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闇から出ずるもの  作者: まめ
和解(改訂版)
14/21

鬼の望みとは?

「ナウマクサンマンダ、バザラダン、タラタアモガ、センダマカロシャダ、ソワタヤウン、タラマヤタラマヤ、ウンタラタ、カンマン」

焔の刃を聖は突然、海に向けて、放つ。海は、それを軽く片手一本でやすやすと受け止める。

「やはり黒幕はお前か?」

「あ〜あ、子供に向かって酷い事を」

「それを言うなら、お前だろ」

「俺は彼の願いを聞いただけだ。見解の相違だね」

「うまく言ったつもり何だろうが、それは願いを叶えたんじゃない。利用しただけだ」

「彼の望みは忙しい両親に休みをだった」

「だから、作ってあげたってか。それは、有り難迷惑だ」

「これは見解の相違としか言えないね」

聖はそれを鼻で笑う。

「相違とは便利な言葉だね」

そう言って、聖は呪法を唱える。

「身を妨ぐる荒御前、皆去りはてて憂うことなし」

聖は清めの神咒を口にする。

その瞬間、悲鳴が上がる。息もたえだえに少年は言う。

「俺を消せば、この子も消えるぜ」

その言葉に聖は何かに気付き、少年を透視する。

「ノウボウアラタンノウ」

呪法で透視すると、鬼の言う通り、鬼を消せば、少年の命も尽きる。

「お前まさか、少年の魂を使ったな」

少年の体には辛うじて微かに魂があるだけだった。

「如何するよ。俺を消せば、こいつの魂も消滅するぜ」

妹が庇う。

「お兄ちゃんをいじめないでお願い」

涙を命一杯貯めて言う。

「仕方ないな。微塵となりて退散せよ、急々如律令」

そう言って自分の下に鬼を置いたのだった。そして、兄弟、両親を眠らせると、聖は次の呪法をいう。

如何しようかと考える。

ただ一つのことだけは決定していた。

「悪いな。海お前をこのままこの家において置くわけにはいかない」

「ううん。有り難う母さんと父さんを助けてくれて、それから僕らも」

そう言ったという事は、彼も気付いていたんだ。何故、鬼が自分についたのかを。だから、さっきも両親のことしか言わなかったんだ。嬉しそうに少年は泣く。

「どうせ泣くなら、もっと思いっきり泣け」

「泣いても良いのかな? もともと、自業自得なのに」

「休ませてあげたかったんだろう。ご両親を」

「僕が遊びに行きたいと願ってやったことだから、いけないんだ。罰が当たったね」

聖は少年を抱き締める。

「お前は何も悪くない。子供として当然の願いだ」

ウワーンと少年は泣き出す。

そして、暫くすると指令となった鬼が出て来る。

「有り難うな」

「お前この子の命を繋ぎ止めていたんだな」

「そこまで、気付いたのかよ。ヤダね」

「何とでも、この子の命はもう僅かだった。それをお前は助けたんだ。お前はけして彼の命を奪っていた訳じゃないんだな」

「こいつは、俺がまだ小さな力しか持たなかった時に、変だけどこいつ、鬼の俺を守ってくれたんだ。そして大きな力を手に入れ意気揚々と会いに来てみれば、もう遅かった。何とかして、強い力を持つ者の出現を待った」

