鬼を如何する?
「とりあえず今は仕事を」
そう言ったのには、聖の前に積まれている仕事の山。
「あ〜、面倒だ」
「仕方有りませんよ。仮にも陰陽師何ですから」
「そうだが」
「聖様は正当な篁の後継者です。それをお忘れなく」
「忘れたくなった」
聖はボヤくが、自分でも分かって要るのだろう、目に付いたそれに意識をやる。
それは、何の変哲もないお屋敷だ。
でも、聖には何か気配を感じた。
「どうかしましたか? ああ、それは、警察からの依頼ですね」
「ああ、そうだ」
「それが、如何しました?」
「何か嫌な気配がする」
「嫌な気配ですか?」
「ああ」
「ここで何か有ると?」
「ああ、多分な。気配を感じるからな」
「どんな?」
「悪霊とは言えないが、霊の気配が有る」
「霊の気配ですか? でも、私何も感じませんけど」
茅場も聖より低いとは言え、霊感が多少なりともある。だから、視えるし、感じるのだ。その茅場にしても、今回は見え無いどころかなにも感じないと言う。こんなことは今までなかった。つまりは、それだけ力があると言う事か、厄介だな。ヒジリもそれが、わかり表情を引締める。
「調査待ちだな。今日の仕事は終わり」
そう言って片付ける。
どうやら、本当に終わりにするらしい。
そして、聖は茅場に言う。
「お前も今日は早く寝ろ。たぶん、明日から寝れないぞ」
明日から動くことを示唆される。
そしてすぐ、就寝した。
そして、翌日。聖達は早速動き始めた。
まずは、写真の現場に足を運ぶ。
「ここですね?」
そこは、茅場には変哲もない場所に思えた。
しかし、そこに来て聖の表情は険しくなった。
「どうしましたか?」
「ここにいる霊は人間から精力を奪い、いずれ孵化する。そうなってからでは遅い。その前に止めなくては」
「えっ?」
「食われている子も早く助けなければ、取り返しが付かなくなる」
「取り返しがつか無いとは?」
「そのままの意味だ。多分もう、勢力はほとんどないだろう。ここで消し去るのは簡単だ。しかし、その子に精力をあげること自体を辞めさせなければ、また、そう言った悪しき霊を呼ぶだろう」
「でも、言っただけでは、自分があげていること自体気付きませんよね」
「そうなんだよな。だから、こうなったら、そのこの前でやるしかないか」
そう言って、物陰に隠れ聖はその子が来るのを待つ。
そんな事をしていると、一人の女の子が来る。
どうやら、あのこの様だ。
暫らく様子を見る。と、突然女の子の前に、同い年ぐらいの男の子が現れた。
これは、茅場にもみえたようだ。
「あれですね?」
「ああ、写真よりも濃くなっているな。もう、時間はない」
そう良い、九字を切り、霊を捕まえる。
「祓いたまえ、清めたまえ」
そこまで、言ったとき、それを止める者がいた。
「辞めて下さい」
手を広げ、彼女は霊を庇う。
「どうして払う必要があるの? 鬼さんは悪いことはして無いわ」
「だから、このままにしておけって、それこそ冗談じゃない。本当に悪いことをして無いって、そう思っているのか? 彼は、君の生気を奪ってる」
少女はそう言われ、目を見張る。
「そんな・・・。嘘だよね」
「分からないのか、自分のことなのに、聞かなきゃ?」
聖は中傷するように、鼻で笑う。
「お前ここ最近、疲れやすくなって無いか?」
それに、少女も心当りが、あるらしく、困った様に少女は霊を見る。しかし、霊は、安心させるように言う。
「僕が大切な君を傷つける様なことする訳がないじゃないか?」
「じゃあ、なぜ疲れやすくなった?」
聖は少女に問い掛ける。が、上手く答えられない。
「それは???」
「僕が信じられないの?」
聖はそれに、笑った。
「貴様の何処を信じろと」
「君、うるさい、黙れ」
霊が聖に向けて力を放つ。
聖は、右手一本でそれを受け止めると、
「返すぜ」
そう言って、聖は投げ返す。それに、霊は驚く。
「お前」
「我が使令に下れ、急急如律令」
霊に向かって言う。
「ギャアアアアー」
霊が悲鳴をあげ、指令に下るが、なぜか不機嫌そうだ。
聖はそれに、笑う。
「何か、不機嫌そうだな」
「当たり前だ。俺を使役するなら、覚悟しておけ」
「私が死んだときには、食らえば良かろう」
「何、言っているんですか?」
茅場は焦って止める。
「しばらく、力を貸して貰うんだ。このぐらいの益がなきゃやりたくないだろう」
「ですが」
「それに、私が死ぬまでこいつに自由はないんだ。このぐらいしないとな」
そう言い、少女に目をやる。
「また、一人になっちゃった」
寂しそうに言った。
「命なら、こんなものあげたのに。こんな命で役に立つなら」
少女の言葉を聞き、萱場は怒る。
「せっかく助けられた命をその様に」
「茅場」
聖は止める。
「それなら、家に遊びに来い。一応こいつもいるしな」
「行ってもいいの?」
「こいつも、お前が来なきゃ、寂しがる」
