踏み切り1
「敵は判明しましたが、今は十二天将に慣れて下さい」
「そうだな。はやくつかいこなさなくては? 煩そうだもんな」
うんざりした様に聖は言う。
「こうなると、学校に行っている時間が勿体無いな。 一層のこと辞めるか?」
「辞めないで下さい。学生の時にしか学べないことが有ります」
「学生の時だけか」
それが、なんだか聖には分からない。
「学生時代は今しかありません。今は分から無いかもしれませんが、後にきちんと歩めば、良かったとなり分かります」
「そうか?」
「そうです。学生期間を満喫しなければ、折角の学生時代を後に後悔しても、遅いですよ」
「そうかぁ」
そう言って、聖は納得する。
「今は面倒でも両立して下さい」
「分かった。じゃあ土日だけか。間に合えば良いが」
「大丈夫です。だから、親方様みたいに、仕事を選べば良い」
「選ぶ?」
「そうです。親方様はいつも全部選んでましたよ」
「それで本当に良いのか? それで選んで、取りこぼしないのか?」
「有るかもしれません。限に親方様は前回の事件を読み違え、取りこぼしました。ですが、出来る件数に限りがあるのも事実です。全部何とかしようと思わないで下さい」
「そうか」
聖は納得出来ずに納得出来ないと言うかのように言う。
「納得出来ないようですね」
茅場は苦笑いする。
「お前の言っている事は分かっている」
「でも、納得出来ませんか?」
「ああ」
聖は頷く。
「納得できるまで、全部やって見るのも良いかもしれませんね」
「そうだな」
そう茅場は言うと、聖も納得する。
「納得行くまで、全てやる。やって行くうちに、ヤらなきゃいけない仕事とそうでないのが、分かるだろう」
「そうですね」
茅場も納得する。
「取り敢えず、如何しますか?」
「取り敢えず、上から順番に。取り敢えず、これだ」
と、上からとって行く。
「えっと、何だ?」
「何ですか?」
「何か霊が出る踏切の調査依頼依頼だ。これは、取材者の人間からの依頼だな」
「霊の出る踏切ですか?」
「ああ、ちょっと眉唾ものだけどな」
如何やら、これは聖も信じてないようだ。
「ま、行って見るか。なんでこんな話が、出ているのか気になるしな。何も無いと言うことは、ないだろう。こんな話が出るくらいだから、何かあるはずだ」
「そうですね」
そう言って茅場は車を出す。
そして、行った先は。そこは何の変哲もない踏み切りだった。
「やはり、外れか?」
「そうですね。特に霊的なものは感じませんし」
「だったら、なぜあのような噂がたったかだな? 少し調べてみよう」
「でも、どうやって?」
「それは、お前にかかってる」
と、言われ茅場は何だか嫌な予感がした。
「頑張れよ。これは、年齢的に私には出来ないからな」
と、にっこり笑って言った。
タメ息を付くと茅場は聖に聞く。
「何をすれば良いんですか?」
「簡単な事だ。取材人を装え。ここで霊を撮りたいからとか何とか言ってな。協力してもらいたいとか言ってな。ここの踏み切りの噂を知っていたら、是非、教えて欲しいんだけど、何か知っているかい?とね」
「分かりました」
茅場はタメ息混じりに聞きに行く。
茅場が行くと、聖は面白そうに送り出す。
「頑張れよ」
茅場は女子高生に声をかける。
「あの,すいません。私、NKBテレビ局のものですが、この辺りの心霊調査をし、TVでぜひ放送したいと思っているのですが、あのこの踏み切りで最近噂になっているお話をぜひ、聞かせて頂きたいのですが」
「えっ?」
「噂って麻樹さんかな?」
「麻樹さんって?」
「本当に噂なんですけど、学生の時、麻樹さんがここで電車に撥ねられて亡くなったそうです。その麻樹さんが、寂しくて出るって噂があって」
「じゃあ、その麻樹さんって最近亡くなったの?」
「ええ、亡くなってから、そんなに経っていません。麻樹さんが亡くなってから、まだ、5年ぐらいですから」
「噂は、いつから出たのかな?」
「噂はここ最近です」
「亡くなって、すぐでは無く」
「ええ、そう言えば、可笑しいですね。亡くなって直ぐには、こんな噂有りませんでした。と言う事は、麻樹さんが、ここの再開発に怒ってるのかな?」
他の子が言う。
「えっ? 再開発って?」
「今ここら辺の噂になっていますから、調べればすぐ分かると思いますが、ここを再開発し、この踏み切りを無くそうって」
