聖が思う卓との和解は可能なのか?
「天后はもう休め詳しい話は白虎から聞く」
「はい」
そう言って消える。聖は天后の意識が眠りに落ちたことを確認した後、白虎に言う。
「背中を出せ」
「気付いていたか?」
「当たり前だ。天后を庇って負った傷だな」
「男が好きな女庇わずにどうするよ」
「そうだな。男が庇わなきゃな。それで、如何したんだ。数がいたとは言え、お前がヤられるような相手ではあるまい?」
「確かにな。でも、大勢でこられたら、俺でも、庇いながらは、無理だ」
「総動員か。やだね。数で来るなんて。でも、さすが白虎。天后にも気づかせ無いとは男だね」
と、バカにしたように聖は笑う。
「どうせ、バカにしているんだろう?」
「当然だ。女も守りお前自身も守れ。じゃなきゃ、私の体をお前達に差し出した意味がない。私は自分を守れない奴なんて、式にしとく価値もない」
きっぱり言い切り、言われた白虎は、俯く。
「さぁ、後ろを向け」
「別に良いよ」
「そんな、怪我したまま放っておくな。治せるときに、治して備えておけ。お前もな。お前は十二天将の中でも、いざと言うときの期待させる私の大事な式なのだからな」
後ろを向き上着を脱ぐ。そこは、血だらけだった。
茅場は思わず目を伏せた。
「お前にここまでのて傷を負わせるとは何者だ」
聖が眉を顰めると、白虎は言う。
「わかんねぇ。でも天魔十神刀と北斗七星だけの力では無かったと思う」
「そうか。まず、治療が先だ。かのものの傷を癒したまえ急々如律令」
そう言って、傷を癒す。
「悪いな」
と言って上着を羽織る。
「それだと、お前が傷を負った事がバレる。茅場なんか服くれ」
「ええ」
そう言って、自分の部屋から服を持ってくる。
「これをどうぞ」
黒のセーターだった。白虎は礼を言って受け取ると早速着替える。
それを見て聖は不機嫌そうな顔になる。
「やっぱ、茅場と身長トントンかムカつく」
つまり、聖とは、頭一つ違うという事だ。
「なんで、みんなでけえんだよ。ずるいぞ」
それを聞き、茅場は笑う。
「聖様は、まだ成長過程。いずれ伸びます。私も背が伸びたのは遅く高校の頃でしたから」
「いずれね」
そう歯にかんだのだった。
「いずれは私達より大きくなりますよ」
「いずれはね」
「せめて、卓兄をこちらに引き込めれば、状勢は変わるな」
「引き込むですか?」
茅場が悩みながら言う。
「ああ」
聖が頷く。茅場は何か考え込むと言う。
「私が卓と連絡をとって見ましょうか? 余計なお世話かも知れませんが」
「いや、頼む。その時に、私が卓兄の願いを一つ叶えると言ってくれ。それが、私の命であっても、この戦いが終わったら、渡すと」
「聖様、それは」
「お前が言いたいことは、わかる。でも、今の異国の式までや、今まで式として、名が上がっていない者達まで、相手には 出来ない」
「そうですね。では、至急これが片付いた後、卓と連絡をとりますか?」
「悪いな」
茅場が卓の連絡先を知っていることに聖は何も言わない。
茅場には茅場の付き合いがあり、それは聖が口出すことじゃない。
と思う聖だった。
「いえ、全然」
と茅場は笑って言う。
「卓兄さんがこちらに付けば、こちらに有利に動くんだが、そのための条件に何を提示してくるだろう?」
「卓のことですから、聖様にマイナスになることじゃないと思いますよ」
聖は微かに笑う。
「そうだな。卓兄さんは、私の本当の敵にはならない、きっと」
「そうですね」
茅場もそれに頷く。
「甘いのだろうな。多分、今の状況は卓兄さんに怒られるよ。それでも、篁の党首かと」
茅場は笑いながら、それに納得する。
「そうかも知れませんね」
「だろう?」
「ええ」
「で、これから如何するよ?」
白虎がじれたように聞く。
「今はここの敵を倒すことだ」
そう言い、呪法を言う。
「オンソバニソバウンキャリカダキャリカダウン、キャリカダヤウンハッタ」
退魔系の術を使う。
聖は舌打ちする。
「雑魚だけだな。本命は出て来ないか。やはり、この呪法じゃあ、ダメか」
「俺にやらせろ」
そう、白虎が言った。それに、聖は笑う。
「やる気だな」
「当たり前だ。こんな雑魚達に、遊ばれるなんて俺の気に障る」
聖は、それに笑う。
「そうか。頑張ってくれ。せいぜいな」
