聖の計算ミス
戻った聖達を待っていたのは、茅場からの報告だった。
「目覚めた彼からの言葉を伝えます。『有り難うございました。何かに付かれてて、目覚めることが出来ませんでした本当に有り難う。彼方の言葉は身に染みました。考えてみます。僕には待っていてくれる恋人もいるので、あまり待たせられませんから』だ、そうですと何か晴れ晴れしてました」
「そうか、良かった。じゃあ、次は、これだな。何々、警察からの依頼だな」
「警察から直々にですか?」
「ああ、父様が受けていたからな。それから、警察からも依頼が来るようになった」
笑って聖は言う。
「そうですか?」
「何々、公園で、循環している者が、幽霊を見た。怖がって仕事がままならなくて困っているか。その公園は? えっと、ここから2時間ぐらいの場所だな。美香が何か友達から聞いているかもしれない」
「そうですね。女子高生の情報網は、凄いものがありますからね」
茅場も言う。
「じゃあ、まず、美香に聞くか?」
「そうですね?」
そう言い美香の元に行く。
「美香、お前に聞きたいことがある?」
「何?」
「炭屋公園って、知ってるか?」
「あの幽霊が出るって、噂の公園? それが、如何したの?」
「やはり、女子高生の間にその噂があったか?」
「うん」
「それは、如何言う噂だ?」
「どう言うって、お化けが出るって噂よ。聖が何をしようとしているかは、分からないけど、彼方が出る程の事件じゃないわ」
「そうはいうが、依頼がきている以上捜査をしないわけにいかないからな」
「依頼?」
「ああ、警察からのな」
「そんな、事件性は無いと思うけど」
「如何言うことですか?」
茅場が首を傾げる。
「だって、その噂って噂の範疇を出ないもの」
「噂の範疇ですか」
しかし、それに聖は待ったをかける。
「女子高生の噂を侮るな。女子高生の噂はダテじゃないからね」
「はい」
あっさり茅場は頷く。
それに、聖は笑う。
もう少し疑ってくれても良いと思う聖だった。
それが利点にもなるが、欠点にもなる。
「聖が行くだけ無駄だとおもうけど、頑張って」
美香の応援に聖は笑う。
「声援に応えられるよう頑張るよ」
そう言って、聖達は家を出た。今回は卓と茅場は仕事で来れない。
それに、文句をつけたのが、茅場で今回は空と共に行く事になった。
聖にして見れば、そんなに信用ないかねだったけど、それは、内緒。
「あいつ、俺たちみたいにあんたを主人に決めているんだな」
そう言って、空は笑った。
「ああ、そうだな、あいつもお前達同様に私の体を気遣ってくれるよ」
「そうだな」
面白そうに、聖は、笑う。
「聖様、気をつけて下さいね」
茅場の答えに聖が答える。
「信頼しろ。お前が主と認めたる男をな」
その言葉に、茅場はハッとする。
「分かりました。申し訳有りません」
茅場は頭を下げる。
「お前が思う危険には、私はならない。だって、そのために十二天将がいるのだから」
それに、反応したのは、やはり騰蛇だった。
「誰が、そのためにいるって」
「お前達、存分に庇ってくれよ」
「やだね」
これを交わした後にあの様なことが起こるとは、聖も騰蛇も誰も予想してなかった。この後の聖の怒りは悲しみと入り交じり、そんな聖にかける言葉がなかったほどである。
「じゃあ、早速行って来るよ」
「お気をつけて」
そう言って、茅場に送り出された聖達は早速、公園へと向かう。
「気配はないな」
そう、聖が言った時だった。聖達を爆風が襲う。
「来た途端、これかよ。熱烈な歓迎だね」
聖は空に言う。
「熱烈って表現かよ。これが?」
「熱烈だろう?」
「あんた、如何かしているぜ」
「そうかい?」
そう明るく答えていられるうちは、良かった。それが、甘いと気づいたのはそれから暫くしてからだった。相手の力は感じるのに、一向にその姿が見れなかった。
「変だな」
そう言った時、どこからか力が向かってきて、聖達がいるところが、爆発した。
「なんだ、これは?」
「力が陰陽道から来ていることから言って、相手は人間だ」
空の言葉に頷く。
「私達をお引き出すだけの罠か? でも、誰が? こんな力のある者が噂にもならなかったぞ」
それに、聖も気配を消すことは出来るが姿までとは、いかない。
相当の手菅だ。これは、やばいかもしれない。
その時、騰蛇が出てくる。
「なんか、やばそうじゃん」
「騰蛇」
「逃げろよ。お前達は」
「私達も一緒に戦う」
「何バカ言ってるんだよ」
「でも、お前も無事にはすまない」
「俺を着様達のようにやわな人間と一緒にするな」
「だが」
「白虎、こいつらを逃がせよ」
「お前を倒すのは、俺だ。絶対ヤられんなよな」
「俺がヤられるかよ」
笑顔で言った騰蛇。それが、その騰蛇の最後の姿だった。
「騰蛇~」
聖の悲鳴に似た叫に有無も言わさず、連れて行く白虎。
「白虎、離せ。私は戻る」
暴れる聖を無理矢理連れて行く。