そう言われ、茅場は頭を下げる。
そして、曲がった処にある駐車場の聖の元に戻った。
「何か再開発を辞めさせようと、霊が頑張っているらしいです」
「再開発?」
聖は眉をしかめる。
「ええ、かつて、ここで亡くなった少女が、それに怒ってるいるんじゃ無いかと言われているみたいです?」
「何故?」
「ここが再開発されるのを嫌がってだろうと言う話しでした」
「何がイヤなんだ?」
「自分が死んだとこをそのまま残したいとかですかね?」
「それは、生きている人間の思いだ。死んだ人間はそんな事思わない」
「では?」
「たぶん噂の流している者は生きている人間だ。噂の出どころを探る。それから、あそこの踏み切りの事故も並行して調べるぞ」
「はい」
「輝」
「あいよ。俺にはきちんとした名があるんだけどね」
「だって、玄武ってかっこ悪いだろう」
「へいへい、まぁ、良いけどね」
「一応この辺の警護を。何も無いとは、思うが」
「分かった」
そう言い警護に付く。茅場は首を傾げる。
「そこまでしなくてもよろしいのじゃ無いですか?」
聖はクスリと笑い、空に声を掛ける。
「騰蛇いるか?」
「はい」
と、急に何も無いとこで、聖は話す。
どうやら聖には何かが見えているようだ。
「お前に頼みが有る」
「何なりと」
聖に頭を下げたのは、とし若い男だった。茅場にも見えた。
「ここら辺の霊に話を聞いて見てくれ。霊同士の繋がりがあるだろう」
「御意」
そう言って、頭を下げる。茅場にクスリと笑い。なんか意味深に茅場を笑う。
「彼方が十二神将の一人、騰蛇ですね」
聖がそれに答える。
「ああ、そうだ。どうやらこいつから認められた様だな」
クスリと、笑う。
「えっ?」
と、ビックリする。
「こいつが見えるようになったのが、その証拠だ」
つまり、今まで見えなくしていたと言う事か。見える様になったと言う事は認められたと、言う事かと苦笑いする。これに、喜ぶべきかと、茅場は悩む。
「騰蛇は少し、硬いところがあるかな。十二神将の中でも、2番目ぐらいにな」
「誰が一番頭が固いのですか?」
「それは、間違いなく六合だな」
「六合ですか? まだ会った事ないですね」
そう言った時だった。
「誰が一番頭が固いって?」
「こいつが、さっきから言っている六合だ。お前がわざわざ出てくるなんて、珍しいな」
「勝手なこと言われて黙っていられるか」
「そうか、丁度良かった。お前も一応、あの踏切に行ってくれ」
「玄武が守っているだろ?」
「私の頼みが聞けないのかい? 私は行けと言っているんだ」
どうやら、仕えている者は、その相手に逆らえない何かが有るらしい。
「ふん」
そう言って、六合が行く。そして、聖は苦笑いで言う。
「あいつは意外にお前が気に入っているようだ」
と言われ、何処がと思う茅場だった。
全然、自分を見なかったのにと。茅場の疑問が分かったのか、聖は笑いながら言う。
「あいつが姿を見せたのが証拠だ。私は、あいつの姿を見る為に3日間の間、あいつの気配から目を逸らさず、ようやく見れた時には,もう眠いの何のって、仕方がなかった」
と、笑って言った。
でも、茅場には自分の何がそんなに、気に入ってもらえたのかが分からなかった。現に天一神は一度も自分を視界には入れなかった。これで如何して、気に入ってもらえると思えるんだ。
「あんまり、考えるな。十二天将は、神とは名が付か無いが、ある意味神だから、人間の常識で、計ってはいけないこともある」
そう言われ、茅場は一応返事だけをする。
でも、納得は出来ない。でも、騰蛇も言う。
「お前らの常識で、我らを測るな。私達が忠誠を誓ったら、絶対それを守る。お前ら人間のように裏切ったりしない」
「そうだな。お前らは裏切らない。裏切れば、それが命に関わるからな。でも、確かにそれを抜いても六合は、頭が固いがな」
騰蛇は笑って言う。
「だろ?」
聖も笑って言う。
「そこまで言わなくても」
茅場が言えば、二人は口を揃えて言う。
「いや、あの頑固さは凄いものがある」
そして、騰蛇は言う。
「だから、お前凄いよこんなに早くあいつが気に入るなんて今までなかったことだ」
と、聖に言われ益々分からなくなる。
「恐れ入ります」と、頭を下げた。それに騰蛇は笑う。
「お前のそう言うところかもな。あいつが気に入ったのは」