「如何してお前はそんな他人事なんだ?」
「酷いな、君は」
「どこが、酷いんだよ。そんな事より、お前、陰陽師の篁一族だろう?」
「そんな事、知らねぇな」
白虎が軽く言う。
「本当に。お前らしいわ」
「何とでも言え。で、如何するよ。どうするよ。篁さんよ」
「お前技と言ってるだろう? それ辞めれ。で、本当にどうするか?」
まず、手に取ったのは、一番上のを手に取る。何か商売をやっている人が、霊に悩まされているとの事。
「実際に話を聞かないと詳しい事は分からないな」
「そうですね。車を回しますよ」
「では、その前に電話を相手にして行って良いか聞け」
そう言われ茅場は直ぐに連絡をする。
「来て良いそうです。今、1番下の子が足の骨を折る怪我をし、店を閉めているので、いつでもイイとの事でした」
「そうか、じゃあ今から行こう」
そう言い、聖達は相手の家へと向かう。
「如何も? 陰陽師の篁です」
「よろしくお願いします。子供達が最近やたらと幽霊を見たと、わけの分からない事を言い出しまして。お客さんにその話をしたら、連絡してくださり、私達は悪戯だと思っているのですが」
「そうですか? でも、お子さんが骨を折る怪我をしていますよね」
「ええ、でもたまたまですよ」
「そうですか。分かりました」
それに、茅場は頭にくる。依頼して来たくせに、信じてないのかと。でも、聖が何故かそれに穏やかな顔をしている。
「申し訳ありませんが、部屋を一つお借りできませんか?」
「聞いています。此方をどうぞ」
そう言って、部屋に案内される。
「ここなら、子供達は入りませんから。そう言い聞かせてありますから」
「それは良好。では、暫くの間お借りします」
そう言って借りたのだった。しかし、違和感が聖には漂った。
「と、まずは結界を念のため。天為我父地為我母在六合之中南斗北斗三台玉女左青龍右白虎前朱雀後玄武扶翼急々如律令と、これでバリアは出来た。何故あの両親はあんなに頑なに子供の言葉を信じないんだろうな。これは、心霊じゃなくても、何かがある。何故、子供達は覗き来ないのだろう?」
「そう躾けられているからでしょう?」
「他人が入ったら様子を見にくるのが普通。いくら親に言われていても、興味がわくものだろう。まだ、年端も行かない子なら。もしかしたら、そのせいかもな、一番したの子が骨折したの。全員に話が聞きたい。ただし、このことはご両親に内密にやるぞ」
「何故?」
「あの両親は何かを隠している。それを知るには内密に探るしかない」
聖の言葉に、茅場は頷く。
「分かりました。では、早速子供に声を掛けてきます」
「ああ」
そう言って親に内緒で連れて来られた子は、何故かオドオドしていた。確かに、聖の言う様に何かに怯えていた。
「始めまして。えっとなんて呼べばいいかな? 私は聖だ。宜しくね」
男の子はおずおずと言う。
「始めまして。僕は海。宮本海。よろしくお願いします」
頭を下げた少年に聖は全然違う話しをふる。
「君の好きな子の話を聞かせてくれるかな?」
「えっ。そんなこと?」
キョトンとした様に、驚く。
「ああ、他に聞かれることがあるのかい?」
「い、い、いや」
オドオドする男の子。まだ、あどけなさの残る小学6年生だったと車前に調べた書類にかいてあっ書いてあったと思う。
「私には、許嫁がいるよ。同い年のね」
それで少し気分が変わったのか、男の子が話に乗る。
「すげぇ、マジ。どんな人」
「う~ん、可愛い人だよ」
聖が言うと、男の子は、ますますのった様に聞く。
「じゃあ、君の好きな子は? 人のばかり聞くのは、ズルいよ。君のも教えて」
「俺は好きな奴なんかいない」
「そうか」
「それは残念だ。でも、いたらその人の持っている以上の力が出せるよ」
「えー、本当かよ」
「ああ。その人を守りたいからね。君は、守りたい人いないのかい」
聖がそう聞くと、男の子は、急に泣き出す。
「如何した?」
「お父さんとお母さんを守ってお願い」
「如何言うことだ?」
「お父さんとお母さんが可笑しくなっちゃった」
「一体、何が」
茅場が聞く。
「わかん無い。でも突然、何かに憑かれた様に可笑しくなっちゃって。それも霊が見えるようになってから」
「それは、面白い。霊が憑いたか?」
