表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇から出ずるもの  作者: まめ
陰陽師として動く(改訂版)
5/21

当主の座を譲ってもらう

そして、行ったヒジリたち。そこは、銀座なのに閑静な住宅地であった。

「案外閑静なものだな」

「道を外れれば、銀座とは言えこんなものですよ」

「じゃあ、行くか」

「はい」

茅場は先を歩き、こ洒落たマンションへと行くと、一つの部屋の前で止まる。

「ここです」

「そうか」

そう言ってチャイムを押す。

「はい」

っと出て来たのは、若い女の人だった。彼女は、茅場を見ると驚いた様に目を見張り、聖に気付くと、頭を下げた。

「申し訳ありません。彼方からお父様を奪ってしまって」

「なぜ、頭を下げる必要がある」

「だって、彼方からお父親を奪ってしまいましたわ」

「私は貴女に感謝している。孤独な闇から、父を救ってくれて。ありがとう。感謝してもしたりない」

聖の言葉に彼女は驚く。

「こちらこそ、ありがとうございます。認めてもらえないものと思っていました」

女の子が出てくる。

「この子は、響と言います」

お母さんの腰に抱き付く。

「何歳ですか?」

「5つになります」

「可愛いな。茅場、お前の言った通りだ」

そう言い、彼女の背の高さに、聖は屈むと言う。

星以外の兄妹は認めないと言ってたハズなのに、どうやら実際彼女に会い変わったようだ。

「宜しくね、響ちゃん、私は聖だ。これから、仲良くしてくれるかな?」

彼女は、激しく頷く。

「ありがとう」

ニッコリ笑って言った。

「もし、良ければ、ここでの父を教えて下さい。私は達観している父しか知らない。多分、貴女たちには全然違う父が見れているのだろう」

「別に変わったところは?」

「そう言えてしまえる時点で、父の別の顔を見えている証拠。ここではどんな、父親何ですか?」

「ここで話すのは、難しいです。上がって下さい」

そう言ってスリッパを、出し中へ案内する。聖達は、続いて入る。

「では、お邪魔します」

唐突に彼女は、言う。

「あの人は、孤独な人です」

「ええ、そうです。それを、貴女は救って下さった。心から礼を申し上げます」

頭を下げる。驚いた様に止める。

「頭をお挙げください。私が救った分けではありません。私も彼に救われました」

そう言った彼女に驚く聖。

「彼は、貴女を救いましたか?」

「考えられませんか?」

「ええ」

「あの人は優しい人です。けれど、厳しい反面、弱いところもある人です」

その言葉に聖はにが笑いする。

「これは、参りましたね。誰もが強い者として扱う中で、貴女だけが正確に読めていたんですね」

聖は笑う。

「彼の想いに貴女だけが気付いた。それは、自慢して良いことです。本妻に成りなさい」

「ですが、彼の家は凄い旧家だと聞いています。私の入れる余地なんか」

「私が微力ながらお手伝いさせていただきます。誰も口出し、させません」

聖がそう言った時、玄関が空く音がすると、見慣れた姿が入って来た。

聖が意地悪く笑うと、相手は顔をしかめた。

「お久しぶりです。父さん」

驚いたように顔を顰める。

「お前如何して?」

「お父さん、彼女と再婚なさい。それを私もお手伝いします。だから、茅場を返して下さい」

聖が言うと、父親は驚く。

「お前、それが言いたくって来たか? お前も暇人だな」

「彼女に一緒影の生活をさせる気ですか?」

「そ、それは。だが」

「私もお手伝いしますよ。親方様、いえお父さん、他の者には口出しさせません」

聖が当主のことを、お父さんと呼ぶのは、久し振りだ。

「お前、何が望みだ」

「話が早くて助かります。茅場を返して下さい。そして、私に総帥の座をお譲り下さい」

それは、聖が父親にして上げられる唯一のこと。息子として、今まで、走り続けた父親に。せめてもの、贖罪。母は、直ぐに投げ出しそれでも護って来た彼に。

「お前? 引き受けてくれると言うのか? 」

「ええ、したいことがあるので、それには今の地位にいるわけにいかない」

「何か解らないが、お前がしようとすることに、私は信頼しているよ。お前は知らないだろうがな」

「これは、嬉しい誤算」

聖はニッコリ笑う。

「お前に当主の座を渡す。茅場も返そう」

「ありがとうございます」

嬉しそうに言った。

「でも、お前は複雑じゃないのか」

「全然。だって、私は母に会った事も在りませんし、いないのも同じ」

「お前には可哀想なことをした」

「同情ならいりません」

聖はピシャリと跳ね除ける。

「それは、彼方が謝ることじゃない。彼方は一人で彼女が、逃げてからも、ずっと一人で立ち向かわねばならなくなった。今まで、ご苦労様でした」

「そう言ってくれるか」

嬉しそうに言う。

「ええ」

「ところで、何をしようとしている?」

聖が一瞬言うのを躊躇うと、茅場が言う。

「卓が聖様に勝負を挑んで来ました。それに対抗するには、対抗出来るだけの力が必要です」

「卓か? でも、今更何故?」

そう言って、自分なりに納得する。

「私のためか」

「ええ、私が彼方の築き上げたものを、壊そうとしているから」

「あの子は昔から私を敬愛してくれていたもんな」

にが笑いする。

「卓兄は、父様を今でも敬愛しております。だから、父様が築こうとしているものに、傷をつける私が許せなかったんだと思いますよ」

「そうか。あいつは、いつも私の後をついて来たからな。志帆の時も止めるの大変だったもんな。あいつ」

志帆とは、聖の母親だ。

「私は篁家で誘拐された。それだけで、消す理由になりますね。卓兄様ならやりますよ。だから、私も受けて立たねばならない」

「そうか」

納得する父親。

「私はある意味あの子にも可哀想なことをしたか?」

「していません。たぶん、再婚すれば、一度はそちらに向くでしょうが、私が当主になれば、卓兄の目線は自然とこちらに私に向くはずです」

父は驚く。

「自分が贄になるともうすか?」

「贄になる気は、ありませんよ。ただ、仕掛けて来る勝負には答えます」

ヒジリは、ニッコリ笑う。

「そうか、済まないな」

「いいえ、全然」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