「と、言いますと」
「お前は絶対に我らが主を傷付けないと信頼されたんだ。我等は主を生きている間己の身体を盾とし主を守る。その代わり我等は主が死んだ時には、その肉体を食べる。そして、己の力にする。それが主と交わした約束だからだ」
「えっ?」
「力のある者を口にすれば、その者は力を手に入れられる。多分、私が死んだ時には、その争奪戦が、凄そうだ」
聖は犯しそうに笑う。
「そんな」
「十二天将を式とするんだ。そのぐらいはやらなきゃ、ダメだろう」
「そうかもしれませんが、でも」
「人の常識で測るな。彼らには強くなることこそが、一番何だ」
「ですが、だからと言って食べなくても」
「それは、お前が人だからだよ。十二天将は力が全てだ。人に式として使われるのは、その者に負けたからだ。だから、式となった」
「えっ、言葉で言うんじゃ?」
聖はそれに、笑う。
「まさか、式とするのに言葉でって、言う事はないだろう? 式となった者は命掛けで、その者を守るんだからな」
「十二天将の命掛けって、彼らも死ぬんですか?」
「う〜ん、眠りにつくだな。死ぬわけじゃないが。その時間は長いその間、死んでいるのと同じだ。そうなったら、私でも傷を治せない」
「そんな」
「彼らは、そうなると、分かっていても、私を守るんだ。それに、感謝を込めて私は自分を投げ出すんだ。正当な報酬だろ?」
「そうかもしれませんね」
茅場も納得する。
「納得した所で、今回の事件に戻ろう?」
聖は話を変えた。
「先程の話しからすると、踏み切りを壊させたく無いんだ」
「えっ?」
「多分、今回は心霊じゃない」
「さっぱり分かりません」
「生きた人間が踏み切りをを守りたいがためにやっていることだ」
「心霊じゃないと」
「ああ。これは、間違いなく人的だ」
「でも、話を聞いている限り、霊的反応じゃないですか?」
そう言ったとき、騰蛇が戻ってくる。
「聞いてきたぜ。でも、おかしいんだ。霊曰くここら辺で誰も出てないってよ」
「やっぱりな。騰蛇有り難う、助かった」
「こんなこと分けないぜ、次はもう少し骨のある仕事を回せよ」
「骨が有るかわからんが、お前も玄武の元に」
「え〜」
不満そうにいう。
「騰蛇」
静かに名を呼ばれ、嫌そうに顔をしかめ言う。
「分かってるよ」そう言って消える。
「あいつは一言言わないと駄目なんだな」
聖はおかしそうに笑って言う。でも、けして嫌そうじゃない。どちらかと言えば、喜んでいるようだ。
「難しい関係ですね」
茅場が、苦笑いすれば、聖は笑う。
「そうだな。でも、だから、面白い」
「でも、どういうことでしょうか?」
「裏では、そんな話ないってことは、これは心霊現象じゃないということ」
騰蛇がまた出てくる。
「そう言えば、面白いこと聞いたぜ。何でも、写真をやたらと撮っている男がいたとか」
「それを早く言わんか」
「言ってやったんだから、それでイイだろう」
不機嫌そうに言う。その騰蛇に、聖は笑って言う。
「有り難う。役に立った」
「ふん、これぐらい」
と、言って今度こそ消える。
「確か、依頼の手紙の中に写真も入っていましたね」
茅場が言うと、聖は首を傾げる。
どうやら見ていないらしい。
茅場が、背広のポケットから手紙を出し、写真を出すと、その中から、写真を出す。
「これです」
聖はそれを受け取るとニヤリと笑い言う。
「見事な合成写真だ」
「合成ですか?」
「ああ、これは技術がなきゃできない」
そう言って聖は笑う。
「騰蛇の持ち帰った情報からすると、これは心霊現象じゃないということになるな。現像する段階で他の映像を合成させたな。幸いこれを依頼してきた人物は、そう言った技術がある者だしな」
「ええ、確かに」
茅場は戸惑いながらも頷く。
「まだ、信じられ無いかい」
「ええ、申し訳ありません」
茅場は頭を下げる。聖は苦笑いを浮かべながら、
「仕方ないか。話だけ聞くと、まるで心霊現象だもんな。でも、違う。そこにいる霊が知らないと言う事は、まず無い。これは、霊的反応じゃない。一度この依頼をしてきた取材者の元に話しを聞きに行こう」
聖は茅場に取材者に連絡をとってくれる様に、頼む。
茅場は早速茅場は電話する。そして、聖に言う。
「これから、来て良いそうです」
「そうか、今から行こう」
聖は茅場に言う。
「はい」
と、行って茅場はすぐに車を回す。