生贄死贄
あらすじどおりになれば良いなとただただ願うばかりです。明るい助手になんか知識がめちゃくちゃ豊富そうな探偵。そんな連中が書きたくてこれを書いた次第です。
楽しんでいただければ、うれしいですね。
学校生活、トラブルがつき物である。
それはおそらく言うまでもない。いじめ、けんか、はたまたテスト。
原因理由様々だろう。しかしここであえて別に追求したいとは思わない。
ここで追求されるのは《事件》。ことの、くだんだ。
さてさて、今回追い求めるのは推理モノで有名な密室殺人。
かけるは学生、解くも学生。計画者に追求者。
これらの言葉に様々な語弊があろうと、一切関知しない、放っておく。
開始だ。
春。
早朝。
部活の早朝練習で女子生徒が一人、廊下を歩いていた。
桐生 朔という。
バレー部員である。二年に入った途端、レギュラーへと昇進した。一年生の頃のまじめさが所以したのだろう。
一人廊下を歩いているのも職員室へ部室の鍵を取りに行くためだ。それというのもとある先輩が遅く来る所為だ。鍵をいつも持って帰るくせに早朝練習に来るのは遅いというひどく矛盾した先輩だ。
そこまで上下関係がひどいわけではない。この学校、そういう古臭いものはないのだが、それにしても敬意がないわけではないので下手なことを言えたものではないのだ。それでこの繰り返しというわけだ。
「はぁ・・・」
まだ春とはいえ肌寒さが消えないわけではない。それが朝となれば尚更である。桐生は腕をさすった。
そして職員室を無駄なノックをした後入った。誰も居ない。
「何で?」
もう誰か教師が来ているはずだ。だから桐生はここに今、来ている。しかし教師が居ないのに職員室の鍵は開いている。
桐生はあたりを再度見回す。確かに誰も居ない。数分待っても誰も来ないということはつまり、ちょっと職員室を空けただけ、ということはないということだ。それにまさか学校というプライヴァシーの塊がこういう類の甘さを発するはずがない。
とりあえず桐生は鍵を顧問の机から取っておく。そして印刷室、給湯室と探し始めた。しかしやはり誰も居ない。
残ったのは応接室と、さらにその奥の校長室のみ。
どちらも下手をすれば職員室より厳重だ。それだというのに桐生がドアに手をかければたやすく応接室のドアは開いた。
不意に、桐生は足元に何か重いものが倒れ掛かった感覚がした。いきなりな出来事にすばやく後ろへ下がった。そしてその接触してきた『何か』を視認した。
「なっ!?」
人。
否、人であったもの。
明らかに人体に付属していなかったはずのものが胸に存在した。
ナイフが深々と、人の胸へと突き刺さっていた。
桐生は息がひどく乱れ、男性から先ほどより離れるとその場にへたり込んだ。
その乱れようは、泣きかけている子供のしゃくり具合と似ていた。
「ひっ、ひっ・・・・・・イヤーーーッ!」
近隣へとこの叫び声が聞こえたところで、桐生の意識は途絶えた。