それに鬼が怒る。
「誰が、俺は寂しがったりなど」
と、最後まで聖は言わせなかった。
少女が、嬉しそうに笑うと、霊も何も言えなくなる。
そして、頭を掻くと、
「いつでも来な。暇な時は、遊んでやるよ」
そう言われ、少女は嬉しそうに手を振り帰って行った。
「有難うよ。あの子の前で消すって選択自体が、あんたの中には初めから、無かったんだな。ここに来たのも、あの子の置かれている状況を知るためか」
「何かそう聞くと、私が偉くなったようだ」
そう言って、聖は言葉を濁し笑う。
「あんたに、使役されるのは、俺の望みでもある。あんたに忠誠誓うよ」
「それは、ありがたい」
「あんたなら、俺を消すことも出来ただろう?」
「そう言うお前こそ逃げられたはずだ。本気で、私は呪縛をかけていない」
「だろうな。でも、あいつから精気を奪って行く中で、あいつが死にたがっているのがわかり、そんな気も無くなったよ」
「だろうな。私の元に情報がきてからほとんど、精気が奪われてない。我慢するのは、気つかっただろう。あの子美味そうだし。あの子をお前他の霊から守っていたな」
「そこまで気付いたか? ヤダね。じゃあ、何かあったら呼べ。じゃあな」
そう言って、消える。
「守って? どう言う事ですか?」
茅場は聞く。聖は犯しそうに笑い言う。
「お前にも分からないかい?」
「すいません」
「いや、それが普通なんだろうな。彼女は霊が狙いたくなる気を発している。それから、守ってたんだろうな。たぶん」
そう言われ、茅場は納得する。
「そう言うことですか」
「ああ」
「彼方が彼を式として残した理由がようやく分かりました」
「あいつを消したらそれが鍵となり彼女が、自殺し兼ねなかったからな」
「優しいですね、彼方は」
「たぶん彼女は死にたいぐらい悩んでいたんだ。その背中を押す事はあるまい」
「そうですね」
「彼はそれが、分かり護っていたんだ」
「では、彼を消したら」
「間違いなく死を選ぶ。それぐらい彼女は孤独だったんだ。それに、あいつを消したら、彼女を守るものがいなくなる。それは、何としても避けねば為らぬ。じゃないと余計な仕事が増えて、困るのは私だ。それは、嫌だ」
真顔で言う。どうやら、それが本音らしい。
「聖さんらしい」
笑って茅場は言う。
「だって、それ以外何がある? 仮に奴を倒したら、私は彼女に向けて、バリアを貼らなければいけない。そんなの無理だ。仕事をしている時に、貼れるか?」
「そうですね」
茅場も納得する。
「あれに彼女を護ってもらえば、仕事に集中出来ますね」
「ああ。集中せねばヤバイやつもいるだろう。その中で彼女を守りながらは無理だ」
「そうですね。それを彼に守らせるなら、ある意味安心ですものね」
「そうだ、あいつは彼女を護る。その間に私は仕事をする。一石二鳥じゃないか」
「あいつは、もう彼女の護りに付いてるよ。彼女にばれない様にな。それに、私には仕事で使う式はもういるしな」
「そうですね」
「でも他の奴は使役霊となったときに、力は聖さんに取られますよね?」
「取るわけに行か無いだろう? だって、彼女を護るためには、彼が自由に出来る意識を残さなきゃ、意味が無い」
「そうですが、何も全部残さなくても」
「私がヤツに負けるとでも、それこそ私を甘く見過ぎだな」
「申し訳ありません」
茅場は謝罪する。
「まぁ、良い」
「さて、私達も帰ろう」
「ハイ」
そうして帰った。警察には、もう何も起こらないことを伝える。、自分
「でも、おかしいですよね」
「何が?」
「だって、彼が彼女の警護をしていたなら、あそこで悪さなんて出来ませんよね」
「そうか? でかした茅場」
指を鳴らすと、聖は急いで戻る。
「どう言う事ですか?」
「この霊は? 物凄く小心者なんだ。だけど、やる事はでかい」
「つまり?」
「力を持つ者が行くと隠れるんだ」
「つまり、あそこには他の霊もいると言うことですか?」
「多分な」
「でもまた、我々が近付いたら、隠れてしまうのでは?」
「だろうな? だから、気配を消すぞ、お前もそのぐらいの力は有るだろう」
「ええ、そのぐらいなら」
「それは良好。じゃあ行くぞ」
そう言い茅場は頷く。
「バン、ウン、タラク、キリク、アク」
そう言って、自分の周りに茅場は壁を作る。
聖は呪文も言わずに壁を作る。
二人が行くと、そこには小物がいた。
左右互いに中指・人差し指をからませて伏せ、親指、薬指、小指を立て合わせる。
そして、術を放つ。何も言わずに。
それは眩い光を放ちながら、霊は突然のことに、驚く。霊がそれに気付いた時には遅かった。逃げることも出来ずに消される。
「ウギャアアア」
断末魔の悲鳴が上がる。
「使令にする価値も無いな」
「そうですね」
茅場はクスリと笑う。
「ようやく、終わった。今回でも、大きな拾い物も出来たし、良かったな」