦めない。諦めるわけにはいかないぞっ。

 なんせ私は相手に気付かれることなく近づける秘策がある。

 きっとなんとかなるはずだ!

「ほ、ほら、必殺技なんてなくてもハタキで脇をこちょこちょしてやれば、相手も指令を出すどころじゃないでしょ!?」

 万が一、私の行為がバレたら相手からどんな酷い反撃を食らうかは考えない、考えない、考えたくないー。

「何やら途端にヤケクソ気味になったな?」

「誰のせいですかっ! 誰の!」

 もういい、とにかく行ってきます! だから魔王様、例の秘術を……。

「あ、ちなみに言っておくが」

「……なんですか、止めても無駄ですよ?」

 今の私の決意は花崗岩並に硬い。

「いや、キィの決意は金剛石のように硬いであろうから止めはせぬが……ただ、もしや余の認識不能ステルスをアテにしておるのであれば、アレは使えぬぞ。既に認識された状態で、姿を消すなんて出来るはずもないからな」

 ……えっ!?

「さらに言えば、今のお前は人間の攻撃が有効な魔族。下手に反撃を食らって、あっさりお陀仏なんてことにならぬよう気をつけるのだ」

 ……ええっ!?

「まぁ、回避能力に優れておるから、めったなことはないと思うが……くれぐれも用心するように」

「ちょ、ちょっと魔王様!」

 さっきまで引き止めていたくせに、なんで「どうぞ、どうぞ」な状態になってるんですかっ!


「あ、どーもドーモ」 

 魔王様から離れ、ひとり指令部隊へと向かう私。しかし、そのためには魔王様を取り囲む、幾つかの攻撃部隊の間を通り抜けないといけない。無益な戦闘はなるべく避けねば。

 ってことで。

「あー、すみません、ちょっと通らせてもらいますよっと」

 姿をけすこともできない私はへこへこと必要以上に頭を下げながら、難所を潜り抜けることにした。

「おい、なんか、変な魔物モドキが通り過ぎるんだが、いいのかアレ?」

「ああ、ハヅキのとこのメイドだろ? なんでも魔王に捕まって魔物にされちまったとかいう」

「しかし、今回の大戦に魔王が唯一連れてきたんだ、結構強いんじゃないか?」

「んなわけねぇだろ。見てみろよ、あの姿」

「うん、きっと単なる魔王のペットだね」

「魔王のペットって……ごくり……つまりはそういうことか!?」

「ああ、多分もう魔王なしでは生きてはいけない身体になっちまったんだ」

 おいおい、戦場でなんてピンクな妄想を膨らましてるんだ、この人たちは!

 うう、一発どついてやりたいっ。

「お、なんか顔を赤くしてるぞ。俺たちに見られて恥ずかしがってるのかな?」

 しかも怒りのバーニングレッドと、恥じらいのサクラピンクの区別もつかないらしい。私にとって都合はいいけれど、この人、絶対ドーテーだ!

「結構可愛いね。魔王、いい趣味してるよ」

「そーかー? 中途半端じゃね? 俺としてはむしろドラコちゃんの方がいいな」

「あとユズちゃんも萌えるよな」

「おい、ドラコちゃんとか、ユズちゃんなんて軽々しく呼ぶな! ドラコ様、ユズ様と敬わんか!」

「ドラコ様! ユズ様! ロリ万歳!」

 私が通り過ぎても、ロリ患者のシュプレヒコールは続いていた。

 開始早々の鮮やかな連携に、勇者様たちの軍団が強固な一枚岩のように感じたけれど、案外そうでもないらしい。中にはこんな乱れた、乱れきった集団もいるようだ。

 まぁ、でも今回はたまたま私の運が良かっただけなのかも。

 目的の指令部隊まで、この手の難所がまだふたつほど残っている。

 私はそのまま相手を油断させるべく顔を緩めつつも、気はしっかりと引き締めた……のだけれど。


「ロリよ、永遠なれ!」

「ドラコ様に永久とわの忠誠を! ユズ様に永久とこしえの愛を!」


 他の部隊も総じてこんな感じだった。

 あー、病んでる、病みまくりだよっ! この人たち怖いっ!

