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闇から出ずるもの  作者: まめ
陰陽師として動く(改訂版)
10/21

茅場に思わぬ告白を受ける

聖達はまた訪れた。彼女は、嫌な顔一つせず出迎えてくれる。

父も嫌な顔一つせず、暖かく出迎えてくれた。

「せっかくの団欒の場をお邪魔してしまって、すいません」

「あら、宜しいのですよ」

「まだ、本家に移る気は無いのですか?」

「ええ、私たちが入るわけには行きません。私達は所詮よそ者」

「ですが、響ちゃんは、篁の血をついでいます。後々、彼女が狙われるかもしれません」

「それは、どう言う事だ?」

「その事で、今日来ました。賀茂家と土御門家と何かありましたか? 彼等は篁に的を絞りました。それを前にしては、響ちゃんも危険です。いつ、標的になるか分かりません。父様なら、彼女に式を付ける事は可能でしょう。ですが、天魔十神刀と北斗七星を相手にそうも言ってはいられません。彼女の身の危険も考え、本家にお戻り下さい」

聖は、頭を下げる。

「賀茂家と土御門家か。私の頃からチラチラしてうざかったが、とうとう出て来たか?」

「ええ。それと対決するために、私は今、十二天将を使いこなす事に慣れます」

「うむ、その間の奴らの相手は私がやろう」

「有り難うございます。そのためにも本家にお戻りを」

「分かった」

そう言った後で、彼女に聞く。

「そう言う事だ。すまない。お前達には、ずいぶん、変わった環境になるがついて来てくれるか?」

「それは、響を守るためなんでしょう? だったら、行くわ」

彼女は、キッパリ言った。

「響ちゃんも、ごめんね。ずいぶん今までとは、環境変わるけど、ついて来てくれるかな?」

「お兄ちゃんと一緒のお家?」

「そうだよ」

「じゃあ、響行く」

嬉しそうに言う響に聖は苦笑いする。

「いつまでもそう言っててくれればいいな。でも、いつか君は私を恨むかもしれない」

「響、恨んだりなんかしないもん」

自信満々に言う。

「そして、お兄ちゃんの結婚相手になるんだから」

「それは、無理だな。私にはもう結婚を約束した相手がいるからね」

「じゃあ、ちょっとおじちゃんだけど、彼方で良いわ」

茅場はそれに驚く。

「アハハハハ。良かったな茅場」

「今度は私の叔父ではなく、兄弟しかも、立場上、私の弟か」

「聖様。面白がり過ぎです」

「そうか? でも、宜しく頼むよ妹を」

聖が言えば、父親も笑って言う。

「以前は、私の弟になり、次は私の秘書になり、今度は息子か。お前も忙しいな」

「親方様も茶化さないで下さい」

「もう、お前は聖に返したお前の親方は、私じゃないだろう?」

「では、なんとお呼びすれば宜しいのか聞かせて頂けませんか?」

「それは、もちろんお父さんだろう?」

おかしそうに言う父親に、茅場は気分を害したように言う。

「分かりました。以前と同じに呼ばさせて頂きます。宜しいですよね、ケイさん」

「そう怒るなよ。カオル、お前は、私にとって可愛い弟だよ」

啓は笑いながら、言う。そう言われ、芳は俯く。

嬉しくって、笑っているのか、はたまた、バカにされたと怒っているのかは、正直分からない。わからないが、たぶん喜んでいるハズと思う聖だった。

だって、そのぐらい茅場は父様を崇拝しているから。だから、姉が頭首を裏切った時も誰より怒っていた。聖から見てもおかしいほどに。

それほどまでに、心酔しきっていた。

だから、子供とはいえ、父様の子に、逆プロポーズされ喜んでいるはずだと思う聖だった。

それに、茅場は笑って答える。

「有り難う。響ちゃんの思いが大きくなっても変わらなかったら、私はいいよ。ただ、お父さんの許可が得られたらね」

それに、不満そうに響は言う。

「なんで、お父さん? 私の思いなんだから、お父さんは関係ないじゃん」

「響ちゃんにはね。でも、私と君のお父さんの間には、ある罪が横たわっているからね」

そう言った茅場。それに、父は笑う。

「お前には何の罪もないよ。それに、お前はこの長い年月であれの罪も償ってきたじゃないか。響が選ぶなら私は反対しないよ」

「本当。お父さん」

「ああ」

「だから、お父さんって、一番好き」

と言って、父親に抱きつく。父親は優しい顔でそれを受け止める。それは、聖にはなかったことだ。それを見て、ただ、純粋にそう言う相手が出来て良かったと思った。悔しいとか羨ましいとかって気持ちが無く、ただ、純粋にそう思ったのだ。