「良い加減にしろ。お前だけが辛いと思うなよ。俺が辛くないと思っているのかよ」
その言葉に、聖は黙る。
「私の作戦ミスだ。今回も所詮小物と舐めてかかっていたから」
「それは私達も同じです。だからこそ、次こそは仕留めましょう」
天空が出て来て言う。
「ああ、絶対」
「やだねぇ~男って。あからさま過ぎ。俺の時と態度が、全然違うじゃん」
白虎がブーブー言う。
「当たり前だろう。お前だって、所詮同じだろ」
聖は笑って言う。
「騰蛇を信じて待とう」
「ああ」
聖の手から力が抜けたのを、確認したのち、白虎が手を離す。
そうして、家へと戻り、騰蛇からの報告を待つ。
それを伝えに来たのはは、騰蛇の使霊だった。
その霊が伝えたのは、騰蛇が敗れたと言うこと。
それは、聖を慟哭させた。
その叫びは聞いている者の耳を塞ぎさせたくさせた。茅場と卓は騰蛇が敗れたことに驚いた。騰蛇は十二天将の中でも、強い方だ。その騰蛇をしても、負けるとは。
そして、白虎も悔しそうに唇を噛む。でも、何も言わなかった。
何も言わないからこそ、思いは逆にわかった。
そして、何も言わずに消える。
「天后、行ってやれ」
何もないところに向かって話し掛ける。
「分かりました」
と、天后も泣きながら、言う。
「私の作戦ミスだ」
「彼は使霊を残しているのに、消えてしまったんですかね?」
そ茅場の言葉に聖はハッとする。
「そうだよ。でかした茅場」
指を鳴らすと、静かに聖は言霊を言う。
「三天太上大道君伊邪那岐大神、青真小童君少彦名大神。我に秘事を授け、十二神将を駆使せしむ。吉凶の神将、我が使令となる」
そうすると、まだ、幼い子供が現れる。それは、十二天将を呼ぶもの。
それが、騰蛇だと聖は気付く。
その子に向かって
「まぁ、可愛くなっちゃって」
「だから、嫌だったんだ」
とぼやく騰蛇に聖は笑う。
「でも、良かった。お前が消えずに白虎も歓ぶだろう。あいつにも挨拶して来い。その前に詳しい話を聞かせろ。あそこにいたのは何だ?」
「それなんだけど分からないんだ。気付いたら呪縛されてて?」
「素早いお前に呪縛か? 如何言うことだ?」
頭を捻る聖。それに、答えを与えたのは、父だった。
「誰かが呪縛以外に行動も制御したな」
「それって出来るのですか?」
聖は父に聞く。父はそれに、首を振る。
「無理だ。呪縛だけなら、私にもできるが、相手に気付かれずに、行動を押さえるなんて芸当は私には出来ない」
「父様にも、無理なんですね」
父に確認を取る。
「ああ。それに、今回は」
父は言いよどむ。
「行動を止めて呪縛もとなると」
聖は言う。
「敵は複数。それも、きちんと陰陽道を知っている者がいるな」
父はその答えを言う。それに、聖は顔を顰める。
「厄介ですね」
「ああ。でも、出ずれそれを、相手にしなければならない」
「ええ」
聖は何かを決めたように、頷く。
「それにしても、お前可愛いな」
騰蛇は起こり気味に。
「こんなんなって、如何するよ。力も身体に応じているのか、使えないんだぜ。やってられねぇよ」
「そう言うな。お前が生きていたことのほうが、私には嬉しい」
聖が言うと、照れ臭そうに白虎が言う。
「敵はわかんねぇけど、あいつらに俺がやられるかよ」
「あいつら?」
「ああ。攻撃が左右前後から来たからな」
「左右前後と言うことは、二人でもないな」
「ああ。俺が2人如きにやられるかよ」
聖はそれに笑う。
「そうだな。いつも白虎と鍛えているもんな」
「そうだぜ。騰蛇の方が強いぜ。なんせ、俺が認めた男だぜ」
白虎が出て来る。
「当たり前だぜ」
ちょっと照れ臭そうに騰蛇は言う。
「でも、ずいぶん可愛くなっちまったな」
そう、白虎が言う。
「うっせえ」
聖は父に聞く。
「父様、いかかですか?」
「力を元に戻すことは出来ないが、霊力補助なら出来る」
「それをお願いします。騰蛇には、そんなものでしかないかもしれない。ですが、今のままでは騰蛇もきついものがあります」
「分かった」
そう言って、父は騰蛇に術をかける。
「オン、アジャラダセンダサハタヤ、ウン。でもこれはあくまでも霊力補助を目的としたもの。お前自身の力ではない。それを肝に銘じておけ」
「分かりました」
騰蛇は頷く。
「お前なら、力がなくなっても自分で如何するべきか道を見つけるだろう」
「有り難うございます。そう言って、下さって」
「私はお前を信頼している。息子を預けるくらいに」
「その信頼答えてみせましょう」
「頼む」
父が頭を下げると、聖が焦る。
「お辞め下さい。父様が下げる必要の無いものです」
「だが? 大事な息子を頼むんだ。きちんとお願いして置かないとな」
父にそう言われ、聖は感極まったように俯く。
「私が自分で言います。父様は頭など下げないでください」
聖の言葉に父は笑う。
「そうか? じゃあ、きちんと頼んでおけ」
「はい。後で」
そう言って、再度勝負を挑む。