「すると並みの霊ではないな。よし、約束しよう。必ず助けると」
「うん」
嬉しそうに返事をする。
「じゃあ、他の子達にも話が聞きたい。呼んで来てもらえるかな?」
「うん。ちょっと待ってて」
そう言って呼びに行く。
「これは、如何言う事でしょうか?」
「多分、ここで霊を呼んだな。場所が悪かった。ここは霊の通り道だ。だから、ヤバイものを呼んだな」
「でも、普通の人が呼べるものですか?」
「呼んだんじゃない。勝手に出て来たんだ」
「えっ。それって?」
「ああ、そうだ、今回の霊は自分で出てこれるだけの力がある霊だ」
「えっ、それって言葉は言える。だがこの霊には効かない」
「本当ですか?」
「ああ、一応言おう。」
指を組んで聖が指を組んで言う。
「臨める兵、闘う者、皆陣列れて前に在り。やっぱり無駄か」
その瞬間、叫びが上がるが、それは聖の望むもの達ではなかった。
聖は舌打ちする。
「雑魚だけだな。本命は出て来ないか。やはり、この呪法じゃあ、ダメか」
「俺にやらせろ」
そう、白虎が言った。それに、聖は笑う。
「やる気だな」
「当たり前だ。天后をやった奴に思い知らせる為にも、今俺は修行するぜ」
聖は、それに笑う。
「頑張ってくれ。せいぜいな」
「如何してお前はそんな他人事なんだ?」
「悪いな。相手が卓兄だとどうもな」
「お前ここに来て、卓と対決したくないとか、いうんじゃないんだろうな」
「それこそ、まさかだろう。卓兄は、陰陽師としての理を冒した。それを許せるほど、私もまだ心は広くない」
「それは、良かった」
「でも如何やる?」
「それを考えるのは、お前だ」
「さいですか?」
呆れた様に、聖は白虎を見る。
そう聖は笑って言う。
「さて、如何したものかね。私にも良いアイディアが思い浮かばないよ」
「さっさと考え」
「酷いな、君は」
「どこが、酷いんだよ。そんな事より、お前、陰陽師の篁一族だろう?」
「そんな事、知らねぇな」
白虎が軽く言う。
「本当に。お前らしいわ」
「何とでも言え。で、如何するよ。どうするよ。篁さんよ」
「お前技と言ってるだろう? それ辞めれ。で、本当にどうするか?」
「まぁ、他の子達に話しを聞いてからにすれば、いいんじゃ有りませんか?」
茅場の言葉に、聖は納得する。
その時、男の子が弟と妹を連れて戻って来た。
「有り難う」
「始めまして。私は陰陽師の聖と言います。あなた達のお名前は?」
「わたち、南」
「そっか南ちゃんか宜しくね」
少女は照れたように頷く。男の子も自己紹介する。こちらは、ぶっきら棒だ。
「僕は湊人」
「湊人君と南ちゃんは双子なのかな?」
「似てる?」
「ああ、そっくりだ」
「やだね」
そう言ったのは、湊人だった。
「酷い。湊人、最近変よ」
それに反応したのは聖だった。
「見つけた」
そう言って聖はその子の周りに五芒星に符呪を投げると、手を組む。
そして、呪印を結ぶ。
「この声は我が声にあらじ」
そして、手を叩く。
「この声は、神の声」
そして手を結び、
「まがものよ、禍者よ、呪いの息を打ち祓う、この息は神の御息」
そして、形を変える。
「この身を縛る禍つ鎖を打ち砕く、呪いの息を打ち破る風の剣。妖気に誘うものは、利剣を抜き放ち打ち祓うものなり」
印を払う。
その瞬間大絶叫が上がる。
南ちゃんはそれに固まる。
「湊人」
絶叫する。
「湊人君は、これで大丈夫だ。後は、ご両親だな」
「両親より変なのは、海お兄ちゃんの方よ」
その言葉に聖は固まる。
「これは、どう言うことだ。もしかして、海君なのか?」
聖が言うと、茅場が疑問を挿んだ。
「でも、仮にそうだったとしたら、聖様がそれに気付かないのは、可笑しい」
「いやおかしくない」
「そんなに強い霊なら、自分で見破られないよう壁を作れるはずだよ」
「そんな」
押し黙る茅場に聖は笑う。
「如何やら、我々は凄い敵を相手にせねば、ならないらしい。初っ端から、これだと頭痛いな。でも、今回は奴等はいないな」
「どうやって、今後の対応に当たりますか?」
「こんなに、バカにされて裏から何てゴメンだ。正々堂々、前から正面きってやるだけだ」
「大人げない」
「分なんとでも言え。こんなにバカにされて、それを返礼しなきゃ失礼だろ」
聖は不適に笑う。
そう、聖が決めた瞬間だった。