「そして、君の目に私が止まったと」

「ああ、あんたの力は強いよ。いろいろな術も知ってるしな」

それに聖は苦笑する。

「それは、誉め言葉として、受け取っておこう。ところで、お前がご両親にかけている術を解いてくれ」

「それだが、俺じゃない。俺は、こいつの事で、頭が一杯で、雑魚には関わっていない」

「そうか、じゃあ別のか? 丁度いい。白虎、お前の練習の場だ。存分に暴れてこい」

「了解」

白虎が出て来ていう。それに、驚く鬼。

「お前十二天将も遣えるのかよ?」

「いう事は聞かないがな」

聖は笑って言う。

「この声は神の声、この息は神の息、この手は神の御手。降ましますは高天原の風、神々の伊吹よ。現世と幽世を隔て光の籬と成せ」

そして、聖は呪印を結び、この家に結界を貼る。

「それ結界だろう?」

「ああ、そうだ。お前よく知ってるな」

「ああ、昔、力がなかった時呪法を勉強したからな。今、結界貼って良いのかよ。逃げ道空けとか無くて」

「何故、逃げ道なんかいるんだ。逃がす必要なんかないだろう」

聖はそう言ったのだった。

「お前、鬼畜だな」

「そう鬼に言われるのも変な気分だ。鬼に鬼らしいなんて言われるのは、消して誉め言葉じゃ無いぞ。まぁ、良い。今後、海を哀しませるな」

「当然だろう。こいつは、鬼として弱かった俺に生きる理由をくれた。そんな奴を悲しませるかよ。俺の命に変えても良い」

「そうか」

「ああ、絶対に守る。でも、あんたにも変えしたいね、俺は」

「それは、海を慰めてからでイイぞ」

「悪いな」

海が出てくる。

「良い子だった子に、神様は酷い事をする」

それに、海は笑う。

「じゃあ、僕はこれから神に足を向けて寝る」

「それは、良いぞ。でも、鬼には」

「当然じゃん。神は僕に何もしてくれなかったけど、僕を生きさせてくれたのは鬼さんだもん」

海が言う。

聖が言うと、海は遮って言った。

「家族から僕の記憶消して」

それに、聖は驚くように言う。

「お前?」

「それしか、方法ないんでしょ? だって、お兄ちゃん如何しようか困ってる?」

「そうか。ちゃんと、分かっているんだな。じゃあ、消すぞ」

「うん。生きていてくれるならそれで良い。やって」

逆に早くやってほしそうだった。

「謹請し奉る。悪しきゆめ、幾度みても身に負わじ」

忘却の術をかける。

「終わっちゃった。僕が生まれた事もすべて・・・」

言葉が続かない。そして、海は静かに涙を流す。

「本当は私が延命の術を知っていれば、良かったんだけどな」

「ねぇ、僕が寿命が終わるまで、いちゃいけなかったのかな?」

「そしたら、恐らく遠く無いうちに家族の者の中で死ねただろうな? その方が良かったか?」

それに、海は慌てたように言う。

「違うよ。僕は本当に感謝しているんだ」

「戸惑っているだけですよ」

茅場は助け船を出す、海を。

「そうか?」

聖はそう言った。言ったが、その実聖は悩んでいた。自分の選択が正しかったのかを、言わなかったが、けして正しいと言う理由が思い至らなかった。

「取り敢えず今はその考えは捨てろ。今は海君のことだけを考えろ」

「わりいな」

「急に家族からその存在を消されたんだ。消した人間が言うのもなんだが、辛いだろう。だから、お前の役割りはその子を慰めてやれ」

「分かった」

「後は、白虎の報告待ちだな」

そう言った時、白虎が戻って来る。

「なんだあれは? 雑魚ばっか」

聖はすぐに聞いた。

「如何であった?」

「雑魚ばかり、うぜえ。もう少し骨のある奴いても良いのにな。あれじゃあ、何の訓練にもならん。お前の横にいる奴ぐらいの奴がいて欲しかったね」

白虎は面倒くさそうに言った。

「最初から、そんな力の強い奴じゃ。困るさ」

「でも、そいつは骨ありそうだな。そいつとヤらせろよ」

聖は直ぐ止める。

「暴れたり無いのは、分かるが、それはダメだ。こいつは、もう私の式だ」

「私は別に構いません。私も十二天将の方を相手にしてみたい。ですから、お手合わせ願います」

「お前?」

「私は自分の力が今どの位なのかみたい」

とやる気になる鬼に、聖は頭を抱える。

「お前まで乗るな」

「イイだろ? 彼もやる気になっているし」

白虎が言うと、聖はため息をついて言う。

「仕方ないか。じゃあ、鬼よ。海を眠らせておけ」

「了解」

そして、白虎と鬼は、何故か対決する。力は明らかに白虎の方が強い。そう、聖は思ったが、意外にも鬼は強かった。それには、白虎も驚いたようだ。右手に傷を負いチッと舌打ちすると、聖が叫ぶ。