 そんなもんだから。

「コウエさん! 部隊にロリコン病が蔓延してますよっ!」

 指令部隊に辿り着いた時、私は隠密行動も不意打ちも忘れて、この戦いの指揮を振るうコウエさんに全力で訴えていた。

 あ、と言っても別にロリコン軍団の狂気に圧倒されたわけじゃないぞ。「あんたらの軍団、みんな変態ばっかじゃん! へへーん」とバカにしてやって、相手の動揺と仲間への猜疑心を産み出し、指令系統を混乱させようという極めて高度な攪乱作戦なのだっ。

 なのにコウエさんったら動揺どころか、ニヤリと笑って。

「そうか、よし、ここでもう一押しするか」

 と、隣にいたユズちゃんに耳打ちする。

 ユズちゃんも頷いて、ニッコリ笑うと


『みんなー、頑張ってくれてありがとーなの! ユズ、この戦いが終わったら、みんなの頭をなでなでしてあげるの!』


 例の天の声を戦場に響き渡らせた。

 次の瞬間。


 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 

 地だけじゃなく、天すらも震わせるほどの大歓声が戦場を包み込む。

 私にも伝わってくる、冒険者たちの迸るアドレナリン。

 分かる、分かるぞ、これは……

「ごめん、魔王様。相手の士気、高めちゃった」

 思わず呟いちゃうぐらいの、大失敗だった。


「ふっ、我、『幼女作戦』の成功を確信に至り!」

 がっくしと膝を付く私を見下ろして、コウエさんがサイテーな作戦名を自慢げに披露してくる。

「うーん、最後の言葉、失敗したの。あれでは完全な死亡フラグなの」

 コウエさんの隣のユズちゃんはなんだか悔しそう。

「わっはっは、いいじゃねーの。むしろ死亡フラグって分かってるからこそ、奴らも死んでたまるかと不用意な行動は取れなくなったんじゃねーかな。ユズ、ぐっじょぶ!」

「ニトロ、私はなでなでするのは好きだけど、されるのは好きじゃないの!」

 なでなでというより、わしゃわしゃって感じでユズちゃんの頭を撫でるニトロさんをユズちゃんが睨みつけた。

 へぇ、ユズちゃんでも怒ることがあるんだ?

 それにニトロさんも単なる肉達磨だと思ってたのに、結構頭が良かったんだ?

「で、キィねぇちゃん、何しに来たの?」

 ユズちゃんの前に立ち、私なんかに見向きもせず、ただ険しい目つきで百メートルほど離れた魔王様の戦いを見つめるフリート君の声は、他の三人と比べて堅さがあった。

「いや、何しにって、そりゃあ」

 邪魔しにきました、とはさすがに言えない。

 仮に言ったとしても、この状況では大笑いされるのがオチだ。

「……」

 沈黙は金だよ、ふふん。

「うーんと、嬢ちゃんよ、今更だんまりしても遅いんじゃねぇかな」

 見てみろよとニトロさんが顎をふいっと動かす。

 指し示す方向を目で追ってみると……なんだ? 何もない空中に戦う魔王様たちの姿が映し出されているぞ?

「俺のパーソナルスキル・千里眼オペレータービジョンだ。まぁ、千里眼と言っても、見ることが出来るのはせいぜいニ、三百メートルぐらい先までなんだがな」

 あ、解説ありがとうございます、コウエさん。

 って、そうじゃない!

 ご丁寧に説明してくれたから、思わずお礼を言いそうになってしまったじゃないかっ。

「黒虹と飛輝の人数が減ってきたな。これらを統合し、空いたところに控えの伽羅たちを前進させよう」

 千里眼の映像を見ながら、コウエさんが素早く判断していく。

 ああ、なんてこったい。この能力を使って、離れていながらも戦況を掌握していたのかっ!


『黒虹部隊と、飛輝部隊のみなさんに通達なの! そろそろ人数が厳しくなってきたから、ポイント03に合流してほしいの。続いて伽羅部隊に命令。ポイント12に前進するの!』


 そして指令を伝えるのは、小さな体に不似合いな大声を持つユズちゃん。

「大声とは失礼なの! これは 神の声ゴッドボイスという立派なパーソナルスキルなのっ!」

 なんで私の考えていることが分かるし!?