母に出て行かれてから、このような人と巡り合えたのは、ただ運が良かったのだろう。

でも、愛する人に出て行かれその後も、一人で戦ってきた父を思うとただ、良かったとしか思わない。

「そうかそうか」

とデレデレになりながら言う。そんな、父が微笑ましい。

「取り敢えず、私の今の目標は啓さんですね」

「父親なんて時間が短いんだ。その時間を奪うなよ」

「そうだな。所詮、父親が出来る事なんて少ないものかもな。お前の時もしかりだ。私はお前に何もしてやれなかったしな。すまなかった。お前があがいていた時に、渡し花にもしてヤらなかった」

「そんな事ありませんよ。彼方は母が出て行ってからも一人戦ってきた。十種神宝を式にしながら」

「お前がそういっているから、お前に私は甘えて、お前に私の溜めている抑鬱された思いをぶつけてしまったよ。やはり、済まない。お前のせいでは無いのに、母を失い寂しかっただろうお前に、私は優しい言葉を掛けなかったな」

「いいえ。そんな事はありません。彼方は私を見る事自体、キツかったはずです。私は母に似ていますから。それを、育てて下さいました」

「そんなの当たり前だ」

怒ったように、父親は言う。

「ですが、その当たり前の事を放棄した人間もおります」

そう聖は母を糾弾した。それに、茅場も乗る。

「その通りです。姉は自分のすべき事が、分かっていなかった。すいません」

頭を下げる茅場に、父様は笑って言う。

「お前は姉の変わりにそうやってずっと、頭を下げていたんだ。もう、やめろ」

「ですが?」

「お父さん、私の彼を虐めちゃダメ」

手を広げ茅場を庇う。それに父は笑う。

「ホラ、見ろ。娘に怒られたじゃないか。もう、辞めろ。元々お前は何の咎も犯してないんだ。償いなんていらない。これ以上、やるなら俺が響に嫌われる」

「そんな事ないよ。お父さん。ヤダな」

響が照れたように言う。

「やめてよ。恥ずかしい」

と照れて父親を止める。

「ホラな」

「正解デスね。お父さん」

と、聖は笑う。

「茅場、相手は熱烈だな」

「辞めてよ、お兄ちゃん。恥ずかしいよ」

もう、聖をお兄ちゃんと呼んでいる。子供の順応は早いと、聖は笑う。

「そうだな茅場もう償いは終わりだ。今後は、私のサポートを。それが、償いだ」

「そうだな」

父親も笑って言う。

茅場は少し涙ぐむと、「はい」と言った。

それに、また抗議の声を上げたのは、響だった。

それに茅場は、笑って言う。

「響ちゃん、違うよ。私は嬉しくて泣いているんだ。苛められたわけじゃないよ。でも、有り難う」

「そうなの? じゃあイイ。彼方が良いなら私は何も言わないよ」

「有り難う。では、来てくれますね。多分始めは住み心地悪いと思います。でも、私がそれを払拭させます。時間はかかるかもしれませんがお願いします」

「響を守るためなんですね」

「そうです」

「わかりました。入ります。お邪魔でしょうが」

「邪魔なんてありませんよ。な、響」

「うん」

元気に返事をする。

「念の為、彼女達に父様は結界を張って下さい」

「分かった」

そういい、静かに目を閉じると、術を掛る。

「この声は神の息、この息は神の息、この手は神の御手。降ましますは高天原の風、神々の伊吹よ。現世と幽世を隔て光の籬と成せ」

そして、目を開くと言う。

「これで良いハズだ」

「お見事にございます」

「式をつけると言うことも考えたが、それだと逆に狙う相手はここにいますと言っているようなものだしな」

「そうですね。父様の式は納音、奴らに狙いはここだと教える様なものですものね。そうか、その手があった」

「どうした?」

「父さん八大龍王の娑伽羅を私に付けて下さい」

それで聖の考えている事に気付く。

「雷神華厳が良いですね。一番怒らせると怖い神ですから。それとわたしの十二天将の天空を付ければ完璧でしょう」

「何もその役、聖様でなくても」

茅場も気付き言う。

「いいや、他の人間じゃあ対抗できん」

「では、聖様ならそれに対抗できるとおっしゃるんですか?」

そう聞かれ、聖は笑いながら、首を振る。

「私でも難しいだろうな。天魔十神刀と北斗七星を相手にするのは」

「ならやめて下さい」

「そう言ってくれて有り難う。でも、篁の者なら、この勝負投げ出すわけに行かない。土御門家と賀茂家は正式に篁にケンカを売ってきたんだ。これから背を向けるわけに行かない」

「青龍、私の護衛に付いてくれ」

「はぁ」

跪いて頭を下げる。

「ではお父さんお願いします」

「お前は自ら狙われる役になるのか」

「ただ、狙われるだけ、殺される気は毛頭有りませんよ。今、この天魔十神刀と北斗七星を相手に出来るのは、自惚れるわけでは有りませんが、私だけ。この役他に譲る気は有りません」

キッパリ聖はそう言った。それに有無を言わせなかった。

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