「白虎辞めろ」

怒った白虎は我を忘れて術を放つ。

「お前ムカつく」

それが、見事に命中し、鬼は意識を失う。

聖は直ぐに癒しの術を使う。

「華表柱念」

光に包まれ傷は治る。

それに、白虎は罰が悪そうな顔をすると謝罪する。

「悪かった」

「いや、お前のおかげで彼の力も見れたし良かったよ。それより、お前も見せろ」

「こんなのへでも無い」

「これからの事を考えたら、治せるうちに直した方が良い」

「ちっ」

白虎は舌打ちすると聖に腕を見せる。

「これは、見事なほど、スッパリと」

何故か嬉しそうに、聖は笑う。

「なぜ笑っている?」

「お前のおかげで、彼の力が分かったからね」

そう言って呪法を言う。

「華表柱念」

そう言って海の横に腰を下ろすと言う。

「お前、本当に頑張ったんだな」

そして、頭を撫でる。すると、海が目を覚ます。

「お前は大丈夫か?」

「別に全然平気だよ。如何かしたの?」

「いや、お前の鬼は本当にお前と再び会うために努力したんだと思ってな」

「うん、昔から、頑張り屋さんだったもん」

「そうか」

「いつも傷だらけだったけど。本当に頑張ってたもん」

「じゃあ、名前をあげなきゃな」

「名前?」

「ああ、いつまでも鬼と言う名では、可哀想だろう?」

「うん。じゃあ、僕が海だから、海を青く見せる空はどうかな?」

「イイかもな。じゃあ、こいつはこれから空だ」

聖は笑いその家を後にする。

「うん」

嬉しそうに笑う。

「これから、お前は篁の姓で学校に行け。多分、これから嫌な事にも沢山ぶつかるだろう? それに負けるな」

「はい」

元気に返事をする。その時、鬼が目覚めた。

「ウッ」

「大丈夫か?」

「あんまり、無理するな」

「無理させろ。そのぐらいの事、あんたはしてくれたよ。それなのに、俺が無理せず如何する」

「とりあえず、今は言葉だけ受け取って置くよ。でも、お前が考えるのはまず、海の事だ。此方のことじゃ無い。余裕が出来たら手伝ってもらうよ」

聖はそう言った。

「取り敢えず今はその考えは捨てろ。今は海君のことだけを考えろ」

「わりいな」

「急に家族からその存在を消されたんだ。消した人間が言うのもなんだが、辛いだろう。だから、お前の役割りはその子を慰めてやれ」

「分かった」

海が出て来て言う。お母さん達このまま、ここにいて大丈夫かな」

「その点は、心配ない。結界を貼ったしな。でも、ここは見事なまでに、霊の通り道だからな、一応中に逃げれないようにしたし、もう入って来れないから、安全だ」

「良かった」

嬉しそうに笑う。その笑みを見て、聖は何だか辛くなる。

「ごめんな。家族から、お前の記憶を奪って」

海は泣きながら、家族に最後の別れをすると、改めて聖に頭を下げた。

「有り難う。皆さんが僕の命を繫いでくれた」

「いいや。できる事なら、お前に普通の生活を送らせてやりたかったよ」

「本当に有り難う。でも、僕の体ではそんなにもたない。あなたが、頭を下げるなら僕も下げなきゃ。ごめんなさい。そんなに丈夫じゃなくってて」

「君が謝ることじゃない」

「だったら、あなたが謝る事でもないよ。これは、誰のせいでも無い。これは神様が僕の寿命を決めたから」

ウミが出てきて言う。

「でも、十二神将の名は伊達じゃないな」

白虎が出て来ていう。

「いや、お前もなかなか。俺が傷を負ったのは、久しぶりだ」

それに、騰蛇が出て来て言う。

「情けねぇな。力が落ちたんじゃないのか?」

「アァーン、何だと。もう一度言ってみろ」

白虎は怒鳴る。

「何度でも、言ってやら~。平和ボケしたんじゃないか?」

「何だと、貴様?」

そう言って二人のバトルが始まったが、何故か聖達は澄ました顔だ。

「おい、いいのかよ?」

「何が?」

「止めなくてだよ」

ウミが言う。それに、聖は笑って答える。

「いつもの事だからね。納得行くまでやりあった方がいい」

そう聖は言ったのだった。天后もそれを笑って見てる。

「男の方は、すぐ拳で言葉を交わすので、参ったものですね」

「そうだな」

聖は笑う。

「でも、それで良いのかもしれませんね。悪いと言うのは、簡単ですが、そうする事でしか分からない事もあります。痛みを負うことから、守るのではなく、痛みを負った時に一緒に痛みを分かち合う事ではないでしょうか?」

「でも、子供としては申し訳なく思うと思うな」

海が言い。

「そうかもな」

聖も頷く。

「痛みなんか笑い飛ばせれば、良いんだけどな」

「難しいね」

「ああ。でも、それから、逃げずに戦って行ければ良いな」

「でも、如何やって?」

「それなんだよな。如何するのが、良いのかね。俺にも分からん。ただ、逃げたら、負けだとしか。その戦いが、いつまで続くのかは俺には、分からねぇがな。一度逃げれば、その後もずっと逃げる羽目になるのだけが、俺は嫌だね」

「そうか」

白虎が言う。

「お前はそうやって、今まで十二神将を式とするまでに、戦ってきたんだな」

騰蛇も納得した様に言う。

「ああ、そうだ。多分な」

聖は笑う。

「そうで無ければ、お前達を式とは出来ないさ。さぁ、帰ろう」

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