「いや、嬢ちゃん、さっきから考えていることが思いっきり顔に出てるぞ?」

「マジですかっ!?」

 ええい、この顔め! 修正してやるっ!

 と、自分で自分の顔を殴っても痛いだけなのでやめた。

 それよりも今は千里眼で映し出された魔王様の様子の方が気になる。


 相変わらず、勇者様とその他攻撃部隊の波状攻撃が続いていた。

 だけど、さっきと比べて魔王様の苦戦は明らかだ。

 それまで勇者様にはともかく、攻撃部隊の攻撃には上手く魔法をあわせていた。おかげで一度のアタックで一人や二人を確実に屠り去っていたのに、今はひたすら回避に専念している。

 魔王様が早くも疲れてきた? ううん、そんなことはないはず。以前に虹の頂で勇者様と何度も戦ったけど、中には十時間近く動き回っていたこともある。それでもピンピンしていた魔王様だ。確かに休む暇がないのは辛いけど、こんなに早くスタミナ切れなわけがない。

 となると、考えられるのはむしろ逆。

 今、勇者様たちが『派手に行こうぜ』状態なんだ……誰かさんのせいで。

「おや、なんか魔王が呟いてないか? コウエ、ちょっと魔王の口元をアップしてくれ」

 ニトロさんの要望に応じて、コウエさんが片手をかざすと画面が魔王様の口元に寄った。

 おおっ、ホントだ。魔王様の口元、なんかもごもごとゆっくり動いてる。

 しばらく見ていたけれど、どうやら四文字を繰り返しているらしい。

 えーと、なになに。

「キ」

 最初の言葉をユズちゃんが解読。

「コ」

 続いてニトロさん。

「ロ」

 おおっ、フリート君も読唇術使えるんだ?

「ス」

 最後はニトロさん。

「キコロス!」

 纏めは、ひとり読唇術が仕えない私が務めさせていただいた。

「ところで、キコロスってなに?」

 うん、聞いたこともない言葉だ。あえて言うなら、語感的に太古の神様の名前っぽい。けど、今それを繰り返す必要なんてないよなぁ。

「いやいや、嬢ちゃん、『キ』は『キィ』なんじゃねーか?」

「ああ、なるほど」

 となると『キコロス』は『キィコロス』となる……わけ……で……。


 キィ、殺す!


「ひぃぃぃぃぃぃぃ、怒ってる! 怒ってらっしゃる! ってか、なんで私が邪魔するのを失敗して、それどころか敵の士気をあげちゃったって知ってるし?」

「やっぱり邪魔しに来たんだ、キィねぇちゃん」

 ……あ。

「まぁ、どうせそんなことだろうと思ってはいたが、こうも間抜けだとなにやら魔王の罠なのではないかと疑いたくなるな」

 ううっ、マヌケって。コウエさん、酷い。

「とりあえず捕まえておけばいいんじゃねーか。いざって時にはこいつを人質に交渉のひとつやふたつできるかもしんねぇぜ?」

 おおう。失敗をやらかしたっていうのに、さらに人質になって魔王様に迷惑なんてかけられない! 早く逃げよう。

 って、あれ?

 なんだ? 足がまるで地面に張り付いたように動かない……。

「交渉に使えるかどうかは分からんが、普通に戦ったら虹色スライム以上の回避能力とハヅキから聞かされているからな。囮に使われてこちらを混乱させられても困る。戦いが終わるまで、ここで大人しくてもらうか」

 むぎゅっと。

 足だけじゃなくて、今度は腕ごと体が突然縛られた。

 よーく目を凝らしてみると、なにやら光っている縄みたいなのが私の体に巻きついている。

 こ、これって、勇者様が魔王様にやられた魔法束縛糸マジックバインド!?

「ふんぬー!」

 腕に力を入れて、ぶち切ろうとする。


 当然だけど、無理でした。

読んでくれてありがとうございます。

久しぶりにタイトルで遊んでみました。

果たして元ネタをどれだけの人が知っているのかは甚だ疑問ですがw

アレのラジオドラマが良かったなぁ。故塩沢兼人さんが格好よくてねぇ。


それでは次回は12月23日月曜日、12:00に更新予定です。

相変わらずどうなるかは分かりませんが、ガンバリマス。

よろしくお願いします!

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